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「お父様、大切なお話があります」




ベアトリスとブランドのただならぬ雰囲気を感じとったシセーラ侯爵は、直様話し合いの場を設けた。

ベアトリスの母であるヨルテも合流して、家族会議は始まったのだ。



「マーヴィン様と婚約破棄したいのです」



ベアトリスがそう言うと、シセーラ侯爵は目を見開いて、ベアトリスの目の前で手を振りながら正気かどうかを確認していた。

ヨルテに至っては石像のように固まって動かなくなってしまった。

ブランドも先程から何度もベアトリスの額に手を当てて熱を測っている。


確かにあれだけマーヴィン至上主義だったベアトリスが、いきなりマーヴィンを拒否したら正気を疑うのも無理はない。


急すぎる心変わりに驚くのは当然である。


そして毎日毎日、マーヴィン様マーヴィン様と病気のように言っていたベアトリスが、急に「婚約破棄したい」と言い出すのはおかしい、という結論に至ったのだ。



「一体、何があったの?」


「気の迷いじゃないのか‥?」



シセーラ侯爵の言葉に何度も頷くヨルテ。

しかしベアトリスは、それをキッパリと否定した。



「いいえ、違います」


「‥‥ベアトリス」



マーヴィンへの重過ぎる恋心が無くなったベアトリスにとって、マーヴィンは枷であり邪魔者なのである。


そしてベアトリスはゆっくりと口を開いた。


もう"婚約破棄"に怯えて、マーヴィンの愚行を隠す必要は無い。

少しでも納得してもらう為に、両親に全て曝け出してしまえばいい。


マーヴィンはベアトリスが居ながらも、周囲に隠れて不貞行為を繰り返している事。

マーヴィンに好きになってもらいたい、振り向かせたいと思うが故に行った行為が間違っていた事。

そしてマーヴィンと結婚したとしても絶対に幸せになれないと気付いてしまった事。


高熱を出した後によく考えて、目を覚ます事が出来たのだと懸命に訴えた。


そしてベアトリスの今後の未来を含めて話し合った結果、どうにか「婚約破棄したい」という気持ちを理解してもらえたのだ。

ベアトリスは両親に感謝した。

家同士の利益の為にする結婚‥貴族の娘達の我儘や意思が尊重される場合は殆ど無いからだ。



「分かった。ベアトリスを信じよう」


「貴女が幸せになる為だもの!どんな形でも応援するわ」


「‥‥っ、我儘ばかり言って申し訳ありません」



ベアトリスはシセーラ侯爵とヨルテに頭を下げた。

必死にマーヴィンと婚約を結んでくれた両親を裏切るような形になってしまったからだ。


けれど、このまま王女ハンナの攻略が進んでいけば手遅れになってしまうかもしれない。

ベアトリスが逃げようとしても断罪から逃れられない事だけは避けたかった。


(先手必勝‥!!まだまだチャンスはあるわ)



「いいのよ、ベアトリス。私達も‥噂は聞いた事があったから少し不安だったの」


「でもまさか噂が本当だったなんてな‥‥セレクト公爵は何をしているんだ」


「‥‥セレクト公爵も沢山愛人を囲っていて、お金もその女性達に消えていると聞いた事があるわ」


「親子揃ってか‥‥なるほどな」


「昔は良い方だったのに残念だわ」



そう‥マーヴィンの父であるセレクト公爵も女遊びが激しい人なのである。

公爵夫人に公爵家を任せて、娼婦に使用人、訳ありの貴族の娘など、女の噂が絶えない。

そして公爵家の金を使い込み、事業にも失敗した為に今のような状況になっているようだ。



「私達はベアトリスの幸せを心から願っている」


「ありがとうございます!お父様、お母様‥!」



そう言ったベアトリスを優しく抱きしめてくれた父と母の横で、涙を流しているブランドは乱暴に涙を拭い鼻水を啜ると、ベアトリスの手を取る。



「証拠を集めるのは俺に任せてくれ!!!」


「お兄様‥?」


「アイツに恨みを返す時が、ついに来たんだッ!ベアトリス」


「は、はい‥!」



恵まれた両親とちょっぴり過激な兄に感謝しつつ、ベアトリスは頷いた。

両親の協力も得る事が出来たベアトリスは直ぐに婚約破棄へと動き出したのだった。


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