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辻丸洋一は宅建協会の集まりの帰り、酔っ払い運転の車にはねられた。即死だった。
父の友交の輪は広かった。
昔からの友人はもちろん、不動産関係に町内会、趣味の野球を通じて知り合った人たち。それぞれが父の早すぎる死を悼んだ。
燿子はその席で真鍋と再会した。
彼はさらに素敵になっていた。整った顔に渋味がプラスされ、魅力は五割増しだ。
葬儀の席だというのに、よからぬ視線を浴びている。
だが、彼の意識は隣に寄り添う妻に向いていた。
きれいな人だった。いかにも優しそうで、控えめな女性に見える。
何でもハキハキものを言う燿子とは正反対の印象だ。
これが彼の好みなら振られて当然。
妬ましさと切なさに心がギュッと強張る。父を亡くした痛みと相まって気持ちは落ち込む一方だ。
頼るべき自分の夫は、と見渡すと、一歳になる息子を抱いて部屋を出て行くところだ。
無口で内気は夫は、葬儀が始まる前から居心地が悪そうだった。弔問客が多い上、知らない人ばかりで身の置きどころがないのだろう。
まるで頼りにならない夫に、なおさら泣けてくる。
燿子は母の背に手を回し、温もりを分け合った。