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神血の英雄伝  作者: 小豆みるな
一章 始まり
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道ばた拾い話 退屈を楽しむ方法

 イオリは癒庵での治療を終え、ようやく守攻機関の宿に戻された。


 とはいえ、しばらくの間は訓練も見回りも禁止され、記録書や報告書の整理など、地味な雑務に追われていた。


 アオイは北東の森でアイカたちと訓練中。

 役場にはシアン、北門にはユサ。

 セイスは大部屋でイナトに傷の手当をしてもらっているらしく、ちょっかいをかけに行く相手もいない。


 退屈な時間が、静かに過ぎていく。


ぐぅぅぅ


 イオリのお腹が勢いよくなった。


(そう言えば……朝から何も食べていませんでした)


 イオリは、お腹に視線を落とし、ようやく思い出した。


「たまには外で食べるものいいですね」


 イオリは思いついたように笑顔で呟き、市場の近くにある、炊所やちい飾りなどが並ぶ、(にぎわ)の小路へと足を進めた。





 賑の小路には、作った膳を出す炊処や茶処、首飾りや髪飾りを扱うちい飾りなどが並んでいた。


(あそこにしましょう)


 ふらっと目についた炊処に入る。

 中は右側に高い椅子がずらり、左奥には焚処があり、数人の村人が膳を食べていた。


「こんにちは、空いてる机にどうぞ」


 十六歳くらいの少女が気づいて声をかけてくる。

 イオリはにこっと笑ってうなずき、空いていた机に腰を下ろした。


 少女が記し札と墨木を手に近づいてくる。


「何を食べますか?」

「そうですね……では、この“(あや)り飯”でお願いします」


 膳書きを一通り見たあと、イオリは明るく言った。

 少女は「はい」と返事をして記し札に書き、焚処の方へ向かった。


 しばらくして、彩り飯と一緒に小さな器を持って戻ってくる。


「お待たせしました。香搾と辛芽は、お好みでどうぞ」

「ありがとうございます」


 彩り飯は、麦米の上にクフロ、アユラ、ヌルイ、そして粒状のアユラの卵が乗り、目にも鮮やかだった。


(きれいですね……)


 香搾をひと回しかけ、箸を口元へ運ぶ。


(……これは。とても美味しい。リグラムで食べるのとはまた違った味わいです)


 あっという間に食べ終え、支払いを済ませて炊処を出た。


(本当に美味しかったです。明日は茶処にでも行ってみましょうか)


 そう思いながら、イオリは満足そうに笑った。


 そして、残りの療養も、彼なりに楽しんで過ごした。


道ばた拾話 退屈を楽しむ方法

お読みいただきありがとうございました。


次回からは、いよいよリグラム編に入ります。

引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!


……ちなみにイオリは、療養中ほぼ毎日、賑の小路に足を運んでいたそうですよ՞•・•՞

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