EP52:長野県の物型霊
北東へと進み、セルキは長野県へとたどり着いた。「で、今回はどっちだ?待つ方か、向かう方か。」とセルキが聞くと、「今回は…待つ方だな。」とアビスは答えた。
「待つ方はよ、大抵食い物系だからな…長野で食い物って言えば…あれか?」とセルキが言うと、「そうさなぁ…まあ、多種多様な味があるあれだな。」とアビスは言った。
そういった話をした少しあとに、それはやってきた。姿は丸っこく、白かった。それが何個も何個もセルキに向かっていっていた。「ああ…やっぱ、長野つったらこれだよな。『おやき』。」とセルキが言うと、「だよな。長野で食い物つったらまずこれが思いつくよな。」とアビスは言った。「で、こいつにも例の外国人霊がつけた名前あんだろ?」とセルキが聞くと、「ああ。名前は…『オーヤッキ』だ。」とアビスは答えた。
「『オーヤッキ』…?これさ、味に感動してしまって大騒ぎになったときに出てきた言葉がそうなったんじゃねえのかって思っちまうかのような名前だな…」とセルキが言うと、「そう言ってやんな。あいつらは日本に越してきたあと、十分に満喫して冥世に来たんだ。冥世に来たあと、全国旅行してさ、そんときにつけていっていたんだ。」とアビスは言った。
「どんな外国人だよ…」とセルキが呆れると、『オーヤッキ』がセルキの周りを取り囲んでおり、その中のひとりがセルキを小突いていた。ただ、小突くだけなのでセルキにはあまりダメージがなかった。
「なんだ、こいつら?襲うことしねえで俺の周りに集まっちまって。今までの奴らなら、ここまで来たときってよお、襲ってきてたよな?」とセルキが聞くと、「俺にもさっぱりだ。ここまで近づいてきて何もせずに小突くだけのやつなんざ。」とアビスは言った。「だよな…でも、数が数だからな。悪いが、これも俺たちのためだ。許せよ。」とセルキは周りに集まってきた『オーヤッキ』をなるべく苦しまないように一撃で葬っていった。
セルキが半分ほど片付けたときになると、残りの『オーヤッキ』は少し離れたところにいた。「まあ、こんだけ目の前で同種がやられちゃ離れるわな。」とセルキが呑気に言っていると、「気ぃつけろよセルキ。なぁんかやな予感がしちまったからな。」とアビスは言った。はぁ?とセルキが『オーヤッキ』の方を振り向くと、『オーヤッキ』たちは自分の体の一部をちぎり始めた。
「な、何が始まんだ?」とセルキが戸惑っていると、一つの『オーヤッキ』のちぎれた部分を補うかのように他の『オーヤッキ』たちが繋がっていき、やがて大きな一つの『オーヤッキ』になった。
そして次の瞬間、巨大『オーヤッキ』の真ん中あたりが開き、中の具材が見えると、その具材たちを一気にセルキに向かって放出してきた。セルキはなんとか避けるが、具材は一瞬で巨大『オーヤッキ』のところへ戻っており、放出されたところをセルキが見ると、地面が溶けグツグツと煮立っていた。
「おいおいまっじかよ…こりゃくらったら、再生できなさそうだな。くらわねえようになんとか近づいて殺るしかねえか。」とセルキは言うと、怒り心頭の『オーヤッキ』へと向かっていった。『オーヤッキ』もまた近づいてきたセルキに向かって何度も何度も中の具材たちをじゃんじゃん飛ばしては戻す行為を繰り返した。
セルキはこれを全てかわし、『オーヤッキ』が見失うまで縦横無尽に駆け回った。ただ、『オーヤッキ』の目や耳といったパーツは至るところにあるようにどれだけセルキが駆け回ろうと見逃さず打ってきた。セルキは一瞬立ち止まり、『聖舞:光明獄園』を放ち、『オーヤッキ』の体に穴を開けた。すると、『オーヤッキ』は開けられた方向へと具材を打ち始めた。
これを見たセルキは、「…これ、使えそうだけどよぉ。結構速く動かねえといけねえよなぁアビス。」と言うと、「そうだな…まあ、おめえならぶっ倒れねえだろうからやってみろよセルキ。」とセルキの思いつきがわかっているかのように言ってきた。
「…だったら、やってやるぜ!『オーヤッキ』!」とセルキが言うと、セルキは一気に速度を上げた。そして、『オーヤッキ』はそれに追いつけずに無造作に辺り一面にドバドバと具材を出したかと思うと、具材が繋がり円を描いてだんだんと上へ上へと登りいつの間にか、『オーヤッキ』を取り囲み繭のような形状へと変化した。
それでも、セルキはお構いなしに『聖舞:光明獄園』を放った。すると、『オーヤッキ』を取り囲んでいた具材たちは打たれた方向へと一気に放出され、さっきまでとは違い広大な範囲を溶かしていた。その間にセルキは、反対側へと回っており、『邪舞:黒炎邪剣』を構え、一気にとどめを刺そうとしていた。
だが、『オーヤッキ』の中が開き、中にあったほんの少量の具材を『オーヤッキ』は飛ばしてきた。セルキは、なんとか既のところでかわし切り、『オーヤッキ』から距離を取った。
「畜生…ほんのちょっとだけ中に残してやがったか。だったら、さらに速く斬ってやる!」とセルキは言い、先ほどと同じ方法を取った。『オーヤッキ』はまた同じことだと感じながら油断していた。そしてセルキはまた同じように…ではなく、『聖舞:光明獄園』を放ったあと、反対側に回り高く飛んだ。『オーヤッキ』は空中にいるセルキを撃ち落とすために中にあった少量の具材を空中にいるセルキへ発射した。
これに対しセルキはニヤリと笑みを浮かべ、真下へ降り『邪舞:黒炎邪剣』を持ち一気に間合いを詰め、上へと振りかぶり「やっとてめえを倒せるぜ『オーヤッキ』…じゃあな!」と振りかぶり『仏断斬流』で真っ二つに斬ったあと、中にあった核を『極舞:百手怨弾撃』でガッチリと掴み引きずり出したあと、『乱舞:鬼殺し』でバラバラにして『オーヤッキ』は消えていった。
セルキは終わったあとすぐに飛び去った。その時、「あ。」とアビスは声を漏らした。それに対し「なんだよ、アビス。」とセルキが聞くと、「そういや、『オーヤッキ』のことで今思い出したんだけどよ…その、あいつら食べられることに喜びを覚えているっていう…」とアビスは言った。
「…は?ってことは、そもそも戦わずに食えばよかったってことかよ?」とセルキが聞くと「あ、ああ。」と少し焦りながら答えた。「んだとてめえ!なんで今思い出すんだよ!もう全部終わっちまったあとじゃねえかよ!」とセルキが叫ぶと「わ、悪かったって!でもまあ、倒せたんだからよかったじゃねえか!」とアビスが言うと、「あんたがはやく思い出しゃ食うだけで終わったんだろ。」とセルキは言った。
少ししたあとゴーキンたちもたどり着いた。いつものように大川が風を聞き分け、「西に向かったよ!」と言ってゴーキンたちは西へと向かっていった。
「で、次はどこなんだ?」とセルキが言うと、「次は…岐阜だな。」とアビスは言った。
オーヤッキの特性:目の前で食べても何もしてこず、むしろ食べられるために近くによってくる。食べる以外で仲間がいなくなると怒り、重なり巨大化して襲いかかってくる。




