EP68:長崎県の物型霊
ゴーキンたちと離れてしばらくしたあと、長崎県に向かって飛んでいる途中にドーンという音と共にセルキに向かって砲弾が飛んできた。「うおっ!危ねえな。どっから飛んできたんだ?」とセルキがあたりを見渡すと、少し遠くの方に海上要塞のようなものが漂っているのを見つけた。
「なあ、アビス。あれが、長崎の物型霊なのか?」とセルキが言うと、「ああそうだ。あれが、冥世で数少ない死んだ人たちが作り上げ、そこに水塊が住み着きいつの間にか一心同体となった珍しい物型霊の一つである、『ウォーシップアイランド』だ。」とアビスは言った。
「ん?水塊ってことは、これも例の外国人二人じゃねえのか?てか、鹿児島の時もそうだけどよ。」とセルキが矛盾を指摘すると、「それはな、鹿児島のは水塊の実家だからな。その後に宇宙センターが鹿児島の霊たちの間で話題になってそれを聞いた水塊が形成したのが鹿児島の事例。今回はさっき言ったが、水塊が勝手に住み着いてこうなっちまったっていう意味のわからねえ不思議で奇妙な事例が起こっちまってるからな。水塊の詳しいところまでは、創造神でもねえ限りわからねえよ。」とアビスは言った。
「そうか…まあでも、俺等にとっちゃんなことは関係ねえからな。俺等は、物型霊を全てぶち壊すだけだからな!」とセルキは言いながら、『ウォーシップアイランド』へと向かっていった。すると、『ウォーシップアイランド』の中から「おい、なんか飛んできたぞ!何なんだ、あれは!」と人の声がして、「そ、空を飛んでいるぞ!何なんだあいつは!」や「分からぬ!だが、我々の同胞ではないのは確かだ!我らの鉄鋼を狙う者やもしれぬ!我らがここの鉄鋼で作り上げた城塞や迎撃設備で、あやつを撃ち落とせ!」など次々と声が聞こえてきて、セルキに向かって砲弾をどんどん撃ってきた。
「ちっ!あっこにいる人たちが近づかねえように邪魔してきやがる!だがな…舐めんなよ。てめえらごと、物型霊と化したこの島を壊滅させてやる!」とセルキはアビスに相談無しで絶望神のちからを発動した。「おい、何やってんだセルキ!おめえ、俺に何も言わねえで!」とアビスが言うと、「ちょっと黙っててくれ。あいつらをまとめて冥界に送って、楽にするだけだ。」とセルキは狂気と優しさの混じった声でアビスに言うと、「…おめえ、何もんだ?」とアビスが声を漏らすと、「アビス、何いってんだ?俺は、おめえと出会ってからこれだぜ?」とセルキは言った。
「けんどもまあ…人間たちは何も悪くねえしな。さっきはあの人達もろとも潰すとか言っちまったが、流石にそれはしねえよ。俺がぶっ壊すのは、あくまで物型霊だからな!」とセルキは言うと、人が手薄そうな場所を探し回った。すると、人があまりおらず装備も他と比べて軽装な場所を見つけることが出来た。
「見つけたぞ…先にここからぶっ壊してみるか!おらよ!『仏断斬流』!」とセルキは激しく重たい轟音を伴いながら人がいない手薄なところと人が集中している頑丈で屈強なところとを切り離した。その後に「核はここにゃなかったか…まあ、それもそうか。けんどもどっちみち細かくはするがな。『末多無死』。」とセルキは何度も何度も細かく破壊していった。
一方で、セルキが放った轟音を聞いた『ウォーシップアイランド』に住んでいる人たちは、「な、何だ!今の音は!」「向こうだ!まだ開発が手薄なところからだ!」「急いで確認しに行くぞ!」と次々にセルキがいた場所へと向かっていった。
「よし…うまく誘導することが出来たな。この調子で反対側反対側って交互に削っていきゃ、あの人達も避難するだろ。近くに船も置いているみてぇだからな。」とセルキが言うと、「おめえ、仲間達と少しやりあってから何があった?」とアビスが聞くと、「ん?何もねえぞ?」とセルキは何でそんなこと聞くんだといった顔で返してきたので、「…いや、なんでもねえ。だがな、急に絶望神を使うなよ。使いすぎは使いすぎでおめえの体の負担もやべえんだからな。」とアビスがあまりにも躊躇なく絶望神を使うセルキに注意すると、「…ああ、わーったよ。」とセルキは静かに了承した。
一方で、確認してきた『ウォーシップアイランド』の人たちは「な、なんだこれは!?」「お、俺達が必死に作った要塞島が…いともたやすく斬られているかのように削られているだと!?」「おそらく、先程飛び回っていたやつのだ!俺達の中にこんなことを出来るやつがいるとは思えねえし、いたとしてもこんなことをするわけがねえ!」「急いであいつを探すぞ!止めなければ…ここが落ちてなくなってしまう!」と人々が騒ぎ始めた。
「…なんか騒がしいな。まあ、あんなに人が行っちまえばこっちも解体しやすいなぁ!」とセルキは『仏断斬流』と『末多無死』を繰り返しながら次々と『ウォーシップアイランド』の島面積を少なくしていき、人々も焦り始めた。
更にセルキは、『ウォーシップアイランド』に降り立ち、『ウォーシップアイランド』に建設されている建物を壊して均し始めた。「セルキ、ここまでする必要はねえぞ?」とアビスが言うと、「壊すんだったら徹底的にいかなきゃな。」とセルキが聞く耳持たずでいると、パーンと音がしたあとにセルキが「ぐっ!」と膝をついた。
「はぁはぁ…化け物めっ!見たか!俺達が結集して作った最高の銃を!お前は亡霊と同じなんだろ?だから、亡霊に効くように特別な銃弾をなんとか作り上げたんだ!実際に効くかどうかはまだわからなかったから、お前で試させてもらうぜ!」とガタイの良い人は言った。
「まあ…俺がてめえらと同じように普通の亡霊だったらの話だがな。」とセルキはぬるりと起き上がった。「ば、馬鹿な!?当たりどころが悪くとも、しばらくは動けんはずだぞ!」とガタイの良い人が言うと、「普通の亡霊の話だろ?俺は、死神だ。俺はここに住まう物型霊をぶっ倒しに来たまでだ。てめえらを冥世から追い出しはしねえ。この島を離れて本州にでも帰りな。おっさん共。」とセルキは言った。
だが、「断る!」と人々は口々に言った。「俺達はここで生きていくと決めたのだ!ここを壊すのなら、俺達も共にくたばる覚悟はできている!」とリーダーっぽい人が言った。「ああそうかよ…」とセルキは飛んだあと、「じゃあ…ここでくたばりな。絶望神の力90%+『仏断斬流』!沈め!『ウォーシップアイランド』!」とセルキが振り下ろすと、『ウォーシップアイランド』は轟音を出しながら縦に真っ二つになり、核は破壊され徐々に真ん中から沈み始めた。
本当に『ウォーシップアイランド』を沈めてきたことに驚き船へと逃げ出す覚悟ができていないものと『ウォーシップアイランド』と共に冥界へ向かう覚悟が出来ているものに分かれていた。覚悟ができていないものはなんとか全員船に乗り込み、覚悟が出来ているものは目を閉じ腕を組み仁王立ちをして沈みゆく『ウォーシップアイランド』と共に海の中へと消えていき、そこから現れた淡い光が空へと飛び立ち消えていった。
「ほ、本当に俺達がさっきまでいた島が消えちまった。」「リーダーたちも消えちまった。」「…俺達、これからどうすりゃいいんだ?」と船に逃げた人たちは不安と焦りの声を上げていた。「…ほんとは、何の関係もねえ人たちは巻き込みたくはなかったんだがな…」とセルキは言いながら、飛び去っていった。
その後に、魔導と大川がやってきて、セルキがいたであろうところに着くと「ど、どういう状況ですか?これは…」と魔導が絶句していると、「おい、何だあれは!?」「海坊主か?」「お、お助けを〜!」と人々は声を荒げていた。
そこにようやく追いついたゴーキンと剣道は「大川君、やつはどこに?」と聞くと、「えっと…北東!」と大川が言うと、ゴーキンたちはすぐさま向かっていった。「アビス…次はどこなんだ?」とセルキが言うと、「次は…佐賀だ。」とアビスは答えた。
「ん?ここは?」と『ウォーシップアイランド』に乗っていた人たちは冥界へとたどり着き、目の前に大仏様がいることに気づくと、「だ、だだだ大仏様!?するとここは…」と言うと、「ええ、ここは冥界ですよ。水塊…『ウォーシップアイランド』と共存していた人たちよ…あなた方は、冥世にまだ居たかったという気持ちはなかったのでしょうか?」と『奈良の大仏』が言うと、「…確かに少しばかりはありました…また一から作ればいいとも思いました…………ですが、『軍艦島』は我らが大切に育ててきたいわば子のようなものです!子だけを見捨てて我らだけ冥世に残るなど、我らは出来ないのです!なので、我らは『軍艦島』と共に冥界に来ることを望んだ次第です!あのガキに恨みがなくはないですが…あのガキに罪は非ず!あのガキを許してはくれぬだろうでしょうか!?」と淡々とあまりにもセルキに都合の良いことを喋った。
だが、『奈良の大仏』は何一つ表情を変えず、「大丈夫ですよ。彼を咎めることは私はいたしません。彼の罪は私が全て取り払いましたから。それよりも、あなた方を歓迎することが先です。ついてきてください。」と『奈良の大仏』に付いていった。
ーこれでいいんだろうな!?ガキ!ああ言えば、冥界に来ても俺達の前に現れねえんだよな!?約束は…守ってもらうぞ!いかれちまってるクソガキが!とリーダーは道中そう思っているのだった。




