シンデレラの運
シンデレラに招かれて部屋に入っていく。可愛らしい部屋なのかと思っていたけど、実に質素な佇まいの部屋だった。小さなテーブル1つに椅子が1つ。鏡面台。箪笥。そしてベッド。あれ?これ、どこに座るのが正解なんだ?
「ちょっとベッドにでも座って待ってて下さいね。今、紅茶を淹れてきますので」
ベッドに座るのはやばい…ドキドキが止まらない…シンデレラが一旦、部屋を出て行く。どうしよう…いけないと分かっていても部屋を物色したくなってしまう。理性…理性…もしバレたら…どうにか耐え抜きシンデレラが戻ってくる。
「お待たせしました。はい、どうぞ」
紅茶を小さなテーブルに置いて、同じくベッドに座るシンデレラ。緊張して頭が混乱してきた。紅茶って何味だったっけ?
「あの…今日は色々とありがとうございました」
「そんな…特に何もしてないよ」
「ふふふ。片付け手伝いたいって言った人は初めてです」
「変だよね…でも、どうしても話がしたかったからさ…」
「そういえば、まだお名前聞いてませんでしたね。教えてもらっても良いですか?」
「あ、えっと…ヨウ…ヨウだよ」
「ヨウさんですね。ヨウさんは何をされてる方なんですか?実は100日も宿泊されるから気になっていて…」
まだ来たばっかりで何もしてないや…ていうか何をするのかもまだ分からないし決まってないし…
ええい!正直に言っちゃえ!この世界に来た流れや女神様の事まで全て洗いざらい話してみた。
「信じてもらえるか分からないけど…本当だよ。だから今日来たばっかりだから何もしてないよ。これからこの世界の事を勉強して、何かをしていけたら良いなと思ってる」
「私は信じますよ。女神様って本当にいらっしゃったんですね…嬉しい…」
「え?女神様って…もしかして、こっちの世界では幅広く信仰されていたりするの?」
「はい。7人の女神様が各地で信仰されています。運命の女神様、愛の女神様も勿論。ここセレネ王国では月の女神さまが信仰されています」
「7人?他にもいらっしゃるんだ…ちなみに他の女神様はどのような方か教えてもらって良い?」
「はい。あとは大地の女神様、知の女神様、光の女神様、森の女神様です」
「そっかぁ、勉強になるよ。ありがとうね。で、改めて相談なんだけど…今後も宿の手伝いとかさせて貰いいつ、色々と教えて欲しいんだけど…どうかな?」
「奥さんが良いって言って下されば私はいつでも…女神様の元から来た方のお力になるのであれば私の方から是非…」
「よし!明日、奥さんには僕から頼んでみるよ!了解貰えたらよろしくね!」
「はい、喜んで。ふふふ」
「あと、今ちょっとシンデレラのステータスを見てみたいんだけど大丈夫かな?」
「ステータス…ですか?」
「ステータスってのは個人個人が持っている能力を数値化したもので…」
「そうなんですね。ちょっと恥ずかしい気持ちもしますが大丈夫です!」
「ありがとう!じゃあ見るね!リーディング!」
ウインドウにシンデレラのステータスが映る。ふむふむ。HP150、武力42、防御力39、知力86、魔力、77、素早さ124、運4329?うん?目を擦って見直しても4329だ…飛び抜けすぎだ…
「あの…どうかされましたか?」
「いや。あの…シンデレラの運の能力値が凄すぎて…」
「えっ?本当ですか?」
「本当。ちなみに僕の運は100なんだけどシンデレラは4329」
「どうして私にそんな運が…」
「何でだろうね…あっ!よく見たら4329の9の右上に小さく※が付いてる!ちょっと待ってね」
下の方まで画面をスライドして探したら※の横にこう書かれている。「7歳の時に両親を流行病で亡くす。この事により両親分のステータス運を受け継ぎ329になる。更に不運分と子を心配する両親の祈りを加味して4000上乗せする」これは駄目でしょ…こんな事って…
「くっ…うぅ…」
「え!?どうして急に泣いてるんです!?大丈夫ですか?」
両手の手の甲で両目を抑えつけても涙が一向に止まらない…どうやってシンデレラに伝えれば良いんだろう?そう考えつつも心から感情がとめどなく溢れてくる。心配したシンデレラが背中をさすってくれたおかげで少し落ち着いてきた。
「うぅ…ごめん…大丈夫…また、落ち着いたら後日に話そう…」
「本当に大丈夫ですか?無理はなさらないで下さいね」
「ありがとう…」
「また、お話できるの楽しみにしてますね」
良い娘だ…嫁にしたい…ただ、今はそんな気持ちも不純に感じてしまう。ゆっくりいけば良いか…
「うん、じゃあまたね。紅茶ありがとう」
「どう致しましてです。おやすみなさい」
「おやすみなさい」