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13.大型犬

自分の誕生パーティでこんなに疲れないといけないのだろうか。

同年代の貴族子女は少なくとも学園卒業までは関わることになるので、疲れたとしてもしっかりやり切らないといけない。

良い関係を保つことが最終的には俺の平穏無事につながる…はず。


さて、そろそろエリオットの番だ。

男爵家のため基本的に後方で待つことにはなるのだが、1番最後が後ろを気にせず話せるからと自主的に最後尾に並んでいるそうだ。

俺としても疲れ切った最後に気心の知れた幼馴染がいると安心できるからありがたい。

湖畔での一件後、大人げなく八つ当たりをしてしまった時もあるが、以前と変わらず定期的にお互いの家を行き来している。


「誕生日おめでとう。」


「ありがとう。1日早いけどエリオットもおめでとう。」


「…ありがとう。」


なんだか全くめでたくなさそうだ。

露骨に暗い雰囲気を纏っていて、それを隠そうとしていない。


「なんだ、どうしたんだよ。今日1日は俺がお兄さんだからな、なんでも相談しなさい。」


「…ルシオ、王子殿下と仲がいいのか?」


「え、いや別に、年に数回会うか会わないという程度だし…。」


「さっき王子殿下と公爵令嬢様との話し声が聞こえてきたんだけど、ルシオが敬語を使わずに話すくらいの親密な仲だって。本当のことか。」


「ん、確かに今日王子から敬語廃止だって言われてそうなったけど。」


「本当なんだ。そっか、そうなんだ。…でも知り合い程度じゃそうはならないよな。」


「会ったのはこの2年間で今日が3回目だよ!俺は玩具扱いで揶揄われてるだけなんだって。」


「それじゃ王子殿下が嘘をついてるってこと?」


「いや、敬語じゃないことが親密さの証明になるのであればそうかも知れないけど、俺だって…。

誰が聞き耳立てているかわからない場所で迂闊なことを言うと不敬罪に問われかねないと思いとどまった。


「ちょっと場所を変えよう。」

そう言うと家の応接室に向かった。



「エリオットが何をそんなに気にしているのかわからないけど、今日俺はいきなり敬語廃止と一方的に言われただけだし、そうすると拒否権なんてないだろ。」


「…ああ。そうだな。でもなんでそんな話になるんだ、仲良くもない相手に。」


「それは俺が知りたいよ。相手が王族だから俺も拒否できない。慌ててる俺を見て揶揄って遊んでるんじゃないか。」


プレイヤー目線では王子のことは応援したいが、今の俺からすると本当に執着される謂れがない。


「そっか。それならいいんだ。…すまない、せっかくの誕生日に。」


それは本当にそうだ。

なんで浮気を疑われ必死に釈明する夫みたいになってるんだ…。

まだゲームスタート前の時点でこれでは、入学後はどうなってしまうのか。


「会場に戻ろう。」


「…ああ。」


返事はしたが動く気配はない。

叱られてしょんぼりしている大型犬みたいだ。

椅子に腰掛けたままのエリオットの前に立ち、頭を撫でてやる。


「友達が取られると思って不安にでもなったか。

安心しろ。幼馴染のお前が、俺の一番の友達だよ。」


それを聞いたエリオットは俺の腰に抱きつきしばらく動かなかった。

主人公の誕生パーティはフラグの宝庫です。

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