〜暗闇に差し込んだ光〜
あれから、半年が過ぎあの彼のことを忘れかけていた。私は変わらず、同じスーパーで働いていた。
そんなある日、
「隣町の店舗に異動して欲しいんだけど、どうかな?」
「・・異動ですか?」
「そこのお店は最近オープンしたばかりだから人手がまだ足りてないみたいなんだ」
「そうなんですね、、」
上司から、異動を告げられた。私は、環境を変えたい気持ちもあった為、その場で承諾した。
異動先で、担当することになった業務はレジだった。前のスーパーでやっていなかったということではないが、ヘルプで入る程度だったということもあり、なかなか慣れない。しかも、新しくできたばかりということもありお客さんの来店も多い。「休憩いきたいけど、行く時間ないな」そんなことを思いながらレジの仕事を続けていると、
「ここの担当になったんだ!」
声をかけてきたのは前のスーパーで同じく働いていた同期の夏美だった。この日、夏美はお客さんとしてこのスーパーに来店してきたのだ。
「異動になったって聞いてたけどどこに異動になったのか知らないままだったんだよね」
「だよね、連絡できずにごめん!」
「別にいいんだけどさ、それにしても忙しそうだね」
「毎日バタバタだよ」
「私、実は結婚したんだ!」
よく見ると、夏美の薬指には指輪がはめられていた。
「今度、結婚祝いのパーティーをやることになったから来てよ」
「うん!予定あけとく」
「よろしく!じゃあ頑張ってね」
そう言うと、夏美は帰って行った。私は、夏美の背中を見つめ日々充実してそうな姿に羨ましくなった。
休憩に入り、インスタを眺める。夏美の投稿を見てみると幸せそうな2人の写真が載せられていたが、旦那さんの顔は白く加工されていて見えなくなっていた。
「いいなぁ」
気づけば私は、自分の生活に満足していなく人と比べては落ち込んでいることが多い。異動すればなにか変わるかもと決意したけど、今のところなにも変わらないままだ。賄いでもらったパンにかじりつきカフェオレで流し込んだ。常に店内放送が流れている。放送のほとんどがヘルプの要請に関する内容だ。
「〇〇さん、惣菜エリアお願いします」
「鮮魚担当〇〇さん、サービスカウンターまでお願いします」
目まぐるしい毎日で幸せを見つけることができるのか私は、自信がなかった。やがて、休憩が終わり私はまた売場へ向かった。
2週間後の週末、夏美からパーティーの招待状が届いた。開催日は3ヶ月後だ。パーティーに参加したことは今までなかった為、少しワクワクした。
「パーティーに向けていろいろ準備しなきゃね」
私は、普段から服やオシャレに興味がない為、私服はほとんど同じのを着ていた。メイクもマスクをするため必要ないと思っていた。それぐらい容姿に関心がなかったのである。変わらず忙しない日々が、明るく感じることに喜びを覚えていた。
それから、私はインターネットでおしゃれに関する記事や情報を集めるようになっていった。盛れるメイクを研究したり、インフルエンサーが紹介していた化粧品を買ったりした。仕事にも、メイクをして行くようになり周囲の目がなんだか変わっていくのがわかった。仕事中にも、常に頭の中はメイクや自分の容姿のことで頭がいっぱいになっていた。
仕事が終わり、家に帰っても通販サイトを見るのが日課になっていた。
「この美容液、この前テレビで紹介されてたやつだよね」
ある美容液を見つけては、迷わず購入ボタンを押していた。そんな日々が続き化粧品にかかった総額は10万円に達していた。少し、危機感を感じていたが生活が明るくなる為やパーティーの為とあまり気にしないことにした。
そんなある日、休日に1人で街を歩いているとある男性に声をかけられた。
「すみません。少しお話よろしいですか」




