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20.年末

今家にいるのは俺とダンテ、リカルドの3人だけだ。

父は母と、兄は婚約者と1週間ほど避寒地に行っている。


父母と一緒に行かなかったのは足の捻挫がまだ完治していなかったからだ。

…というのは建前で、今回の行き先、南方にある母の実家が俺にとって鬼門のため、回避する口実として利用したのだ。


母の実家は国の南端にある子爵家なのだが、母のことを溺愛していた祖父母が孫娘が欲しかったそうで、初めは母にそっくりだった兄にドレスを着せ、滞在中は常に女の子として生活させられていた。

俺が生まれてからは母とは似ていないにも関わらず俺に対象が変わった。

年に1度ではあったが女の子のように扱われることが苦痛だった。

俺自身は乙女ゲーマーとはいえ女の子に憧れてるわけでも、なりたいわけでもないのだ。


他の使用人達は故郷に帰っている。

何人かは残ると申し出はあったがリカルドが自分に任せてほしいと強く希望したのだ。


ダンテやリカルドには事前に事情を伝えている。

リカルドとは違い帰る家も家族もあるダンテは帰省しても良い旨を伝えたが、さすがに2人では不用心とのことで残ってくれることになった。

半分仮病のようなものだったため家族が家にいる間は仕方がなかったのだが、出発後も完治するまではとダンテに抱えられて部屋を移動することになっている。

…先日の狩猟祭以降は一段と過保護になったようにも思う。



基本的にこの時期は来客もないため門扉も全て閉め出入りもすることはない。

元々恋愛重視のゲームで、ルートに関係のない不要な争い描写はない。

そのためこの国は情勢も安定しており治安も良い。



「ルシオ様、食事のご用意ができました。」


料理は全てリカルドが準備している。


「ああ、ありがとう。今行く。」

俺の言葉を合図にダンテが慣れた手つきで俺を食堂に運んでいく。



卓上には3人分の食事が並んでいる。

最初は1人分だったのだが、俺が2人も一緒にと半ば強制的に頼んだ。


2人が食べているところを見るのは初めてだ。

黙々と食べている姿は斬新だった。

ダンテはもちろんだが、リカルドは気品を感じる所作で貴族も顔負けだ。


「その料理はダンテ様が作られました。」


俺がメインの料理に口を付けたところでリカルドが言った。

じゃがいも、ベーコン、オリーブ、ドライトマトのいわゆるジャーマンポテトだ。


「そうだったのか、ダンテも料理ができるとは知らなかった。とても美味しいよ。」


「それはよかったです。小さい頃から訓練で野営することも多かったものですから、自然と料理も覚えました。じゃがいもを使ったものばかりですが…。

リカルドは食事の準備以外にも仕事が多いですから、お手伝いを申し出たのです。」


「なるほど。3人でこうして過ごすのもいいね。あ、何もしていない俺が言うことではないね…。」


「そんなことはありませんよ、ルシオ様は基礎教養を修了なされた後も知見を広げる努力をしていらっしゃいます。それに学園に入ってからが本番でしょう。私たちがいるのはルシオ様にゆっくりとお過ごしいただくためでもありますから。」



2人の新しい一面を垣間見ながら穏やかな冬を過ごした。

ブックマークやリアクションをいただけてとても嬉しいです

20話まで来ましたが、ストーリーの進捗としてはとしては3分の1ぐらいです。

これからも1日に2、3は継続して更新していきます。

最後まで頑張って書き切りたいと思っておりますので、よければお付き合いいただけると嬉しいです。

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