11.王子
申し訳ありません。
6話の決意で1年経過していたのですが7話以降の年齢のカウントがズレており修正しています。
そのため初期から読んでいただいている方は急に14歳!?と驚かれているかもしれません。
学園入学は15歳、数え年で16歳です。
そのため入学までの残り時間は変わりません。
簡単なプロットを元に執筆しているのですが、完全にプロット時点でのミスでした。
もし年齢等の矛盾に気づいた方がいらっしゃいましたらご指摘いただけますと幸いです。
以下本編です。
今年もこの日がやってきた。
今日は俺の14歳の誕生日だ。
昨年は無難に挨拶を終え平和に過ごせたが、今年は先日の王子の件もあり油断はできない。
「やあ、ルシオ。誕生日おめでとう。」
「ありがとうございます、アダル。」
「なんだ、つまらん。いつもの仰々しい挨拶はしないのか。」
「私だって学びますよ。」
「それじゃ次のステップに進もうか。」
「嫌な予感がするのですが…次のステップとはなんでしょうか。」
「敬語廃止だ。名前もアダルって呼んでるのだからいいだろう。」
…最悪だ。
王子ルートについて。
実はルートに入ること自体は簡単で、口調の選択でタメ口を選択するとなぜか王子の好感度が上がりルート確定する。
俺は最後の防衛線として敬語は外さないようにしていたのだ。
お互いの身を守るためにも。
しかし、王子が一度廃止と言ってしまったため本人が取り下げない限り決定は覆らない。
そもそもNormal、友情エンドで陛下は継承権放棄してまで市井に降りることにしたのか。
True、Goodエンド以外はそこまで詳しい描写がなく、スチルとその後のあらすじが語られる程度だった。
プレイしていた当時は、王子として研鑽し続けてきた彼が主人公と結婚するわけでもなく、王位も就かず、兄を支えるでもなく…これまで積み重ねたものを全て否定しリセットするような最後がとても悔しく、悲しかったのだ。
「おいルシオ、なんだよ急に黙って…って、なんで泣いてるんだよ。そんなに嬉し…嫌だったのか。」
気づいたら涙が出ていた。
「あ、いえすみません、目にゴミが入ったみたいで…。」
気づいたら側に控えていたリカルドやダンテが心配してやってきた。
「どうなさいましたかルシオ様。」
「いやなんでもないんだ、大丈夫。」
来るかもわからない未来を想像して泣いてたなんてとてもじゃないけど言えない。
さらに王子の後ろにいたアンナまでやってきた。
「陛下、ルシオ様に何をされたのですか。」
「敬語をやめろって言っただけなんだが…。」
「またそんな突飛なことを言ってルシオ様を困らせて…。言われた方は断れないのですから、王族の自覚を持ってくださいまし。」
「アンナ様、大丈夫ですよ。お騒がせいたしました。」
「大丈夫じゃないでしょう、そんなに目を腫らしてしまって…。」
「ルシオすまない、そんなに嫌だとは思わなかったんだ。」
王子が原因ではあるけど悪くはない。
謝罪を受け入れてしまうと、王子が悪く俺が泣いて嫌がったことになり王子のことも傷つける。
このまま王子を擁護すれば敬語廃止になるだろう。
「アダル、俺は本当に大丈夫だよ。」
「おーい、なんだよ紛らわしいな。…って適応するの早いな!」
王子はそう言うと、嬉しそうな顔で俺の首に腕をまわし頭をわしわしと強めに撫でてきた。
俺は王子のことを傷つけたり悲しませたくなかった。
その顔を見るときっとこの選択でよかったのだと思う。
今回は少しシリアスです。
主人公はゲームをしている時も感情移入でよく泣くタイプです。




