EP43:脱獄
「ハッ!」とセルキは目が覚めた。セルキはあたりを見渡すと、ここは何もない閉鎖空間だった。ここにはセルキ以外誰もおらず、セルキ一人だけが中央にガラスで仕切られた檻の中にいた。
「ここはどこなんだ?あれからどれくらい経った?一体、何があったんだ…」そんな独り言を呟いていると、そこに見覚えのある姿があった。
「ご、ゴーキン!剣道に大川、それに魔導!なあ、こっから出してくれ!俺はなんでこんなところにいるんだよ!」と問いただした。
「一つずつ答えていくよ、セルキ。まず、君はレイ・グランティナスを倒したあと暴走をしたんだ。それを俺が食い止めて拘束した。そして君は、3ヶ月間もの間その中で眠っていたんだよ。」とゴーキンは答えた。
「暴走って…ゆ、雪は!?雪は大丈夫だったのか!?」とセルキが聞くと、
「心配するな、花咲雪は生きている。ちゃんと現世に帰したよ」と剣道が答えた。
「なら良かったが…なら、はやくこっから出してくれよ。暴走は止まったんだろ?だったら…」「残念だけど、セルキ君。それはできないんだ。」と大川が遮って言った。
「君の暴走の原因がわかっていない中でまた暴走されても困るんだよ。それに、この判断は委員会の判断だ。僕たちではどうすることもできないんだよ」と魔導が言った。
「暴走の原因は自覚がある!ちゃんと制御するから、頼む!」とセルキは言うが、誰も首を縦に振ることはなかった。
「セルキ、学校やニュースで知っているはずだ。下にいるものは上には基本逆らえないことを。」と剣道が言うと、セルキは黙りこくってしまった。
「じゃあ、しばらく大人しくしていれくれ。」とゴーキンが言って、四人は去った。セルキはその後監視されていないことが分かると、アビス・ホーパーと話をし始めた。
「なあ、絶望神。この暴走は俺があんたの力に耐えられなかったのが原因なんだよな?」とセルキが聞くと「ああ、あんときは一か八かだったからな。まあ、しょうがねえとは思うが…」とアビスは答えた。「…なあ、急で悪ぃけどよ、よく聞くことなんだが、『歴史は繰り返しの連続』って言葉。これって、今の俺の状況だよな?」とセルキが聞くと、アビスは黙った。そして、「なんで、おめえがそれを?」と聞くと、「歴史書の一つにあったんだよ。『絶望神と希望神』って名前の歴史書がな。」とセルキは言うと、アビスはピクッとなった。
「最後の一部分に書いてあったことを思い出した。それに書かれていた状況は、今の俺と似ているところがある。まじで歴史は繰り返しの連続だな。その言葉は今の俺の状況にあっている。」とセルキが言うと、アビスは、「じゃあ、おめえは自分が死んででももとに戻したいって言うのかよ!おめえは、あいつと…」「それでも、このまま戻れるわけねえだろうが!悪ぃが、これしかねえんだよ。」とアビスの言葉を遮りセルキは覚悟を決めた声でそういった。その言葉にアビスは何も言い返さず、しかめっ面をした。「とりあえず、こっから出ねえとなぁ…」とセルキはタックルをしたりするが、びくともしない。セルキはここから出る方法を模索した。
セルキは今までの自分の技を次々に使っていった。『乱舞:鬼殺し』を使っても刃が少し欠け、『禁舞:怨念呪殺』と『聖舞:光明獄園』と『絶舞:絶望と混沌に染められし棺』は使う前に(無機物相手にこれは無理だな…)と思い諦め、『極舞:百手怨弾撃』は出し切る前に突っかかって意味がなかった。セルキは残った『邪舞:黒炎邪剣ー末多無死ー』を使うと、少しだけひびが入った。だが、いつまでもちまちまと『末多無死』を使うわけにはいかないので、セルキは一刀両断できる技の模索へと転換していった。
一方で、ゴーキンたちは寮にいた。セルキが開放されることをじっと待っていた。剣道は精神統一をし、大川と魔導はうつむいていた。ゴーキンは一人特訓をしていた。
「今、この状況でする必要があるの?レイは消えて、暴走したセルキも今は監獄の中なのに。」とゴーキン・ホーパーが言うと、
「する必要はある。なんだか嫌な予感がしてくるんだよ。」とゴーキンは返し、「それに…あの暴走のこと君はなにか知っているんだろ?」と突然聞いてきたので、「な、何も知らないよ。」とオドオドしながら答えてしまったので、「やっぱり、何か知っているんだね?その動揺の仕方は。」と言われたので、ホーパーは諦めて「…そうだね。あの暴走は僕の兄さんが原因なんだ。僕が希望神と言われているように、僕の兄さんで絶望神のアビス・ホーパーが彼の身に宿されているんだ。」と答えた。
「ねえ、希望神。その暴走はやっぱり前みたいに俺が止めないといけないの?」とゴーキンが聞くと、「そうだね…でも、それは一時的にしか働かないんだ。」と言うと「じゃあ、どうすれば止まるの?」とゴーキンが聞くと、「今言っても君には早いんだ。もう少し時間が経ってから言うね。それでも知りたいんなら、ヒントを言うよ。『歴史は繰り返す』だ。」と言った。その言葉にゴーキンは(『歴史は繰り返す?』)となっていた。
ゴーキンが特訓を忘れて考えていると、セルキがいる方向から突然として轟音が鳴り響いた。剣道たちも寮から出てきてセルキのところへと向かった。向かってみると、セルキを閉じ込めていたガラス張りの閉鎖空間は斜めに真っ二つになっていて、そこにいたのは手が少し黒くなっていた。セルキがゴーキンたちの方を見た瞬間に剣道は戦闘態勢に入った。たとえ仲間とはいえ、彼は現世で言えば脱獄犯のようなもの。そうなってしまうのも不思議ではないのだろう。
「どうやって出てきた?あれは委員長曰く、君の力では壊せないって言っていたが…」と剣道が言うと、「それは、『今の』じゃなくて、『今までの』じゃねえのか?俺は『末多無死』で少しヒビが入ったことに気づいてよ。そこから一気に集中して一刀両断できる技を使えるようになったんだよ。」とセルキは答えた。
その言葉に剣道は目を見開いた。自分ですらできなかったことをセルキがやってのけたことの驚きと、そして何より得体の知らない力が再び暴走してしまうのかもしれないという恐怖があった。
「…まあそんな顔になるわな。剣道と魔導、てめえらの反応は正解かもな。逆に脱獄犯と同じような立ち位置にあるやつが目の前にいるのに平常なゴーキンと嬉しそうにする大川のほうがやべえわ。」と言った。
「君は、今すぐ斬られたいのか?」と剣道が険しい顔で言うと「今すぐ斬られるのはごめんだな。俺にはいまやりてえ事があるからな。とりあえず、こっから外に出るしかねえけどな。」とセルキは言った。
「不可能だろ?出口はここしかない。俺たちを突破しないと無理だ。」と剣道が言うと、「誰が出口はそこ一つだって言ったんだ?ねえんなら、壁をぶち壊すだけだろ。」と言ってセルキは『邪舞:黒炎邪剣』を出した。
(何をする気だ?)とゴーキンと剣道が思っていると、『黒炎邪剣』の闇が剣全体ではなくて刃のところだけに一点集中され濃くなった闇の力が重なり禍々しい色へと変化した。そして「これが俺の『末多無死』とは違う『黒炎邪剣』のもう一つの形態技!『仏…断…斬流!』」とセルキが叫びながら『黒炎邪剣』を振り下ろすと先程と同じ轟音を鳴らしながら閉鎖空間の壁の一部を今度は跡形もなく消し飛ばした。
「じゃあな、俺はこっから出っからな。」と言ってセルキは脱出し飛んでいった。魔導は「どうする?セルキはもう行ってしまった。ゴーキン、君が決めてくれ。僕たちの副リーダー。」と言うと、「当然、追いかけてセルキを止める!」とゴーキンは言った。そして、ゴーキンと剣道は飛びながら、大川と魔導は魔導の『天地回帰』に乗ってセルキを追いかけた。
「なあ、まずはどこに行きゃあいいんだよ?」とセルキがアビスに聞くと、「…まずは埼玉県だ。あそこの物型霊から倒しに行くぞ。」とアビスは言った。
「物型霊って何なんだ?」とセルキが聞くと、「物型霊は、その都道府県の名産品が理由なく冥世にいるやつらのことだ。まじでどういった理由でここにいるのか分からねえんだよなぁ。」とアビスは答えた。
「じゃあ、なんで東京にはいねえんだ?」とセルキが聞くと、「東京の物型霊は東京タワーだったんだが、如何せん東京は人型霊が多くなっちなってな。物型霊が萎えちまったんだよ。一度萎えた物型霊はもう動かねえ。だから、レイ・グランティナスがいなくなった今も動いてねえんだよ。」と答えた。
(なんかややこしいことになったが、とりあえずこれで時間稼ぎはできそうだな。…この方法しか落とし前はつけれねえんだよなぁ。…頑張ろ。)とセルキは思いながら埼玉県へと飛んでいった。
仏断斬流 闇の力からできた黒炎邪剣の闇を刃のところに集中させることで生まれた禍々しい闇を対象へと一気に振りかぶることで対象の内部構造を壊し、破壊する。人が対象の場合は、細胞一つ一つが壊れてしまう。




