別れ
扉が、わずかに軋む音を立てて閉まりきる。その一音が、病室に残っていた薄い静けさをひどく際立たせた。
アイカは扉を横に、ベッドに横たわる少女を見つめて小さく息を飲む。
少女は、そんなアイカに視線を向けることもなく、小柄な身体を布団に沈めたまま、ただ正面の壁を見つめていた。
アイカが一歩踏み出そうと、右足を床から離したその瞬間。
「ねぇ……」
掠れた声が空気を震わせた。
アイカの足がぴたりと止まる。
少女の声は枕元から零れ落ちるように小さく、消え入りそうだった。
再びアイカの足が床に触れる小さな音がしたとき、少女は壁を見たまま続ける。
「なんで、あんなこと言ったの」
諦め切ったようで、でも怒っているような、複雑な響きだった。
「私は……お姉ちゃんと話したくなかった」
その声には小さな悲しみが沈んでいた。
七年分の恨みがもう燃え上がるほど勢いを持っていない、怒りを抱えたまま疲れ切った人間のようだ。
その視線に、アイカは息をのみながらも顔をそむけなかった。
「私は……話したい」
まっすぐな声で言う。
少女が自分を恨んでいることは分かっている。それでも、話したかった。
少女はアイカの言葉を黙って受け流した。
怒鳴るような激しさはない。ただ、関わりたくないという薄い拒絶が静かに沈んでいる。
それでも、アイカは続けた。
「あの時、何を言おうとしたの?」
その問いに、少女の瞼がかすかに揺れた。
サクヤ・クオネに傷つけられる直前、少女は確かに何かを言いかけていた。
少女はゆっくりと視線を壁から外し、自分の枕元へ落とす。
そして、ひと呼吸おいてから、言葉をこぼした。
「なんで殺さなかったの?」
「え……」
少女は喉の奥から搾り出したような声で言った。その瞬間、アイカの心臓が一拍止まった。
少女の声には、乾いた棘のような感情が混じっていた。
「私は、お姉ちゃんの命、狙ったんだよ。なのになんで殺さなかったの」
その言葉が静かな病室に落ちると、空気がわずかに震えた。
少女はゆっくりと顔を動かし、壁でも枕元でもなく初めてアイカをまっすぐに見た。
その視線を受け止めた瞬間、アイカは胸の奥がひどく軋むのを感じた。
少女の瞳は、怒りと悲しみ、自分を嫌悪する色まで混ざり合い、澱んだ泥水のように濁っていた。
アイカの胸がぐさりと釘を打たれたように痛んだ。
それでも、逃げるつもりはなかった。
アイカはぎゅっと拳を握りしめ、震えを抑えるように一度息を吐くと、まっすぐに少女へ言葉を向けた。
「……助けたかったから」
少女の目が大きく揺れる。
驚愕とも、呆れともつかない感情がその表情を一瞬で染めた。
「は……今さら何言ってるの」
その声にはかすかな怒りが乗っていた。
七年間、どれほど救いを待っていたのか。声の震えが、すべてを物語っていた。
「七年前、動いてすらくれなかったくせに」
声は震え、怒りの温度だけがはっきりとそこにあった。
アイカは一瞬だけ視線を伏せ、それからまた顔を上げる。
「……うん。ごめん」
謝罪は短い。
それが少女をより刺激したのか、少女は噛みつくように続けた。
「そのくせ九番は助けたじゃない」
少女の声は、擦り切れた布のように薄く弱いのに、その奥にある痛みだけは鋭かった。
絞り出すようにぶつけられた言葉は、七年間ずっと胸の奥で燻っていた火種のひとかけらだった。
なぜ自分ではなく、あの子だったのか。
なぜ あの日手を伸ばしてもらえなかったのか。
少女が抱えてきたその問いの重さを、アイカは否定することも、軽く扱うこともできなかった。
胸の奥がじくりと痛む。
ただ、真正面から受け止めるしかないと分かっていた。
「……私はあの時……言われた通りの弱いままで、動くことすらできなかった。そのせいで、助けられなかった」
アイカは静かに言った。
握りしめていた拳から力が抜け、白くなっていた指先に血が戻っていく。
しかし、声だけは震えなかった。
七年前の自分を許せていないからこそ、沈んだ色のまま固く澄んでいた。
「選んだなんて思ってない。あの時、私がチタを助けられたのも……いまでも奇跡だと思ってる」
その言葉は誤魔化しでも美化でもなく、本当のことだった。
チタを助けようとしたあの時だけは、恐怖をねじ伏せるようにして、かろうじて立ち上がることができたのだ。
あの一歩がなかったら、自分はきっと七年前の弱さにいまも縛られたまま、どこにも進めずにいたのだと思う。
「ずっと考えてた。襲撃の時、助けられなかった子はどうしてるんだろって。もし生きててくれてたら、どんなふうに過ごしてるんだろって……楽しく過ごしててくれたら、って」
「楽しくなんて……無理に決まってるでしょ。馬鹿にしてるのっ」
祈るように絞り出した声だった。
しかし、アイカの言葉を遮るように、少女が声を荒げた。
「してないっ!」
アイカも、胸の奥を掻きむしられるような衝動で返す。
「本当にそう思ってた。でも……もし、辛いとか苦しいとか、そんな毎日を過ごしていたなら……今度こそ、絶対に助けるって決めてた」
言い終えると同時に、アイカは一度床に戻した足を再び浮かせ、少女の方へ静かに踏み出した。
その歩みは決して強引ではないが、迷いもなかった。
「来ないで!!」
少女の叫びは張り詰めた糸のように震え、部屋の空気を切り裂いた。
それでも、アイカの足は止まらない。止めたらいけない、と直感のように思った。
少女は顔を歪め、鎖骨までかけていた布団を震える手で必死に引き寄せ、頭から深く潜り込んだ。
頼りないほど弱った力で、それでも必死にアイカから隠れようとしていた。
アイカは少女の傍らにそっと膝をついた。
布団に閉じこもる少女の丸い膨らみを見つめながら、呼吸を整え、ゆっくりと言葉を落とす。
「……私のせいで、ごめんね。でも、生きててくれて……本当に、嬉しかった」
少女は、アイカの声が間近に届いた瞬間、抑えきれないように唇を噛みしめた。
「助けるって、何っ!!」
布団を通してくぐもった声が、刃みたいに鋭く空気を裂いた。
「どうやって助けるの! 私はこの後、騎士団に連れて行かれて……処刑なんだよ。お姉ちゃんが、それを変えてくれるの!?」
叫びは泣き声と怒りの混じった、悲鳴のような響きだった。
アイカはその痛みを受け止めるように、ゆっくりとまぶたを閉じ、息を整えた。
まるでひとつひとつの言葉を胸の奥で確かめてから、そっと口を開く。
「ごめん……できない」
「じゃあ……助けるってなにっ!! できもしないのに……言わないでよ!!」
少女の声はさらに大きく跳ね、布団が震えるほどだった。
その中で少女の呼吸が荒くなる。泣いてはいないのに、泣いている時みたいに息が乱れている。
しばらくして、荒い呼吸の間を縫うように、アイカが静かに言葉を置いた。
「……処刑を変えることはできない」
ほんのわずかな揺らぎすら許されない、固く結んだ決意の声だった。
もちろんもしその判決を覆し、少女を助けることができるなら、どれほど嬉しいだろうとも思った。
手をとって一緒に村まで帰りたい。
そんな願いは確かに、アイカの中にあった。
けれど、それはできないのだ。
もちろん、もともとアイカにそんな力はないが、ここはナサ村ではなくリグラムで、法もまったく違う。
リグラムの住人ですらないアイカが口を出して、判決をひっくり返せるはずがない。
もし仮に、自分に力があったとしても、少女が犯してしまった罪を「なかったこと」にすることはできない。
そんなことをしてしまえば、犠牲になった子どもたちの気持ちはどうするのか。
そればかりか、少女ではない別の罪人たちまでも、「見逃してもいいのではないか」という歪んだ理屈を、この国に許してしまうことになる。
だからアイカは、たとえ胸が裂けるほど苦しくても、揺らいではいけなかった。
「でも……せめて。今まで私を恨んでくれた気持ち、全部……今、ぶつけてほしい」
「なにそれっ! 意味わかんない……!」
布団の中で、少女は丸めていた身体をさらに小さく縮めた。
助けたいと言っておきながら、結局は処刑を受け入れろと、そんな矛盾した言葉を言うアイカに、胸の奥で何かがきしりと軋んだ。
「うん。でも、これが今の私ができること」
「そんなの……全然、助けるじゃない……!」
少女の叫びは、もう怒りだけではなかった。
声の端で震える気配が、張りつめていた糸がきしむみたいに揺れていた。
そして数秒の沈黙が落ち、息を呑む音さえ聞こえない、冷えた静寂。
「……大っ嫌い……お姉ちゃん」
その一言は、布団の中から零れ落ちた泣き声だった。
アイカは反論も謝罪も挟まず、ただ静かにその言葉を受け止めた。
少女は止められなくなったように続ける。
「嫌い、嫌い、嫌い……!」
震える声だった。
泣きながら吐き出すたび、胸の奥に溜め込んでいた泥みたいな感情が溢れ出してくる。
「悪魔……! 鬼……!」
「……うん」
アイカは、すべてを受け入れるように小さく頷いた。
否定などしなかった。どんな言葉を浴びせられようとも仕方がないりそう思えるほどには、アイカ自身、この少女に酷いことをした自覚があったからだ。
罵声が続く。
けれどその合間には、押し殺した嗚咽が混ざっていた。
「……なんで……遅いの……!助けるなら……もっと早く助けてよ……っ」
噛みしめるような、喉の奥でつぶれた泣き声。
少女は布団の中で、胸元の服をぎゅっと握りしめながら言った。
少女の呻き声と泣き声が混ざり合う中で、アイカはそっと言葉を落とした。
「……ごめんね」
その声は、静かで、痛いほど真っ直ぐだった。
アイカが言葉を落とした直後、扉の方でギィ、と古びた蝶番が鳴った。
アイカは反射的に肩を震わせ、扉へ顔を向ける。
半開きになった隙間から、取手に手を添えた金髪の騎士がゆっくりと病室へ入ってきた。
その後ろに、従うようにもう一人の騎士と二人の兵士が静かに続く。
金髪の騎士は数歩進んで足を止め、ベッドの横にしゃがみ込むアイカ、そして布団に潜り込むように縮こまった少女へと順に視線を移した。
アイカが顔を上げると、騎士と目が合う。
「時間だ。そこをどいてもらいたい」
静かで、しかし揺らぎのない声だった。
アイカはきゅっと唇をかみ、思わず少女のベッド脇へ手を伸ばした。布団の端を掴む右手に力が籠る。
(もう……終わりなんだ)
少女と話せる時間は、ここで途切れる。
最後の別れになると理解した瞬間、掴んだ布団が指先で震えた。
騎士の合図とともに、横の騎士たちと兵士が静かにベッドへ近づく。
アイカの目の前で足を止め、ただ淡々と、アイカが離れるのを待っていた。
その無表情が、かえって現実の重さを突きつけてくる。
アイカは騎士たちを見上げ、眉を寄せながら腕の中の少女へちらりと視線を落とす。
一度、そっと瞼を閉じるとゆっくりと、立ち上がり、騎士たちの横を通って扉の前まで歩く。
そこで向きを変え、深く頭を下げた。
「……時間をくれて、ありがとうございました」
それは、最後に二人きりの時間を許したことへの、精いっぱいの礼だった。
騎士たちから見えないその顔は、もう涙がこぼれそうなほどに瞳が潤んでいた。
◇
アイカが扉を開けて廊下へ出た瞬間、もわっとした夜気が頬を撫でた。
廊下にはところどころに灯りがあるものの薄暗く、窓の向こうには澄んだ夜空が広がっている。月と星の光が差し込み、床に淡い影を落としていた。
その細い廊下の中央に、ネシュカがひとり立っていた。
両腕を後ろで組み、下ろした右腕の肘に左手をそっと添える、癖のような静かな仕草。窓から流れ込む月光を受けて、彼女の金髪は淡く輝き、その儚さが、いつも以上に際立って見えた。
そんな姿にアイカは呼吸をふっと止め一歩後ずさる。しかしすぐに踏み直し、左の手首で滲んだ涙をぐいっと拭い、右手で扉を静かに閉めた。
再び廊下へ視線を戻したとき、アイカは違和感に気づく。
(……レイサたちがいない?)
廊下に立っているのはネシュカだけだ。周囲を見回しても、他の仲間の姿はどこにもない。
「セイスたちは、外にいるわ」
きょろきょろと視線を彷徨わせるアイカに、ネシュカが落ち着いた声で言った。
「あ……そうなんだ」
てっきり、皆がこの廊下で待ってくれているものと思い込んでいた。
「騎士団があの子を連れていくのを、外で見送るの。私たちも行きましょう」
ネシュカはそう言って、後ろで組んでいた手をほどき、静かに階段の方へ歩き出す。
「……うん」
アイカも小さく返事をして、その背中を追った。
ネシュカとアイカが階段を降りて待合室に出ると、黒髪の看師と茶髪の看師が、腰の前で手を重ねて立っていた。整った姿勢のまま、ふたりはこちらの気配を確かめるように目だけを向けてくる。
そっけないほど静かな空気。その中で、少女を見送るために待っているのだと分かった。
ふたりが軽く会釈をすると、看師たちも同じ深さで頭を下げる。小さな礼の交換だけが場を満たし、空気が静かに揺れた。
外へ出ると、塀の向こうに並ぶ影が目に入る。
右手に、ハナネ、レイサ、アオイ、セイスが横一列で立っていた。レイサとハナネのあいだが、ひと呼吸ぶんだけ空いている。
「……あ、戻ってきた」
見つけた瞬間、レイサがいちばんに声を上げた。
アイカは手を振って応え、ネシュカはそのままセイスの隣へ歩く。アイカだけが一瞬立ち止まり、アオイが小さく指を動かして場所を示した。
「アイカはここだ」
「うん、ありがとう」
軽く息を整えて、アイカはふたりの間に入る。
湿り気を帯びた夜気が、肌にはりつく。重たくもない沈黙がしばらく続いた。
その静けさを破るように、診療所の扉が軋む音を立てて開いた。
金髪の騎士が姿を見せ、続いてもう一人が出てくる。その後ろから、兵士の袖をきゅっと握りしめた少女が、小さな影を曳いて現れた。
金髪の騎士がカレットの前に立ち、もう一人が扉を押さえる。兵士たちは少女に歩みを促し、進んだ。
アイカの横を通る少女は、最初に着ていた服が血と傷で使えず、看師に着せ替えられた患者衣のままだった。
一歩ごとに痛みが滲むのだろう。歩幅は小さく、指先は布を強くつかんだまま。呼吸も浅く、不安と痛みに押しつぶされそうな気配が伝わってくる。
頬には、涙の跡がまだ乾ききらず、かすかに光っている。
アイカは、胸の奥がきゅっと縮むのを感じた。泣きそうになる。
視界の端で、また涙が滲んでくる。けれど、ここで泣くわけにはいかなかった。
瞼にそっと力を込め、零れそうな雫を押しとどめるように、少女をまっすぐ見つめる。
これが、最後の別れになる。
その覚悟が、胸の底で静かに形を成していく。
せめて、この瞬間だけでも、泣かずに見送りたい。涙ではなく、ちゃんとした顔で別れを告げたい。
そんな、拙くても強い願いが、溢れかけた涙をぎゅっと押し留めてくれた。
少女がアイカに背を向け、ゆっくりと歩き出したその瞬間だった。
ぴたり、と足が止まる。
袖を掴ませていた左右の兵士たちも、まるで糸が引かれたかのように同時に動きを止め、少女の横顔をのぞき込んだ。
アイカも、ネシュカたちも、その異変に小さく息を呑む。
静かな夜の空気が、そこで一度凍りついた。
次の瞬間、少女がぱっと兵士たちの袖を離し、身体をくるりと反転させた。
そして、迷いもなくアイカたちの方へ小刻みに駆け出す。
その動きに、騎士たちが一斉に身構えた。
逃走か――そんな緊迫した空気が走り、金髪の騎士すら焦ったように踏み出しかけた、そのとき。
「――お姉ちゃんっ!」
か細いのに、真っすぐな声だった。
そのひと言が、騎士たちの動きをまるごと止めた。
少女は、走っているとは言い難いほどぎこちない足取りで、それでも必死にアイカへ向かってくる。
アイカは呼ばれた瞬間、胸が跳ね、目を大きく見開いた。
そして、少女がつまずきかけた刹那――。
「危ないっ……!」
アイカは反射的に前へ飛び出し、腰を落としながら両手を広げた。
だが、少女は転ばなかった。
むしろ、あと二歩、三歩と近づくうちに、まるで最後の残り火を燃やすように地面を蹴り、アイカの胸へ飛び込んできた。
小さな腕が、アイカの首元にぎゅっと回される。
アイカもまた、反射的に少女の身体を抱きしめ返した。
少女の身体は、思っていたよりもずっと軽かった。
抱きしめた腕の中で震えるその温度が、アイカの胸にじわじわと広がっていく。
少女は、しがみつくように腕に力を込める。
呼吸が荒く、そのたびに肩が小さく揺れる。
やがて――。
「……ごめんなさい」
布団の中で泣いていたときとは違う、弱くて、けれど確かな声が、アイカの首元で震えた。
「……ありがとう」
少女の涙がぽつり、ぽつりと落ちていく。
細い腕を伝い、つうっと滑って、アイカの肩口へ冷たく触れた。
その声は、泣き濡れているのに、どこか透き通っていた。
思ってもいない言葉が少女の口からこぼれ落ち、アイカは心臓を掴まれたみたいに、視界が一瞬開けた。
言い終えた途端、少女の腕から力がすっと抜けた。
その気配を肌で感じた瞬間、アイカの身体からも同じように支えが抜け、自然と抱擁がほどけていく。
少女はアイカから離れた。
月の光が静かに差し込み、濡れたまつげにきらりと光が宿る。
その顔は、泣いているのに、なぜか笑っていた。
眉は下がり、瞼の端から涙がぽとぽとと途切れなくこぼれ落ちていく。
悲しさが滲んでいるのに、それでも笑おうとする少女の姿に、アイカは息を呑んだ。
なぜ、今この瞬間に笑うのか。その理由はわからない。
けれど、その笑顔がアイカの胸を深く刺した。
アイカも、どうにか笑おうと必死に口元を上げた。
だが、同時にせき止めていた涙があふれ出し、頬を伝って零れ落ちた。
そして、少女はもう一度だけアイカに背を向けると、今度は兵士たちの袖を掴むことなく、自分の足だけで小さな歩幅を積み重ねていった。
その頼りない背中を、アイカたち六人は言葉もなく見送り続けた。
少女がカレットへ乗り込み、続いて兵士たちも中へ入る。
扉のそばで待っていた騎士が棒を差し込み、重い音を立てて鍵を掛けた。
やがて金髪の騎士が御者席へ上がり、手綱を握る。
カレットがぎしりと揺れて動き出すと、アイカたちは、その影が完全に見えなくなるまで、黙って見届けた。
神血の英雄伝 第七六話
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次回も読んでくださると嬉しいです૮ ˶ᵔ ᵕ ᵔ˶ ྀིა




