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オブラートに包んで言うのなら寂しがりやの‥かまってちゃんである。
そしてストレートに言うのなら最低野郎である。
何故ならば女性達の気持ちを惹きつけておいて、面倒になれば冷たくしてポイッと捨ててしまうから。
色んな御令嬢との噂が絶えなかったのは、その為である。
(性格わっる!!)
普通の御令嬢ならば、マーヴィンに冷たくされて心が傷付いて自分から離れたり、泣き寝入りしそうなものだが、ベアトリスはマーヴィンに冷たくされようが邪険にされようが全くめげる事がなかったのである。
ベアトリスはベッドで寝転びながら、これから先‥ベアトリスが何をするべきかを一生懸命考えていた。
(まずは婚約破棄!兎にも角にも婚約破棄!!絶対に婚約を破棄してやるんだからッ)
マーヴィンだって、あんなにベアトリスと婚約破棄をしたがっていたのだ。
これで婚約破棄したくないとか言われたら、逆に驚きである。
しかし家が絡んでいると、どう動くかは分からない。
早く邪魔者を排除して楽しい人生を歩む為にも、不貞行為の証拠を集めまくり、ベアトリスが優位な形‥‥マーヴィン達が言い逃れできないように動かなければならない。
確実に婚約破棄をする‥‥その為には家族の協力が必要不可欠だ。
(善は急げよ‥!)
ベアトリスは勢いよくベッドから降りると、父であるシセーラ侯爵の元へと走り出した。
「お父様っ、お父様、どこですか‥!?」
「――ッベア!!?ベアトリス!?こんなところで一体何をしてるんだッ!!」
「あ、お兄様‥!」
父を探していると兄であるブランドと出会った。
ブランドはベアトリスをめちゃくちゃに溺愛している兄なのである。
ベアトリスが悪役令嬢ならばブランドは悪役令息と呼ぶべきなのだろう。
ベアトリスに頼まれたブランドは2人の邪魔をする為に暗躍するのだ。
そのやり方がベアトリス以上に‥‥えげつない。
「お兄様、丁度良かった!お父様を探しているのですが‥」
「ベアトリス‥っそんな事よりも熱が下がったのか!?何故部屋から勝手に出歩いてるんだ!また熱が上がったらどうする?まだ休んでなければダメだろうッ!?」
捲し立てるように怒鳴るブランドにベアトリスは驚いていた。
それだけベアトリスが心配なのだろう。
いつもならばブランドの言う通りに大人しく部屋に戻るところだが、今日のベアトリスはこんな所で引けないのだ。
「お兄様も一緒に探してくださいっ!」
「っ、部屋に戻り‥「お兄様、お願い‥っ!」
「くっ‥‥!」
「ブランドお兄様、お願いします!!」
「よし、分かった」
このベアトリスの「お願い」に勝てないのが、ブランドの可愛いところなのである。
そして切り替えの早さが尋常ではない。
抱えながらの移動でなければ部屋に連れ戻すと言われて、ベアトリスはブランドにお姫様抱っこをされながら長い廊下を歩いていた。
「お兄様、重たくないのですか?」
「何を言っているんだ、ベアトリス‥!お前は天使なのだから羽のように軽い」
「‥‥そう、ですか」
何を言っているんだ、をそのままお返ししてあげたいベアトリスだったが、余りにも当然の如くブランドに言われた為、何も言えなくなってしまった。
ベアトリスの体は小さくブランドが抱えるとすっぽりと収まってしまう。
ベアトリスはブランドの端正な顔をじっと見ていた。
「そんな可愛い顔で見るんじゃない。手が震えるだろう?」
「お兄様って‥」
「なんだ?」
「どうしてそんなに、わたくしの事が好きなのですか?」
ブランドはベアトリスの義理の兄であり、血は繋がっているかどうか分からない程に薄いらしい。
優秀なブランドはシセーラ侯爵に見出されて、養子として迎えられた。
そしてベアトリスと出会った瞬間から今日まで、ベアトリスを溺愛しまくっている。




