EP72:島根県の物型霊
北東へ進み島根県へと着くと、そこにはどっしりと構えられた社が置かれていた。「こ、これって…出雲大社か?」とセルキが言うと、「ああ。だが、出雲大社が物型霊じゃねえ。島根県の物型霊は…とんでもねえもんだ。」とアビスが言うと、出雲大社の中からドーンという激しく轟轟しい音が立て続けにひっきりなしに鳴るというよりかは飛んでいた。
その音は一つのものから発せられているものではなく、二つでも三つでも、四つでも五つでも六つ七つでもない。「八つの首が立て続けに暴れ続けている音が、ここまで鳴り響くとはなあ。セルキ、一旦中にはいるぞ。」とアビスが言うと、「そうしねえといけねえのか?」とセルキが言うと、アビスは「ああ。」とただ一言言うだけだった。「…まじかよ。正直行きたくねえんだけどなぁ。行かなきゃいけねえんなら行くしかねえのか…」とセルキは恐る恐る入っていくと、そこには八つの首を持つ蛇がいた。
「こいつが…神話に出てくる、八岐之大蛇か!」とセルキが言うと、「何だ貴様は!弱き人間が俺様に食い殺されにでも来たのか!?」と二つの首がセルキに突撃してきたが、アビスが「仕方ねえ!セルキ!絶望神の力を使って受け流せ!」と言うと、セルキは猛スピードで絶望神の力を発動させて『黒炎邪剣』で受け流した。
「何だ?こいつの中から急に神の匂いがしてきたぞ。この匂いは…………っ!間違いねえ。闇を操りし我ら怪魔疑神の友!阿鼻巣宝覇よ!久しきかな!姿を見せお主の声を聞かせてくれ!」と『八岐之大蛇』が言うと、「どうするんだ?アビス。」とセルキが言うと、「変われ、セルキ。俺となら『八岐之大蛇』は話してくれるだろうからな。」とアビスが言うと、セルキはアビスと変わった。
「あれから何年ぶりだ?八岐」とアビスが言うと、「おお!その声はまさしく阿鼻巣ではないか!久しいな。まあ、封印中での再開ではあるが。して、なぜここへ来たのだ?」と『八岐之大蛇』が言うと、「ああ、島根県の物型霊になってるおめえをぶっ壊すためだ。」とアビスが言うと、『八岐之大蛇』は高らかに笑った。
「くぁーはっはっはっはっはっは!まさかお主も神どもに騙られたのか!?くぁーはっはっはっはっはっは!」と笑い続けていると、「どういうことだ?おめえじゃねえんなら、誰なんだ?そもそも、おめえの言うことはあまり信じられねえんだが…」とアビスが言うと、「おいおい、友のことを信じれぬとは…まあ、自覚はあるのだが…それは、『あいつ』が俺を倒させるための嘘だ。」と八岐之大蛇は言った。
「すると…おめえを倒すように仕向けるやつは…」とアビスが言いかけたとき、入口から「どうやら、侵入者ですよ。義父上。」「ちっ!あんとき俺にまだ力が上手くついていなかったばっかりでこうなっちまった!しかもこいつぁ、異国の神だな!そいつを解放すんなよ。そいつはずっと苦しませておく必要があるからな!」と二人の親子のような会話が聞こえてきた。
「何言ってんですか。俺ぁ絶望の神だ。あんたらの絶望に歪んだ顔を一度見てみてぇもんで開放させてもらいますよ。須佐之男命と大国主命!」とアビスが言うと、「「なら…あん(な)たをその人間もろとも殺(倒)すだけだ(です)!」と二神が言うと、「ったく…やり辛え相手だな!セルキ、悪ぃが俺がやらせてもらうからな!」とアビスが言うと、「おめえじゃねえとダメなんだろ?なら、思っきり殺ってくれ!」とセルキは言った。
「我に応えよ!『草薙剣』!」と須佐之男命が言うと、彼の手元に一刀の刀が飛んできた。「あれが…よくゲームとかに出てきた草薙剣…」とセルキが感激している間にも、アビスは『黒炎邪剣』で対応していた。「まさか、侵入者が我が嫌う異国の神とは!貴様は、何しに八岐之大蛇が封じられているところに入った!」と須佐之男命が草薙剣を速く、そして重くアビスに畳み掛けながら言うと、「島根県の物型霊っつうもんになった『八岐之大蛇』を倒しに来ただけだ!あんたらもそろそろ八岐之大蛇を殺りてえはずだ!こんなところで殺り合っても意味はねえぞ!」とアビスが言うと、「異国の神の言うことなど、信用できるものか!」と須佐之男命は言って聞かない。
「ですが義父上、もし彼の言うことが事実なのであれば、これは好機です。彼が私達と同じ目的なのであれば…」と大国主命が言うと、「しかしだな…奴は八岐之大蛇を始めとする怪魔疑神の友だ。そんなやつの言う事など、怪魔疑神と同等に信用できぬ。」と須佐之男命が言うと、「どんだけ信用がねえんだよあんたらにとって俺ぁ…」とアビスが言った。
「だが、貴様の弟は信用できる。なぜなら、我らとよく意見が一致するし我らのことをよく見ておる。彼が貴様と同じことを言えば、信用してやろう。」と須佐之男命が言っているとき、八岐之大蛇からドーンと音がなると、八岐之大蛇を縛っていた鎖がジャラジャラと外れていき、「くぁーはっはっはっはっはっは!ようやく力を取り戻すことができたぞ!これも阿鼻巣、お主が時間を稼いでくれたおかげである!須佐之男命と阿鼻巣よ!これで我は全盛期以上の力を取り戻すことができた!ここから、貴様ら神を喰ろうて我が冥世を支配してくれようぞ!」と八岐之大蛇は声高らかに言った。
「はあ、結局そういうこったか。須佐之男命大国主命と戦ってる隙をついて八岐之大蛇倒す計画がおじゃんになっちまったじゃねえか!どうしてくれんだよまじで!」とアビスが言うと、「んなこと言われても分かるわけがないであろうが!そういうのは言ってくれぬと我は本気で貴様を信じておらぬのだぞ!」と須佐之男命が言い、「だから言ったじゃないですか!事実かもしれぬのですから好機であると!」と大国主命が言うと、須佐之男命はぐうの音も出ずにいた。
「はあ…もう封印が解かれちまって、暴れられても困るからな。須佐之男命よ、今からでも遅くはない。協力して八岐之大蛇を倒すぞ!」とアビスが言うと、「全くご自身の価値観で判断しないでくださいよ、義父上。」と大国主命が言い、「…何も言えぬわ。」と須佐之男命はぼそっと言い、「すまぬな、異国の。八岐之大蛇を倒すのに協力してくれ。」と言うと、「あんたじゃねえから、断らねえよ。」と皮肉混じりにアビスは言って構えた。
そこから八岐之大蛇は首を無造作に伸ばし四方八方からアビスたちめがけて突撃してくる。その攻撃は速く、なんとか首を切り落としてもすぐに再生してしまう。「何だと!あいつめ、一体どうやってあれほどの再生力を!」と須佐之男命が言うと、「八岐之大蛇の首を切り落としたとき、あいつの中からあいつの力と、他の怪魔疑神の力を感じた。」とアビスは言う。
「ああ、そうだ。そのとおりであるぞ、阿鼻巣宝覇!我は他の怪魔疑神を喰ろうて力をつけたのだ!だが、須佐之男命と出会ったときはまだ奪った力が体に馴染みきれておらぬ状態だったのでな。貴様に簡単に封印されていたのだ。…だが、幾万年と呼べる時を経て、ようやく馴染みおった!今の我は何度首を切られようが核を破壊されようが死ぬことはないのだよ!くぁーはっはっはっはっはっは!」と八岐之大蛇が言うと、「くそぅ…倒すことができなくなってるのなら、戦う意味がないではないか!」と須佐之男命が弱音を吐いていると、「そんなこと言っているときじゃないですよ!…ですが、何もできないのも事実ですがね…」と大国主命が言うと、アビスがおもむろに八岐之大蛇に近づいた。
「な、何を!?」と大国主命が言うと、「ほぉ!我が友よ!大人しく食われる気になったのか!」と八岐之大蛇が言うと、アビスは八岐之大蛇に触れながら「そうやすやすと死ぬわけにはいかねえんでなぁ。いいか、セルキ。おめえは相手の力を無くしてたが、俺は相手の力を奪うことができるんだよ!『嘆きの淵・絶望の棺』」とアビスが言うと、八岐之大蛇の体に変化が現れ始めた。
それまで暴れまわっていた首がシュルシュルと八岐之大蛇の方に集まり一つにまとまってそれに応じて八岐之大蛇の体もみるみる小さくなっていく。「こいつは、神の一部を喰らって怪魔疑神になった一匹の小さな蜥蜴だ。その神の力も、怪魔疑神の力も今は俺の…俺達の手にわたったってこった。」とアビスが言うと、「ふ、ふざけるでない!我の…我の力を返せ!阿鼻巣宝覇!我は、冥世を支配する神と…!ぐはっ!」と八岐之大蛇が言うと、須佐之男命は草薙剣で八岐之大蛇を刺しながら「貴様は永遠に眠り、二度とこの世界に生まれてくるでないぞ!」と言うと、「くそう、くそう!我は!ずっと!神を!恨み続けてやるからなぁぁぁぁ…」と八岐之大蛇は噛ませのような捨て台詞を吐きながら消滅した。
「…すまぬな、お主を信用することができず…」と須佐之男命が言うと、「まあ、しょうがねえとは思ってるがな。俺ぁおめえらとあんまり関わり持ってなかったし。」とアビスは言い、「セルキ、八岐之大蛇の力を取ったら、偶然なんだが飛び道具技を会得することができたぞ。」と言った。
「まじか!やっと遠距離技を使えるのか!…っ!よくねえこと思いついちまったかもしんねぇ…」とセルキが言うと、「あの…阿鼻巣殿…神域にもそろそろ顔出してくださいね。」と大国主命が言うと、「言ってるだろ?行くときに行くって。」とアビスは言った後、「…行けるかわかんねえけどな。」とぼそっと言うと、セルキは中で黙っていた。そして、「じゃあな!俺たちゃ次のとこに行くからよぉ!」とアビスは言いながら飛び去り、「セルキ、戻すぞ。」と言ってセルキと入れ替わり、「で、おめえの言ってたよくねえことって?」とアビスが言うと、「…ゴーキンの覚悟を引き上げる作戦だ。」とセルキは言った。
その後、ゴーキンたちが着きいつものように「大川!」「ええと…南!」と言う流れをした後向かおうとしたところに、黒い炎を纏った蛇頭の剣撃が八首のように飛んできた。「これは!セルキの使ってたあの剣と同じ気配だ!『盗剣:清龍水』!」と剣道が言い、その剣撃を相殺した。
「ゴーキン君、セルキ君は…もう俺達を友達とも仲間とも思っていないようですよ。」と魔導が言うと、ーセルキ…お前は、お前が嫌ってた奴らのようになっちまってるのか…!お前を…戻すことは…もう…とゴーキンは怒りとショックが混じり合った歪んだ顔になった。
「だぁ!やっぱ相殺っつうか、打ち消されるよなぁ…そりゃあ、使い始めた技だからな。『黒炎蛇剣:蛇腹八頭牙』」とセルキが言うと、「それでも、多少の足止めにはなってるはずだぜ。先急ぐぞ。」とアビスが言うと、「次は…広島か?」とセルキが言うと、「ああ、そうだな。」とアビスは答えた。
黒炎蛇剣:蛇腹八頭牙 今まで使っていた黒炎邪剣から派生した八岐之大蛇の八首を吸収したことで生まれた剣と技。この剣から放たれる剣撃・蛇腹八頭牙は、黒炎に纏われた八つの蛇を無造作に飛ばして突撃させる。なお、威力は仏断斬流より弱く、末多無死より少し強い。




