EP65:宮崎県の物型霊
南東へ行き、宮崎県へと着いたセルキは「で、今回はどっちだ?」といつも通り聞くと、「ああ、今回は向かう方だ。高千穂町へ行ってくれ。」とアビスが言ったので、セルキは宮崎県高千穂町へと向かっていった。
しばらく飛び、高千穂町へ着くと、そこには一基の社があった。「…これが、宮崎の物型霊なのか?」とセルキが聞くと、「いいや、これはただの飾りだ。本命はこの社を抜けた奥にいるぞ。」とアビスが言うので、セルキが社を抜けると、どこからかシャンシャンと鈴の音が聞こえてきた。
「なあ、なんだ?この音は?」とセルキが聞くと、「あれも、気にするな。…見えてきたぞ。これが、宮崎の物型霊だ。」とアビスが言うと、そこには壁しかなかった。
「おいアビス。どこにいんだよ!」とセルキが叫ぶと、正面からゴゴゴと音を立てて岩がずれ始めていた。そして、その岩はまっすぐにセルキの方向へと向かってきたので、セルキはこれを躱した。
「な、何だこの岩!ん?」とセルキは岩が塞いでいた穴の方を向くと、そこには何やら神聖な光が漏れ出していた。「アビス、この岩はいってぇ何なんだ?」とセルキが言うと、「こいつは、日本神話にある天岩戸モチーフだ。天照大神が閉じこもったとされる岩だな。名前は『ゴッドロック』。まあ、こいつは天照大神の代わりにおめえが見た光を閉ざしていたみてえだが。」とアビスは言った。
すると、『ゴッドロック』はゴロゴロと元いた場所に戻った。その様子を見たセルキは再び近づくと、また『ゴッドロック』が突撃してきてその後また元いた場所に戻った。
「なるほどな…あん中になにかありそうだな…というか、あん中にいるやつが岩戸を守ってるように思えてきちまった。」とセルキが言うと、「どういうことだ?」とアビスが言ったので、「考えてみろ?あれはよくゲームとかの遺跡にある近づくと作動する罠みたいな挙動をしてんだよ。だが、あれはあくまでも物型霊だ。普通に『ゴッドロック』が動いてるって感じだが、だとしてもあん中を守るような挙動には引っかかるんだ。つまり、あの奥には何かがいると思うんだ。」とセルキは説明した。
「はぁなるほどな。なら、すぐにあの岩ぶっ壊す必要があるな。」とアビスが言うと、「ああ、さらに言やあん中に核がなけりゃあの『ゴッドロック』はブラフだったっつうことにもなるからな。どっちみち、ちゃっちゃと壊して中に何があるのか確かめるしかねえな!」とセルキは再び『ゴッドロック』へと近づいていった。
そして、『ゴッドロック』に向かって『邪舞:黒炎邪剣』で斬りかかろうとするも、『ゴッドロック』は動こうとはしなかった。これを好機と見たセルキはそのまま『仏断斬流』で斬ろうとしたが、弾き返されてしまった。
「おい、何だあの硬さはよ!あんなん、今じゃ斬ることは出来ねえぞアビス!」とセルキが言うと、「うーーーん…普通の岩なら余裕で斬れるんだがな…あの硬さは異常だな。まじでヒビすらも入ってないし…まいったな。」とアビスは苦しそうに言った。
すると『ゴッドロック』はセルキがまだ近づいていないのにもかかわらず、いきなり飛び出してセルキの後方にすぐに回りセルキは躱せないと感じ受け止めようとするも、『ゴッドロック』の勢いに押されてしまい、岩戸の中に入ってしまい、『ゴッドロック』は再び入口に佇むようにセルキを閉じ込めた。
セルキは中からドンドンと『ゴッドロック』を叩くもびくともしない。「くそっ…中には入れたが、完全に閉じ込められちまったな。とりあえず、奥に続いてるみてぇだから行ってみるか…何もなかったらそれはそれで終わりだがな。」とセルキは言いながら奥へと進んでいった。
奥に進んでいくと思っていたよりも短く、行き止まりに着いた。「なんだよ、何もねえじゃねえか!天岩戸モチーフなんなら中に誰かいるもんじゃねえのかよ!」とセルキが叫んでいると、「どなたですか?」と女性の声がどこからともなく聞こえてセルキは驚いていた。
「もしかして…アビっちゃんなの?」とその女性が言うと、「っ!わりぃセルキ、ちょっち体借りるぜ。」とアビスは言い、「…こんなところで『ゴッドロック』に閉じ込められちまってたのか?メリウラ。250…いや、350年ぶりか?いやもっと前か…俺が一回死んだのが14世紀のどっかで、それよりも前だから…700年前か…」とアビスが言うと、奥の影のところからグラマラスな体付きの女性が現れた。
「おいアビス、この女は何なんだ?」とセルキが聞くと、「彼女は…希望神の部下の一人だったんだが、俺と一緒にいたことを他の部下に見つかっちまって、他の部下たちから嫌がらせとして追い出されて俺と離れ離れになっちまったんだ。」とアビスは言った。
「…きゅ、急にそんな重てえ過去を言われてもなぁ…」とセルキが言うと、「その体…あなたのじゃないわよね?」とメリウラが言うと、「ああ、今はセルキ・マッカントリーの体を依り代にして生きてるって状態なんだ。」とアビスは言った。
「ところで…どうしてここにいるの?まさか、私と同じで閉じ込められちゃったの?」とメリウラが言うと、「ああ、そうなんだよ…どうやってここから出ようか考えててな。俺達にゃ、やるべきことがあるからな。」とアビスが言うと、「それって…またあなたが死ぬことじゃないわよね?」とメリウラが言うと、アビスは黙り込んだ。
「…メリウラ、おめえは『未来眼』持ってるだろ?俺が何をしようとしてるのかも。」とアビスが言うと、「…やっぱり、そうなのね。なら…あなたをここで止めるしかないわ!」とメリウラが「来て!」と言うと、入口の方からどんどんと何かが音を立てて近づいてきていた。
「セルキ、今回は俺に任せてくれねえか?これは、俺とメリウラの問題だからな。」とアビスが言うと、「…わーった。…気をつけろよ。」とセルキは言った。「…さーて、鈍ってねえといいけどな。」とアビスは言って飛び出してきた『ゴットロック』に向かって『黒炎邪剣』を構えた。
『ゴッドロック』がアビスに向かって転がるが、アビスは正面から受け止め、メリウラへと受け流した。すると、『ゴッドロック』はメリウラの周りを回りアビスへと転がってきた。「くそっ!やっぱり壊さねえとなのか!」とアビスが言うと、「無理よ、アビス・ホーパー!これには強い神聖力を付けてるのよ!真逆の性質を持っているあなたには壊すことは出来ないわ!あなたがその計画を諦めるまでそれを止めないわよ!」とメリウラは言った。
「おいやべえぞアビス!あいつらがここの前まで来ちまってる!」とセルキが言うと、「何だと!?ここには逃げ場はねえし…間に合わねえ!」とアビスは言った。「さっきから何を言ってるのかしら?時間でもないのかしら?なら速く諦めて!」とメリウラが言うと、「セルキ?その女性は誰なんだ?」と後ろの方からまだ会うべきではないゴーキンの声がした。
「…まだなんだがな。希望神。」とアビスは言った。「何よあんた、私と彼の話し合いを邪魔しないでちょうだいよ!」とメリウラはゴーキンに向かって『ゴッドロック』を突撃させた。「っ!ゴーキン!その岩を壊すんだ!」と希望神ゴーキン・ホーパーがゴーキンに言うと、「わ、分かった!『黄牙拳法奥義!金剛力神相殺弾』!」とゴーキンは向かってきた『ゴッドロック』に打つと、『ゴッドロック』はビキビキと音を立てながらヒビが全体にまわり、そこに最後のトドメと言わんばかりにアビスが蹴りをかまして『ゴッドロック』は砕け散り中から核が出てきた。そして、その核をアビスはぶった斬り、『ゴッドロック』は消えていった。その様子をホーパーはゴーキンの中から黙ってみていた。
そしてホーパーは「ゴーキン君、少し体を貸してもらってもいいですか?少し、話があるんです彼女と。」と言うと、「え、でも、セルキが」とゴーキンが言うと、「お願いします。」とホーパーが言うので、ゴーキンは渋々ホーパーに体を貸した。
そして小声でホーパーは「…行きなさい。戦うのはまだ後です。」とアビスに言うと、「…済まねえな、弟。」と言い、アビスは外へと向かっていった。「…さて、部下から勝手に追い出されて私に何の相談もなしに出ていきこんなところに閉じこもり挙げ句には兄さんの覚悟を踏みにじろうとした君には罰を与えないとですね…」とホーパーはメリウラを方を優しそうな眼で睨むとメリウラはその瞳の奥の恐ろしさを感じたのか恐怖していた。
一方で、外に出たアビスは外で待っている剣道、大川、魔導と会った。「セルキくん、ゴーキンくんは?」と剣道が聞くと、「あいつならまだ中だ。心配なら見に行きゃいいだろ?」といつの間にか入れ替わったセルキが答えると、「…いや、ゴーキン君なら大丈夫でしょう。それよりも、あなたを行かせないようにすることが優先です。」と剣道が言うと、「わりぃが、てめえらとやり合う気はねえ。」とセルキは言って、剣道たちが追える以上の速さでセルキは切り抜けて飛び去っていった。
「セルキ君!」と大川が言うと、「くっ…悔しいですが、ゴーキン君を待たないと…」と剣道が言うと、中からゴーキンが出てきた。その顔は複雑な顔をしている。
「…ゴーキンさん、中でなにかあったんですか?」と魔導が聞くと、「…いや、何もなかったよ。」とゴーキンは顔を戻して答えた。そして、「大川、あいつはどこに向かったんだ?」とゴーキンが言うと、「え、ええと…西だよ。」と大川が言うと、ゴーキンたちは向かった。
「…セルキ。」とゴーキンは中でメリウラとホーパーの会話が気になっていた。「あ、あなたは…その気配と力は…まさか、希望神様!?」とメリウラが言うと、「…そうだよ、メリウラ。ずいぶん久しぶりじゃないですか。」とホーパーが言うと、「あ、あなた様は、彼がしようとしていることがおわかりなのでしょう?なぜ止めようとしないのですか!」とメリウラが言うと、「そうだ。全部知ってるし兄さんが最終的にどうするかも察しが付いている。君も『未来眼』で分かってるはずだ。」とホーパーが言うと、「でしたら、どうして!」とメリウラが言うと、「これが兄さんが依代にしてるセルキ君の力を制御できずに暴走してしまったことに対しての償いであると同時に、兄さんの覚悟だからだ。」とホーパーは答えた。
「…なんですかそれ。あんな男の償いのためにアビちゃんは再び死ななければならないのですか!あんな男に!」とメリウラが言うと、「もう止めることは出来ないんだ。君も分かっているはずだ。君がどう訴えても君が『未来眼』で見た未来は変わらないことに。今だってもう片目で見ているのだろう?変えたくても変わることのなかった未来を。」とホーパーが言うと、メリウラは涙を流して膝をついた。
「私は彼を死なせたくなかった!もう二度と!なのに…それなのに!彼もあなたも私の願いを真っ向から否定するのですね!」とメリウラが言うと、「否定してはいない。未来を変えようと努力することは素晴らしいことだ。だが、未来が分かっていてもその人の覚悟が強すぎると、変えられない未来もあるんだ。兄さんと彼にはそれだけの覚悟があるということだ。…僕ももう受け入れてしまっている。たとえそれが兄さんを失うことになっても。」とホーパーが言うと、メリウラは泣き崩れそれ以上何も喋ることはなかった。
そして、ホーパーが外へと向かう途中に「…希望の神よ。あなたは本当に希望の神なのですか?…セルキを戻せる希望はもうないのですか?」とゴーキンが聞くと、「…あるのはあるんだ。」とホーパーは答えた。「本当ですか!?教えてください!」とゴーキンが必死になると、「それは…彼と戦って勝つ。それしか彼が戻せる、ひいては生きれる方法です。」とホーパーが言うと、「そ、そんな…俺達がセルキと…」とゴーキンは落胆していた。「…すまない。辛いと思うが、これしかない。」とホーパーが言っても、ゴーキンは何も言わなかった。
「セルキと戦って勝つ…その覚悟を…決めないとなのか…でも、あいつとは、戦いたくないんだ。」とゴーキンは苦い顔をして言った。一方で、「危なかったな、まじで。けど…剣道からちょっちくらっちまったがな。」とセルキは右手に受けた剣道の切り傷を見て言ったあと、「で、次はどこなんだ?」と聞くもアビスは反応しない。「おい、アビス?次はどこなんだ?」とセルキが大きい声で言うと、「あ、ああ!わりぃな。次は鹿児島だ。」とアビスは言ったあと、「…じゃあな、メリウラ。会えたら会おう、冥界で。」と悲しみの顔でそう言った。




