表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/3

2.転生

俺はルシオ。アルタヴィラ侯爵家の次男だ。


今まで断片的だが知らない景色を何度も夢に見ていたのだが、ある日それが前世の記憶だと気がついた。


幼馴染と飲みに行った帰り、暴走トラックの事故に巻き込まれ、近づくヘッドライトに包まれたところで記憶は途切れている。


一緒にいた幼馴染はどうなったのかな、無事だといいが。


色々気になることはあるが、今1番気にすべきなのはこの世界と俺自身についてだ。


なんとなく既視感というか違和感があったのだが、前世の記憶と共にこの感覚の理由がわかった。


それはこの世界が俺が前世でプレイしていた「あなたの心に灯火を」という乙女ゲームの世界だったことなのだが、なんと男のまま主人公に転生していたのだ。

主人公(ヒロイン)の名前はルシア=アルタヴィラ、俺はルシオ=アルタヴィラでそのまんま男名に変わっている。

もし原作通りに進むとしたらそれはBLゲームじゃないか。

だが全年齢向けのゲームだし、友情エンドも多かったからあまりそこは気にしなくて大丈夫だろう。

そもそも俺の見た目は可も不可もなく、あえていうならば父親似。

特に目立った個性もない黒髪の普通の見た目で前世の俺の姿とほぼ変わらないというのが悲しい。

本来の主人公(ヒロイン)ではなく、男の俺が主人公(ヒロイン)になったことがどのように作用するのかわからないしが、美形の多いこの世界で、前世も含め恋人ゼロの俺が恋愛沙汰に巻き込まれるとは考えにくい。

どうせなら攻略対象の王子になりたかった。




俺はもうすぐ12歳となる。そのため準備で屋敷は少し慌ただしい。

今日は準備の一環で兄と護衛騎士を連れ街に買い物に来ている。


兄の名前はラウル、17歳で長身細身、銀髪の美形で母親似、公爵令嬢と婚約しており次期侯爵の予定だ。

護衛騎士の名前はダンテ=ヴィドー。代々騎士の家系で兄と同い年の17歳だが兄とは違い筋骨隆々のいわゆるコワモテマッチョだ。

このダンテはまだ見習いだが、俺が学園に入学する頃には一人前になり、俺に仕える予定だ。

そしてなんと…


攻略対象だ。


現時点では特に直接的な交流はなく、好意を向けられている感じもしない。

ゲームでは主人公(ヒロイン)の側に常にいるがほとんど話すことはなく、ただただ実直な騎士という印象だった。

王子以外のルートは触れずに俺が死んでしまったため、それ以外のルートは未知数だが、フルコンプ勢だった俺はどんなイベントがあったのか知りたくてしょうがない。



「ちょっと裏路地の店も見てみたい!」


今日、実はもう1人の攻略対象を探しに来ている。


「あそこ!うずくまっているの子供じゃない!?」


見つけた。褐色の肌で俺と同い年の子。


「ねえ、大丈夫!?どこか痛いの?」


「…」


虚空を見つめたままで返事はない。


「どうしたの?お腹すいた?サンドイッチあるけど食べる?」


ダンテに持たせていたバスケットから取り出して目の前に差し出した。

すると手からサンドイッチをふんだくり凄い勢いで食べ始めた。

喉を詰まらせそうだったので飲み物も渡すとすぐに飲み干した。


「落ち着いた?俺はルシオっていうんだ。君の名前は?」


「……リカルド。」


「リカルドはどうしてここにいたの?おうちは?」


「…ない……家族も…」


兄とダンテを一瞥すると心配そうに彼を見つめていた。


「もし行くところを探してるのなら家に来ない?家もご飯も着る服もあるよ。」


リカルドは最初驚きと疑いの目でこちらを見ていたが、しばらく逡巡した後にゆっくりと頷いた。



リカルドを連れて帰った時家族は驚いたが、事情を説明すると納得して受け入れてくれた。

彼は俺の専属執事として育てることになった。


リカルドは近隣国の戦争孤児で、数ヶ月放浪しこのアルタヴィラ領に辿り着いたらしい。


ちなみにゲームでは、どこで身につけたのかわからないが暗躍する影のような働きもしていたことから表の護衛はダンデ、裏の護衛はリカルドが担っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ