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そしてベアトリスは熱が下がってから初めてマーヴィンと会うことになった。


ベアトリスは今日、決着を付けるつもりで公爵家へ向かっていた。

何度もマーヴィンと話し合いをするつもりはない。

お互いの同意が得られれば、それで良い。


ベアトリスは不機嫌そうなマーヴィンに嫌々エスコートされながら席に着いた。


『マーヴィン様、今日はわたくしの為にありがとうございます』

『マーヴィン様、今日もとても素敵ですわ』

『マーヴィン様に会える日をとても楽しみにしていました!』


ベアトリスはマーヴィンと会えば、腕を絡めて擦り寄りながら愛を伝えるのだが、今回は何もせずにベアトリスは席に着いたのだ。


いつものようにベアトリスがマーヴィンを褒め称える言葉が無いことに違和感を感じているのか、警戒心を滲ませながらベアトリスを睨みつけている。


大体、今日みたいに公爵家で顔を合わせる日は、ベアトリスが一方的にマーヴィンに話しかけていた。

結婚式のドレスの色や誰を招待しようかなどと、2人の明るい未来の事をずっと‥。

それをマーヴィンがウンザリしながら聞いているというのがお決まりのパターンだった。


セレクト公爵家の立派すぎる中庭。

ベアトリスが気に入ったからと用意された椅子やテーブル。


(これもセレクト公爵がベアトリスの機嫌を損ねない為に用意したものなのよね)


セレクト公爵はベアトリスを大切に扱っている。

何故ならベアトリスは金の成る木だからだ。


セレクト公爵家は古くからある家だが、事業に失敗したのとセレクト公爵の女遊びのせいで資金が底を尽きそうになっている。

マーヴィンはそんな父親と無関心な母親にウンザリしながらも現実から目を背ける為に、自らも女遊びで傷を慰めているのだ。


(‥‥可哀想な人、なんて言うと思ったら大間違いよ)


ベアトリスがセレクト公爵に嫁ぐ事で、多額の支度金が約束されている。


ベアトリスはマーヴィンが何をしても結婚する為に黙っているしかなかった。

マーヴィンはその意図を理解した上で、マーヴィンを愛し続けるベアトリスの気持ちを利用して好き放題している。


ベアトリスを思いきり拒否して嫌っているくせに、何もかも得ようとしている。



(‥‥欲張りな男、こっちだって容赦はないわ)



「この間は、お見舞いに来て下さりありがとうございました」


「‥‥」


「お兄様が無理を申し上げたようで申し訳ございません」


「‥っ!?」



第一声から、まともに話し出したベアトリスを唖然としながら見ているマーヴィン。



「今回は、ある確認をしに参りましたの」


「なんだ突然‥‥気持ち悪い」



これだけマーヴィンに嫌われて暴言を吐かれていたにも関わらず、マーヴィンを好きでいたベアトリスを尊敬してしまう。

普通ならば愛する人にここまで言われてしまえば耐えられないだろう。

それだけマーヴィンからの愛が欲しかったのだろうが、それではベアトリスは幸せにはなれない。


マーヴィンに「婚約破棄してくれ」と言われるたびに、この世の終わりかの如く泣き叫んでいたベアトリス。

ベアトリスが嫌がるとマーヴィンは決まってこう言うのだ。

「だったら俺に指図をするな」と。

ベアトリスはマーヴィンに言われて泣く泣く我慢するしかなかった。


今までマーヴィンに何をされても、ベアトリスは結婚する為にはと許していた。

だからマーヴィンもベアトリスに容赦がなかった。



(けれど、そんな日ももう終わりよ‥!)



ベアトリスは紅茶を一口飲んでから静かに口を開いた。



「マーヴィン様はわたくしを"嫌い"だと仰っていましたでしょう?」


「‥‥あぁ」


「その気持ちに間違いはないですわよね?」


「‥‥はぁ?勿論だ!聞くまでもないだろう?」


「‥‥」


「そもそも、お前がいつも婚約破棄したくない、俺と離れたくないと煩く‥‥!」


「では、わたくしとの婚約を継続したいですか?」


「お前など死ぬほど嫌いだ‥今すぐ婚約破棄したい」



言質は取った。


ベアトリスはニッコリと満面の笑みを浮かべた。






「なら、お望み通り今すぐに婚約破棄致しましょう?」






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