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今日こそは告る!
燿子は鏡の中の自分に誓った。
鏡の中の女はリクルートスーツに薄化粧をして、昨日までの自分よりずっと大人びて見える。
実際、昨日の自分とは大きく違っていた。高校を卒業したからだ。
同じ学生でも、女子高生と女子大生じゃ雲泥の差だ。昨日の自分より確実、真鍋に見合う女に成長しているはずだ。
燿子はこの日を心待ちにしていた。
真鍋に出会ってからの高校生活は永く切ない日々だった。
学校帰りには必ず辻丸不動産に寄り、課題を済ませ、母の手伝いをした。
仕事中の彼に、ベタベタ話しかけたりはしない。それではお客と同じになる。
そのかいあって、最近では真鍋に『燿子ちゃん』と呼んでもらえるようになった。
いつか真鍋と結婚し、家業を継ぐのが夢だ。
まずは仕事を覚え、宅地建物取引主任者にならなければならない。
燿子は真剣に計画を立てていた。
いつもつるんでいた明美と美幸は、あれ以来何度も辻丸不動産に来たがったが、全て断った。
お店の女性客だけでも厄介なのに、これ以上ライバルが増えたらたまったもんじゃない。しかも、遠慮なしに名前呼びするのが我慢ならなかった。
あんまり強固に断り続けたせいで、ふたりとの友情は疎遠になった。
それでも構わない。
真鍋をふたりの恋話の餌食にするくらいなら、友情を犠牲にした方がましだ。
それくらい彼が大事だった。