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小説の書き方

【恋愛小説の書き方編】先輩と放課後デート! それから…おうちデート!?

作者: 正城不落

(△)プロローグ:ラブレターを隠すヒロイン


「ど、どうしよう」

 香織かおりはラブレターを先輩に渡すために、放課後の下駄箱の前に立ち尽くしていた。

 彼女はいきおいでここまで来てしまったこともあり、手紙を下駄箱に入れる直前になって判断を迷っていた。

「も、もう一回読み直してみようかな?」

 彼女は手紙の中身を読み直そうとしていた。

「――ふむ、香織かおりくん?」

「ひゃあぁぁぁ!」

 後ろから聞こえてきた男の声に驚き、なぜか段々と声が細くなってのどからしぼり出すように悲鳴をあげる。

 どうやら、時間切れになってしまったようだった。

「ふむ…君も帰るところかな? 一緒に帰ろう」

「ひえっ!? は、はい、お願いします!」

 なぜかお願いしてくる香織の様子をながめて、承諾を得たと判断した先輩は、帰り道の話題を考えつつ一緒に帰路についた。



(□)第1話:寄り道


「そうだ、香織かおりくんはこれから暇かい?

 ちょっと飲食店に寄りたいのだが、いいかな?」

 先輩の提案に、香織かおりはぶんぶんと縦に首を振って、大げさに肯定の意思を表現する。

 すると、彼女の顔はニヤけだして、ふひひという奇妙な笑い声まで聞こえることもあった。

 そして、何を食べるのかさえ聞き出すことなく、飲食店という言い回しにツッコミを入れることもなく、先輩に連れられるままに香織は彼のとなりを嬉しそうに付いて行ったのだった。


 店内に入ると、ウェイトレスに案内されて席に着く。

 メガネの先輩は、自分が掛けている銀縁ぎんぶちのメガネをくいっと一度上げる。

「デラックスジャンボパフェが食べたい」

「そ、そうなんですか?」

「ふむ、デラックスジャンボパフェを食べよう」

 先輩はウェイトレスを呼び出すと、デラックスジャンボパフェを注文した。

「私も同じもので」

 香織かおりも同じものを頼むようだ。

 この香織の反応を見て、先輩は少し思案した。

「なるほど、そういうことか」

 先輩は注文をしたばかりなのに、再び店員を呼び止めて、それまでの注文をすべてキャンセルすると、改めて注文をやり直した。

「デラックスジャンボパフェ・ラブラブカップル専用スペシャルバージョンを一つ」

 注文を聞き終えると、ウェイトレスはかしこまりましたと言って去っていった。

「つまり、これが答えというわけだ」

「えぇっ!? なんで!? カップルって!?」

 後輩は、えっ、えっ、と顔を真っ赤にして何度も動揺どうようする。

「デラックスジャンボパフェには、アニメコラボ商品のおまけが付いている。

 そう、君のカバンにぶら下がっているキーホルダーは、君がここに出入りしていることの有力な証拠だ。

 そして、実はこのコラボ商品には、カップルでしか頼めない特別なおまけグッズが存在する。

 デラックスジャンボパフェ・ラブラブカップル専用スペシャルバージョンを頼むと、その4種類の中の一つを手に入れることができるわけだ」

 真剣なまなざしの先輩は、銀縁のメガネをくいっと中指で持ち上げる。

「君にトレードを提案したい」

 彼の話をまとめるとこういうことだった。

 先輩はデラックスジャンボパフェを買って手に入るキーホルダーが欲しかった。

 そして、ちょうど香織がカバンにぶら下げているキーホルダーの中にそれがあった。

 そこで、先輩は、本来ならばランダムに手に入るはずのキーホルダーを確実に手に入れるために、スペシャルバージョンのキーホルダーとトレードを提案したかったのであった。

「今日は僕のおごりだ」

「あ、ありがとうございます。

 あの…先輩も、このアニメ好きなんですか?」

「普通だ」

 ふつうかぁ。

 しかし、香織は新しい話題を手に入れたことを喜んだ。



(□)第2話:弟


「ふひひ、今日はデートみたいだったな」

 放課後の先輩との思い出を振り返って、香織かおりは部屋で一人(もだ)える。

 あのあと、先輩が「ふむ、もう少しカップルにふんそう」と言って、パフェを一口ずつあーんで交換できたことは一生に思い出になるだろう。

 部屋でくつろぐ香織は、今日の成果であるキーホルダーを速攻でスマホの写真に収めつつ、それを自慢するために友達にメッセを送っていた。


 コンコンッ。


「入るよ、ねーちゃん」

 ふひゃあ!? と、姉が大げさに反応する様子を見て、香織のおとうとは、目敏めざとく姉が手に握ってるものに注目する。

「デーモンスレイヤーじゃん。可愛いから、それちょうだいよ」

「だ、ダメだけど!?」

 弟の横暴に、宝物を手に入れたばかりの姉は抵抗する。

「えー、カバンにジャラジャラ付いてるじゃん」

「これは、そう、レアなやつだから、お姉ちゃんのにするの!」

 へぇ、とスマホで速攻に検索してレアなコラボ商品について突き止める。

 そして、驚きの事実に、弟は動揺どうようしたように会話を切り出した。

「ごめん…キーホルダーにそこまで気合が入ってると思わなくて。

 一人でカップル専用を完食してどんな気持ち?」

「ひ、一人じゃないから!?」

「それ、ほんと? じゃあ、聞いてみるわ」

 弟は、姉の友達にスマホでメッセージを送った。

 ぴろんっ♪

「食べてないって」

「み、ミヤビちゃん以外にも選択肢はあるでしょ!?」

「そうなん? あっ、もしかして」

 弟はスマホから写真を探して、

「この人?」

「うひゃあぁぁぁ!?」

 それを姉に見せつけた。

 そこには、メガネをくいっと持ち上げている先輩の横顔が表示されている。

 姉は奇声を上げるとまくらに顔をうずめて隠れてしまう。

「そうだ、この人、明日にでもうちにつれてきてよ」

「な、なんで!? ぜんぜん、無理だけど!?」

「理由は何でもいいよ。姉ちゃんの先輩の顔を一度(おが)んでやろうと思ってたからさ。

 ゲーム用意しとくから、そういうことで」

 弟は、姉のスマホを取り上げると、メッセージアプリから先輩の名前を探し出す。

 そして、無情にも、弟によって約束のメッセが送信されてしまった。


 ぴろんっ♪


「じゃ、そういうことで」

「なに、なに、先輩なんて言ってるの!?」

 部屋の棚から漫画本をごっそりと抜き出していき、横暴な弟はそのまま去って行ってしまった。

 あぅあぅ奇声を上げ続ける香織は、しばらく自分のスマホを見ることができなかった。


『良い取引ができたのでお礼は結構。

 それでは、明日お邪魔させてもらう。』



(☆)最終話:おうちデート


「ちわっす」

「ふむ、お邪魔する」

 はわわわわわ!? 先輩がうちに遊びに来てしまった!?

「ど、どうぞ!」

 そして、香織かおりは先輩の手を引いて自分の部屋に連れて行こうとする。

「ちょっと待ってよ。

 先輩さん、メッセ交換して」

「いいだろう」

 弟と先輩がスマホで交流を終えると、香織は再び先輩の手を引いて自分の部屋へと連れていったのだった。リビングでゲームしてるから、と声かける弟を一人残して。

「ふう――先輩、こんな部屋ですが、くつろいでください」

 先輩がきょろきょろと視線をさまよわせる。

「ふむ…そうだな、香織かおりくん、そこに座りなさい」

 二人きりになったところで、先輩は香織を勉強机の前のデスクチェアへと誘導した。

 先輩に両肩りょうかたを握られて、戸惑とまどう彼女のことは気にせず、そのまま椅子の方へと引っ張っていった。

「ふわっ」

 先輩が、マッサージするように香織のかたみほぐした。

「今日の目的は、弟くんの遊び相手になることだったはずだ」


 …はっ、そうだった!? なんで、私、先輩と二人きりになってるんだろう!?


「君は少し緊張しているようだ。

 このままんであげるから、少しリラックスすると良い」

 肩をみ、肩甲骨けんこうこつの周りをでまわし、そのまま背中に沿って手が下がっていくと、ぐいぐいと筋肉の隙間すきまを押して皮膚からがそうとする。

 それから、両肩りょうかたの外側をにぎって、筋肉の部分をぐにゅぐにゅと優しくにぎりつぶすようにみほぐした。

 先輩は、そのてのひらに簡単に収まる香織の体に、彼女と自分の体との差を感じとった。

「頭をむぞ」

「は、はい」

 ふわぁぁぁ、と頭皮マッサージまでする先輩に至れり尽くせりで、なんだか先輩との距離が近くなったような心地良さを味わった。

「…気持ちよさそうだな」

「ひゃっ!?」

 耳元で、先輩が香織に耳に小さくささやく。

「こんなに気に入ってもらえるなんて、僕も少し楽しくなってきた。

 香織くん、そこのベッドに寝てくれないかい?」

 ベッドに…先輩と!?

「お願いします」

 ためらうことなく彼女はベッドに飛び込み、自分からうつむきになって、自分の背中を差し出したのだった。


 ――先輩が、香織の背中にまたがり、彼女の足の付け根の下あたりにお尻を付けて、そのまま体重をかけた。


「あぁ」

 先輩は両手で、彼女の背中を押しつぶすように力を掛けて、ぐいぐいとむ。

 痛いけど、気持ち良いような、そんな感覚がずっと続いていく中で、香織は意識が段々とぼうっとしてきたのであった。


 ギシッ。


 先輩が一歩下がる。

 次の瞬間、それまで座っていた足の付け根部分をぐいぐいと押し込んで、そして、時ににぎるようにして何度もみほぐした。


 それから、マッサージの手は段々と体の下側へとさがっていく。

 最後に、彼は香織の黒いソックスをがして、足の指をてのひらをぎゅうっと押したり、両足をつかんで、ぼうるようにして香織の足首をほぐしたのだった。


「さあ、仕上しあげだ」


 先輩は、うつぶせの状態だった香織を、今度は逆に天井てんじょうを向くように仰向あおむけにひっくり返すと、そのまま香織のお腹の上をまたがり、その両手は、先輩をぼーっと見つめる香織の顔へとおおいかぶさった。

「ふぁい」

 先輩の指の平を使って、洗顔マッサージをするようにほっぺを回すようにみこむ。

 そして、無理やり笑顔を作るように、手の平の上ですべらせつつ何度もほっぺを耳の方へと引っ張って、最後に、目の下あたりと、目の外側あたりを両手で丁寧にみこんで、彼はマッサージを終わらせたのだった。

「…ふむ」

 マッサージは終わったが、先輩は、両手の親指を使って、口をぼへぇと開いたままの香織の口の中に突っ込み、そして、口のはしを引っ張った。

「あえぇ」

「………」

 そして、香織の鼻をつまんだ。

「――ふがっ!?」

「マッサージは終わりだ、そろそろ弟くんのところに移動しよう」

 ベッドから降りた先輩は、慌てた様子を香織を引っ張り立ち上がらせると、そのままリビングの方へと向かったのであった。



(△)エピローグ:ラブレターの行方


 先輩が家に帰った後、香織かおりはベッドの上でくつろぎながらメッセを送っていた。

「ええと…『マッサージ気持ち良かったよ』」

『えー、めっちゃ見たかった。

 私がマッサージするといつも涎垂よだれたらしてるし』

らしてないよ!?」

 本当にそうであったかは、実のところよく覚えていない。

 それでも、カラダ全部を先輩にさわられたような気がして、思い出そうとするだけで頭の中が熱くなった。

「もう、もう…それより『ラブレター読んでくれた?』」

『よんだよんだ!

 なにいってるかわかんなかった!』

 うひぃぃ。香織はその返答に苦悩する。

「どうしようかな」

『もうシンプルでよくない?』

 心を先読みしたような内容がスマホに表示される。

 シンプル、シンプルとは?

「………」

 考えてみる、おやすみ。

 それだけ告げて、彼女はスマホの画面を落とした。


 ギシッ。


 香織はベッドから降りると、そのままデスクの方に向かい、筆を手に取って、椅子に座る。


『好きです!』


 うーん…もう一声ひとこえ


『好きです、付き合ってください!』


 うん、これでいこう。


 それから手紙に名前を追記し、便せん用の封筒に用紙を入れると、ハート形のシールを張って封をした。


 これでいい。明日こそは、先輩に思いを伝えるんだ。

 彼女はその思いを胸に、部屋の電気を落として、眠りについたのだった。


 明日はきっといい日になる、そう夢見て。































<答え合わせ>

今回のテーマは、恋愛小説の書き方です。

恋愛小説に書き方も何もあるのかと、私もそう思いましたが、一応大事なルールがあることに気が付いたので、それをここで説明します。


まず、誰と誰の恋愛を描くかは先に決めておきます。

今回の物語の場合、香織とメガネの先輩の恋愛を書きました。


次に、ここで大事なのが、主人公の恋愛相手となる人間は、絶対に主人公が好きになると決めておくことです。

今回の主人公は香織なので、その相手である先輩は香織が好きであると決めておきます。

しかし、先輩が香織が好きだとしても、先輩自身が自分の恋心に気づいている必要はありません。

香織が色々とアプローチする中で、先輩が段々と自分の気持ちに気がついていく、その過程を描くことが恋愛小説のメインコンテンツになります。


すごく簡単に言い換えると、香織を好きになる催眠に掛かった先輩を、香織が欲望のままに好き放題に使い倒して、そのことを先輩自身も喜んでくれるような、そういったご主人様と下僕の関係を描くことが、恋愛小説の一番面白いと感じる部分です。

そして、今回の小説の場合、香織も先輩のことが好きになる催眠が掛かっていますので、ご主人様である先輩が、香織を欲望のままにマッサージをしてしまいます。読み終わって分かったと思いますが、この小説の一番面白いところは、先輩が香織を欲望のままにマッサージをして、そして、香織がとろけた様子でそのマッサージを受け入れる部分の描写だと思います。



最後に、

まとめると、恋愛小説の書き方とは、

パターン1として、

1.主人公を絶対に好きになる催眠に掛かるキャラクターを決める(ヒロインなど)

2.その催眠に掛かったキャラを、主人公が欲望のままに好き勝手する

3.その催眠に掛かったキャラは、主人公の欲望のままに好き勝手される中で、自分が主人公が好きなことに段々と気がついて行く

パターン2として、

1.主人公が好きなキャラクターを決める(ヒロインなど)

2.主人公を好きになる催眠に掛かったキャラが、主人公を欲望のままに好き勝手し、その好き勝手を主人公が許す

3.主人公が好きになる催眠に掛かったキャラは、主人公の欲望のままに好き勝手する中で、自分が主人公を好きなことに段々と気がついて行く

以上となります。


そして、もしも悲恋を描きたい場合は、逆に、主人公を絶対に好きにならない催眠を掛けたり、絶対に別の人間を好きになる催眠を掛けたり、さらに、たとえ両想いになったとしても、その思いが伝わらないようにしたり、引き離されてデートができない状態にされるようにするなど、つまり、主人公の恋愛相手となるキャラクターが、主人公を好きになることを運命レベルで邪魔をします。


ここで注意したいのが、実は、恋愛小説における主人公の『敵』とは、主人公の恋愛対象自身だったりします。なぜなら、主人公が欲望のままに恋愛相手を好き勝手したいのに、それを邪魔するのは、主人公のことが好きなことをまだ気が付いていない恋愛相手自身だったりするからです。

だから、恋愛を邪魔する敵は色々と考えられると思いますが、意外と、多くの作者が最後の敵である主人公の恋愛相手を倒すことを忘れているので、ちゃんと、主人公が好き勝手してもすべてを許してしまう恋愛相手を最終的には用意してあげることが、面白いと感じる恋愛小説を書く上で大事だと思います。

(追記:

同じように、主人公自身が、恋愛相手を好き勝手する欲望の発散を邪魔することが多いので、主人公自身が敵であることもあります。だから、ちゃんと主人公の恋愛相手に、邪魔する主人公を倒してもらった方が面白いと思います。)









<小説の書き方シリーズ>


面白い物語の始め方と続け方と終わり方とタイトルの付け方

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