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AK  作者: 回収人の部屋
序章
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EP1:AKの誕生

「ここがあの世か…」セルキは今までなんでも無いはずだった千代田区の景色が、まるで違う世界の千代田区の景色のように見えてしまった。現世よりは荒廃しておりビルがあった場所はほとんど更地になっている。その周りには幽霊が多く彷徨っていて、この数に襲われたらひとたまりもないと辿り着いた五人は思っただろう。「行こう。向こうに建物が見えるあれが例の死神委員会本部だろう。」と剣道は唯一綺麗に残っている建物を指した。幸い、まだ着いたばかりなのか、まだ死神ではないからなのか襲われずに済んだ。

辿り着くと見た感じは市民会館のようだった。

中に入ると、ホールのような空洞になっていて、高いところの席から五人の死神と思われる者たちがいた。「君達が新しく死神になる者たちだね?」と真ん中の一番高い席にいる男が聞いてきた。恐らく委員長だろう。「そうです」とゴーキンがすぐさまそう言った。きっとセルキが言うと喧嘩腰になってしまうからであろう。「そうか。ようこそ死神委員会へ。私は委員長の福田裕介だ。君達から見て左隣にいるのが副委員長の中田徹。右隣が書紀・報告のアルバン・ミリタルス。左端が参謀の神田蓮子。そして右端が武器制作のネフェリ・カーラだ。」と委員長の福田裕介は言った。五人は会釈をした。

福田は「次に君達についてだ。」と手元にあった五つの資料を読み上げた。「君がセルキ・マッカントリー。年は17で7歳の時に両親と姉を失い叔父に預けられたが、叔父と従兄弟が家族を殺した犯人だとわかり、通報して死刑にして従兄弟は鎌で殺したが、その殺しは警察には仕方のないことだと言われて自分で責めた」セルキは「…そうだ」と言った。「で、君がゴーキン。年は17で空手家の長男。8歳の時に力が強すぎるあまりに弟とスパーリングしたときに弟が亡くなってしまった」ゴーキンは歯を食いしばり黙り込んだ。「君が剣道。年は17で武家一族の次男。5歳の時に妖刀を見つけ力がついたが、兄に妬まれ兄は自殺。そのあとの遺書で古次郎の妖刀にやられたと書かれており家を追いやられてしまい、孤児院で生活」剣道は「俺は一度兄者と手合わせしたかったんだ。」と悔しそうに言った。「君が大川。年は16で太鼓演奏をしている一家の一人息子。4歳の時に尊敬していた父に罵倒され家出をしてそのまま孤児院で生活」大川は「思い出させないで!」と泣きながら強く言った。「君が魔導。年は17で魔術を扱う一家の末裔。6歳の時に全ての魔力を扱えたが、そのせいで暴走し家は崩壊し家族は死亡。そして孤児院で生活」魔導は「それは僕の責任だと親戚に言っても『仕方のないことだ』と言われてしまった」と拳を握りしめて言った。彼等は思い出したくない、忘れたい過去を言われてしまった。たとえそれが仕方の無いことだとしても彼等にとってはとても責任を感じる罪深いことなのだから。「君たちが知り合ったのは中学生になって同じクラスになってすぐ気が合い、『大切なもののために』を信条にして『極裁』と名乗り活動していた…と」と福田は言った。

福田が言うには過去に強く恨むような理由があるような状態で死んでしまい、恨みが晴らせないまま幽霊になり恨みが重すぎて幽霊の姿に収まりきらずに形が保てない霊に力を与え恨みを晴らそうとする幽霊軍団『零』に目をつけられ、『人型霊』となってトップであるレイ・グランティナスの目的のために尽くす代わりに恨みを晴らしに来るのだという。そのような人型霊を倒せるのはその恨みの対象のみだというのだ。そして、亡霊や人型霊、死神には『核』と呼ばれる心臓のようなものがあり、亡霊は身体の何処かに、人型霊や死神は人間の心臓と同じところにありこれが破壊されることで浄化される。それは死神も同じだと。それを聞いた五人は怯えていた。それもそうだ。自分達が死に追いやった人たちが力を付けて自分たちに恨みを晴らそうとしてくるのに、それを自分たちで倒さないといけないのだという。さらに自分たちも同じ様になり守るべき者たちを守れなくなってしまう。が、自分たちはそれだけのことをしたのだから仕方がないと覚悟を決めた五人は「分かりました」と声を揃えて言った。

福田は「君達の覚悟はわかった。では次に君達のチームの名前を決めてもらおう。」「チーム名ですか…」と五人は悩んだ。今まで通り『極裁』でいくのか?いや、ここには守るものは無い。だとしたらどういう名前がいいのか?彼等はそれぞれ思いついたものを出し合っていた短くても意味がありそうな名前を。20分位経った時にセルキがある名前を提案した。皆はなぜだろうと思ったがきっと何か意味があるのだろうと納得した。やはりまだまだ子供っぽいところはあるみたいだ。「決まったのか?」と福田が聞くとセルキは「AKです」と言った。「AKか」と福田は言い「あいつらと似ているな」と小さな声で言った。こうして彼等は『AK』として正式に死神となった。「では初任務は明日からなので今日は共通寮で休んでください。今から場所を言います」と中田が指示を出す。説明を聞き、AKは寮へと向かった。

出ていくのを見送ると福田は「どう思う?」と聞いた。「少し怖い気配をセルキとゴーキンから感じました。」と神田が言うと「そうか。そのどちらかには時が来たらあのことを話すか」と福田は言う。「武器の方は任せるよ。ネフェリ」と福田は言い「わかった」とネフェリは答えどこかに向かった。「アルバン。何か見えたか?」と福田は聞き、「彼等がレイを倒す未来が見えた。だが、あの世と現世が繋がってしまう未来のほうが先に見えた。」と答える。「まずいな、レイが本格的に動き始める。近いうちに『零』と対峙することになってしまうぞ…」と福田は剣幕な顔で言った。

セルキ達AKは寮に入った。そこは旅館の大きい部屋のようなところで布団と風呂まで付いていた。

「いよいよ明日からだな初任務。ワクワクしてしまうんだよなぁ刑だと分かっていても」とセルキはうずうずしたような表情を見せた。「良かった。これが刑罰だということは自覚してたんだな」と安堵する剣道を見て「分かってるわ!」とセルキが大声で言った。「おいらたちにできるかな。今になって怖くなってきたよ」と震える大川。「今までと一緒だ。向こうで帰りを待っている人達がいるんだ。頑張ろう」と気合を入れるゴーキン。「僕は風呂に入ってくる」と魔導は風呂場へ向かった。すると剣道が「ねえ、今更だけどなんで『AK』なんだ?」と聞くと、「アンデッドキラーの略だよ」とセルキは得意げに言った。が、ゴーキンが「…なあアンデッドって頭文字Uじゃない?」と言い、英語で『Undead Killer』と書くと、「…マジ?」とセルキは顔を赤らめる。「お前、勉強できねぇって言ってたけどそんなになのかよ」とゴーキンは笑った。続いて剣道、大川も笑った。セルキはとても恥ずかしそうに「うるせぇな」と言って笑った。

大川は「でも、片仮名表記だったら大丈夫なんじゃ?」と提案すると、セルキが「あ、ああ!そ、そうなんだよ!アハハハ」と苦笑いして言った。その声は魔導にも届いていてーまだ入らなければよかったなぁと魔導は少し後悔をしていた。明日から死神としての仕事が始まる。皆これが刑罰だということは分かってはいるものの、少しだけアクションゲームが始まるかのような気持ちになっていて、申し訳無さとワクワク感が入り混じったような感情になったまま一夜を過ごし明日に備えた。

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