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傭兵サムライ、異世界に行く〜世界最強の傭兵は異世界でも規格外でした。(サムライ無双Web版)  作者: キー太郎
第三章 ???ミーツサムライ

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第68話 そりゃ仲間割れしてる奴らが、いきなり仲良くテーブルなんて囲めないよ!(訳:作戦会議の前哨戦だよ)

 振袖を脱いだ六郎が、それを上下に軽く振る――「バサバサ」と小気味よい音と共に舞う土埃が小さな靄を作って消えた。


 そんな六郎を包む淡い光。


「……ホントにもう……無茶ばっかするんだから」


 聞こえてきた声に振り返ると、頬を膨らませるリエラの姿だ。


「見たことねぇ技ば使うとったけぇの」


 笑う六郎が振袖を再び肩へと羽織り直す。


「だからって、ワザと受け続ける必要ないじゃない」


 更に膨らむリエラの頬を、「性じゃ。諦めぃ」と六郎が突いた。


「いやぁ……イチャついてる所悪いんだけどさ……オジサンの怪我も治してくれないかなぁ?」


「だ、誰がイチャついて――」


 慌てて振り返るリエラの視線の先で、「イタタタ」と腰を擦りながら苦笑いするのはクロウだ。


 ニヤニヤするクロウに、頬を染めるリエラだったが……「いちゃつくっち何ね?」と眉を寄せる六郎を前に二人とも肩を落としている。


「嬢ちゃん……苦労してんのね」

「言わないで……って、だからそんなんじゃ無いわよ!」


 眉を吊り上げたリエラの頭を、六郎がポンと叩いた。


「何の話しよんのか分からんが、こん九郎やら云う男が必要なんは何故じゃ?」


「そう言えばそうだったわね」


 片眉を上げる六郎を、見上げるリエラの頬は未だ少し朱に染まったままだ。


 六郎を見上げていたリエラが、その視線をジンへと投げた。その視線とかち合ったジンが、少しだけ俯きその拳を握りしめる。


 暫く震えていたその拳だが、それがジンの諦めたような溜息とともに、ゆっくりと解かれていく――


「ロクロー殿。その男、クロウは俺たちの元仲間なんだ」


 ジンの射抜くような視線が突き刺さったクロウは、「いやぁ嫌われちゃってるねぇ」とヘラヘラしながら頭を掻いている。


「その男は十年前に……サクヤ様のご両親が亡くなった後、我々を見捨てて出奔した裏切り者――」


 再び拳を握りしめるジンが、彼らの関係を説明し始めた――


 元々サクヤの両親に仕えていたこと。

 サクヤやジンにとって、年の離れた兄のような存在であったこと。

 少ない仲間達に頭を悩ましながら、興国のため、様々な案を出してきた参謀だったこと。

 サクヤの両親が亡くなった後、サクヤ達を残し行方を消したこと。

 再開した時には、ギルバートの使いっ走りをしていたこと。


「――再び会えた時は嬉しかった……だが、金に靡いてサコン様やシズカ様のご恩を仇で返すとは……俺達の悲願、国の再興を忘れたとは言わせないぞ!」


 話しているうちに、ボルテージが上がってきたのだろう。ジンが腰を落として剣呑な雰囲気を纏いだした。


 そんな剣呑な雰囲気の中、クロウは相変わらずヘラヘラと笑い――


「オジサンさ、気づいちゃったんだよ……国の再興なんて無理なんだって」


 ――ジンだけでなく、サクヤや護衛たちを馬鹿にするように見回している。


「出来もしない事に付き合うほど、オジサンお人好しじゃないのよ」


 嘲笑するクロウに、ジンの怒りが増幅していく――


「貴様――」

「止めぇや」


 飛びかかりそうなジンを制したのは、意外にも六郎だった。


「ワシが手打ちんした喧嘩やぞ? こん場でワシん断りなく死合うんなら、二人揃って黄泉路ば渡らしたるぞ」


 腕を組み二人を睨みつける六郎。その振袖の裾と髪の毛が闘気でユラユラと持ち上がっている。


 空気が重さを持つかのような重圧に、ジンが冷や汗を流し、クロウは「オーケーオーケー」と両手を上げて降参のポーズだ……流石にリエラに治癒してもらった全快の六郎と、満身創痍の自分では分が悪すぎると踏んだのだろう。


「……ジン。主ゃ勘違いしとらんか?」


 投げられた視線に、ジンが「勘違い?」と眉を寄せて六郎を見ている。


「こん九郎やら云うんが裏切った? 違うの。主ら……いやサクヤに引き止めるだけの器量が無かっただけやろう――アダッ」


 豪快に言い放った六郎の頭をリエラが叩き、


「ちょっともう! アンタは全方位に喧嘩売らないの!」


 眉を吊り上げプンスコ怒っている。そんなリエラに六郎が「叩くことはねぇやろうが」と頭を擦り口を尖らせた。


 今も「言い方ってのがあるのよ」、「知らん。興味なか」と言い合う二人に、ジンは一瞬見開いた目をスッと細めた。


「ロクロー殿……いかに貴方と言えど、俺の主君を馬鹿にするのは――」

「ジン! 良いのです。ロクロー様の仰るとおりなのですから」


 再び剣呑な雰囲気を出したジン。その肩をサクヤが掴んだ。


「ですが、しかし――」


 納得がいかないジンが、サクヤを振り返るが、視線の先でサクヤは真剣な表情で首を振るだけだ。


「ロクロー様の言う通り、臣下を養っていくだけの甲斐性がない私が原因なのです。生きていくため、クロウが下した選択を私達が非難する事はなりません」


 サクヤの言葉にジンは「……はい」と小さく呟き項垂れている。


 そんな二人を見て、口角を上げた六郎が


「エエ主君やの。日の本に居ったんなら全力で仕えとったかもの」


 とリエラにしか聞こえないような小声で呟いた。


「そう思うんなら虐めちゃ駄目でしょ」


 笑う六郎をジト目で見上げるリエラ。


 サクヤとジンを眺めていた六郎が、視線をクロウへと――先程までのヘラヘラ顔ではなく、どこか険しい顔で六郎を見ていたクロウが、視線に気が付き慌ててその顔をヘラヘラとしたものに。


「いやぁ……青年。君は心底恐ろしいね……こんな死にぞこないのオジサン脅すとか」


 ヘラヘラ笑うクロウだが、どこかキレがないそれに六郎が呆れたように大きく溜息をついた。


「九郎。主ゃ――いや、止めじゃ。ワシんがらやねぇし、興味もねぇけの」


「それは助かる――」


 腕を組む六郎を前に、肩を竦めたクロウが苦笑いをこぼした。


「――オジサンだって、青年みたいな危ない奴より、グラマーでセクシーなお姉さんに興味持たれたいからさ」


 ヘラヘラと笑うクロウに、今までのような妙なキレが戻って来た。


「そらぁ残念やの……主ん本気には興味があるけぇ、話ば終わったらまた殺り合おうやねぇか」


 不敵に笑う六郎に、「いやいや勘弁」とクロウの苦笑いは止まらない。




 笑い合う二人の間に流れる奇妙な沈黙。



 それを破ったのは――


「九郎とやら。これだけは云うといたるわい」


 ――腕を組み直し、表情を真剣なものへと変えた六郎だ。


「主が何処で何をしようと、何を思って出奔しようと、好きにしたらエエ。ただ――」




「――ただ?」


 言葉を切ったまま、その顔を不敵な笑みに変えた六郎に、続きを促すようにクロウが言葉を返した。


 その表情はヘラヘラとしたものだが、何処が余裕がなさそうにも見えなくない。


「――ただ――」


 それだけ言うと六郎は踵を返して小屋へと歩き出し、途中に立ち止まるジンの肩に手を置いてクロウを振り返った。


「――ワシはコイツらなら……ジンとサクヤなら出来るっち思うとるぞ」


 自信に満ちた六郎の笑顔に、ジンが「ロクロー殿……」と呆けた表情を返している。


「まあ、何にせよ話し合いやらが先じゃな」


 そう言って振袖を翻した六郎が、ジンの肩を軽く叩き一人掘っ立て小屋の中へと消えていく。


 そんな六郎を見ていたリエラが小さく溜息をついて、クロウを振り返った。一瞬だけ見えた強張った形相のクロウに、リエラが口を開く。


「あなた…………ま、良いわ。アタシも興味ないし」


 肩を竦めるリエラに、「……若者は夢見がちだねぇ」とクロウも表情を崩して肩を竦めてみせた。


「とりあえず、ご同行願えるかしら? 知恵を借りたいのよ」


 ジト目のリエラに、「なんなりと」と観念したようにクロウが諦めたように歩き出す。

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