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セピア色の写真の中の物語

作者: 八重
掲載日:2020/07/18

 いつもは午後になると荒い風が出て、表のガラス戸をゆすり、騒がしく町の中を吹き抜けていくのだが、今日は風もなく、ほっかりした日差しが入り口の注連飾りに当たっている。暮の雪がまだ屋根に残っていて、ぽとりぽとり滴るので、羽織り袴の年始回りの男達や、晴れ着の娘達は家の出入に気を使う。

 初売りは二日だから、元旦はどこの店も表の大戸を卸している。近所の下駄屋でも番頭達や女中が閉めた店の前で羽子をついている。ぽん、ぽん、ぽん、鼓は大夫と才蔵の三河万歳だ。一 軒一軒、出ては入る。このあたりは大店が多い から、御祝儀もいいだろう。

 浅黄色の法被に豆絞りの手拭で頭を包んだいなせな獅子舞の二人連れ、一人は獅子頭を肩に

掛け、一人は首から吊した太鼓を叩きながら、家を回って玄関先で舞う。

「お獅子だ。お獅子だ」

 ぞろぞろついて来た子供達に、お獅子がぱく っと口を開けた。わあっと子供達は逃げ散る。 昭和初年ごろの甲府の下町の風景だ。

 市村呉服店でも店が休みなので、座敷で主人 の作造と妻のお新、隣家のお筆が炬燵に当たっ ていた。炬燵の上にはお節料理の重箱や、蜜柑を盛った菓子鉢、取り皿や徳利や猪口や茶呑茶碗が炬燵板いっぱいに置かれている。

「いいお正月だねえ。風もなくて、こんなに暖かいお正月も珍らしいよ」

少しばかり飲んだお神酒にほんのり頬を染めて、お新はまた重箱の昆布巻に箸を出す。

「さあ、お筆ちゃん、食べとくれ。折角お節が 並んでるんだから箸をお出しよ。あとで蜜柑もね。これは九州のだから甘いよ」

 羽子をつく男女のはしゃぐ声、年始回りの下 駄の音、行き交う人達の新年の挨拶、どこかで琴を弾いている。

 テレック、テレック、太鼓が近付いてきて、家の表で叩いている。

「あれ、お獅子がうちへ来たね」

 お新は立って箪笥の小抽出しを開けながら、

「宮子、宮子」

と嫁を呼んだ。障子が開いて宮子が廊下に膝を ついた。平凡な顔立ちだが色が黒い。

「何でしょうか」

「お獅子が店に来たようだから、今年も商売繁 昌するように、よく祝ってもらっとくれ」

  言いながら財布を取り出すお新に、

「さっきも万歳に御祝儀をやったのだから、五銭にしておけし。五銭も包めばおんの字だ」

 蒲鉾に箸を出しながら作造が言う。

「お父さんも固いねえ」

お新は鼻の先で笑った。

「正月早々音なことを言っちょし。五銭だなん て近所の笑いものさ。二十銭が当り前さ」

 気前好く祝儀袋に二十銭入れて宮子に渡した。 お筆の手前もあるが、さっきお筆に持ち上げら れて、浮き浮きしていたからでもある。

 お筆は七年前に後家になった。借家を持って いるから生活には困らないが、去年一人娘を嫁 がせてから気弱になり、何彼というとお新の所 へ来て愚痴を言う。

「角の渡辺さん家じゃあ、娘が婿といっしょに 暮の二十八日から来て泊まってるんだよ。それなのにうちの娘は正月になったって来やあしな い。向こうのお姑が意地が悪くて放さんのさ。

普通だったら、『女親一人だから早く実家へ行ってやれし』くらいの事は言うじゃんね。昨夕もあたい一人で除夜の鐘を聞いていたけんど、淋しいもんだよ。お新ちゃん」

 お筆は袂からちり紙を出して湊をかんだ。

「旧家だ。やれお医者さんだなんて仲人口に乗せられて後悔してるさ。安月給でいいから二人っきりの気楽の所へ嫁にやるだったよ」

 くどくど繰り返す泣き言を、お新は適当に聞き流している。お新だって昔気質の姑に五年間仕えたのだ。その位のことで愚痴を言うなと言ってやりたい。第一、旧家だ、お医者さんだと自慢そうに話したのはお筆自身ではないか。それでもお筆が涙を拭きながら話すので、突き放すのも可愛そうで、

「そりゃあ大変だねえ」

とか、

「それじゃあ娘も苦労するさね」

とか調子を合わせてやると、お筆は、

「あたいの気持ちをわかってくれるのは、お新ちゃんだけだ。嬉しいよう。有り難うよ」

「いいさ、いいさ。くよくよしてなんで、何時でもおいでんせ。話せば気が楽になるから」

 頼りにされるのは気持ちのいいものだ。落ち込んでいるお筆を慰めてやって、正月早々から善いことをしたとお新は満足だ。だからお獅子に二十銭もはずむ気になったのである。

「あの、それを下げてもいいでしょうか」

 お筆が帰ると早々に宮子が顔を出した。

「ああいいよ。御馳走さま。片附けとくれ」

 宮子は持ってきた大きな盆に、小皿や蜜柑の皮やら重箱を移す。その手首から指先まで、しもやけで紫色に腫れ上がっている。それを見る度に、

...働かせ過ぎているようで人目が悪い...とお新は思う。自分が若い時は寝る間も惜しんで働いて働きまくったのに、あんな手にはならなか った。宮子はお新の半分も働かないのに、見るからに痛々しい手をしている。

...みっともなくて、人前に出せやしない...

 それというのも動作がのろいからだ。水仕事 がすんだらすぐ手を拭けばいいのに、もたもたしているからしもやけになるのだ。幾度か注意したが素直ではない。それに不器用で見ているといらいらしてくる。だがよい姑と言われるには、ここが我慢のし所とお新は耐えている。

「宮子も正月だから実家へ行くずら」

年賀状を見ていた作造がふいと顔を上げて、宮子にともお新にともつかず言った。

「はいっ」

 小さいが弾んだ声で宮子が返事をし、

「でも、何時でもいいんです」

 すぐ言い直した。お新が横を向いているのに気付いたからだ。宮子はうつむいて炬燵の上の物を盆に移すと、黙って座敷を出て行った。

「あんた、何を言うずら」

 宮子が障子を閉めるのを待って、お新は作造に食ってかかった。炬燵板を叩いた。

「嫁が正月から実家に行きっこないじゃん。冗談じゃあないよ」

 自分の言うことは正しいと思うから、つい声が大きくなる。

甲府では正月二日が初売りだ。まだ夜中の午前二時、愛宕山にドーンと大砲が鳴ると、商店 が一斉に店を開ける。電燈を煌々とつけて、

「さあ、いらっしゃい。いらっしゃい」

 福引きだの、福袋、景品だの、客寄せの趣向をこらして景気よく初売りをする。だから、

「嫁は正月が過ぎてから実家へ行くにきまってるじゃん。馬鹿な事を言っちゃあ困るよ」

「おお、そうだったな」

 作造はさからわない。相変わらず賀状をめくっている。

「あんたは何時もこうだから」

 お新は舌打ちした。二人きりの時はお新と一 緒になって、のろまだ、気が利かない、商人の 嫁には不向きだと不足たらたら言うくせに、宮子の前では宮子の肩を持って、自分だけがいい子になろうとする。

「これじゃあ、あたいだけが悪者になっちまうじゃんか。ひどいよ」

 その時、廊下を遠ざかるかすかな足音を聞い た。宮子がまだ其処に居たのだと、お新はぎょっとした。間違ったことを言ったつもりは無いが、立ち聞きされたと思うと嫌な心地だ。お筆を慰めてやって充実した気分が、風船の空気が抜けていくようにしぼんでいった。 「宮子はすぐ気にするから嫌になっちまう」

 もう廊下には居ないと知りながら、つい声をひそめて、

「あたいは一度言っちまえば、あとはもうさっぱりして、自分でも竹を割ったようないい気性だと思っているけんど、宮子はすぐ気にするから可愛くないさ。ね、そうだよねえ」

 作造はそうだ、そうだと頷いている。

 ガチャン

 台所の方で鋭い音がした。

「あれ、又割った」

 お新は立ちかけたが、すぐ炬燵に足を入れ、

「どうしてああがさつなのかねえ。此の間だって九谷焼のいい花瓶を割っちゃってさ」

 舌打ちしながらも声が弾んた。宮子を貰う時、 世間で言う嫁いびりなど絶対にしまいと心に誓 った。それなのに宮子が何か失敗すると、困っ た、困ったと言いながらもほっとするのはなぜ だろう。

「玉江が割ったのかも知れんぞ」

 作造が言った。玉江は四年前から居る女中で、宮子より三つ年下だ。

「宮子にきまってるさ」

 お新は断言した。


「敬一があんな馬鹿な事さえしなきゃあね」

 これはもう幾度かお新の口から出た言葉だ。

 そのあと、

「そうしたらあわてて嫁を貰わなかったのに」

と続く。一日が終わって店を閉め、離れに引き上げて夫婦だけになった時、これだけの言葉で二人は共通の悔いをたしかめ合う。

 あんな馬鹿な事とは、敬一がバーの女給に誘われて東京へ家出した事だ。商業学校を優等で卒業した自慢の一人息子だったから、夫婦は仰 天し、狼狽し、何よりも世間体を恐れて、二度とこのようなことの起こらぬよう嫁を貰った。 宮子は作造が小学校の時、受け持ちだった先生の姪だ。

「洗濯をさせれば半日かかるし、料理もろくに出来んし、お客が来れば馬鹿丁寧な挨拶ばかりしてて、あれじゃあ品物も売れっこないさ」

 数えあげれば限もない。女中の玉江はいくらか知能が低い、小学校も中途半端で女中に来たのだが、

「玉江の方がよっぽどしっかりしているよ」

とお新は言う。

「あの子の方がなんぼ可愛いいか知れん」

と思ったままを正直に口に出してしまう。

「そんな事を決して人に言っちゃあいけんよ」

 作造にたしなめられるまでもなく、お新だって承知している。だが作造にだけは胸に溜まっ ていることを聞いてもらいたい。

 宮子はお新を避けている。そうとしか思えないのだ。いつかもラジオでお新の好きな広沢虎造の浪花節をしていたので、

「宮子も聞けし。今いい所だよ」

と親切に声をかけてやったのに、

「わたし、あまり好きでないから」

 素気ない返事だ。お陰で折角の浪花節も面白なくなった。それに引き換え、玉江はお新の傍に寄りたがる。お新が店に居れば自分も店に来て、万物を巻いたり、値札をつけるのを手伝う。しくじって叱られても、

「はあい、はあい」

とにこにこしている。宮子が口数少なく、こっちの顔色ばかり見ているのと大違いだ。玉江はお新を手伝いながら、時々宮子を話題にする。

「此の間、若いおかみさんが煮た大根ね。まずくて誰も食べなんだじゃんね。どうするかと思 ったら、かくれてみんな捨てちゃったよ」

「昨日も戸棚の陰で居眠りしてたさ」

お新は黙ってただふん、ふんと聞いている。

... 人の悪口を言うもんじゃあないよ...

玉江に注意しなければ、と思いながらも、それが快く耳に入ってくるのだ。

作造と二人で、安物の反物を風呂敷に包んで背負って行商から始めて、市村呉服店の看板を掛けるまでに三十年かかった。振り返ると、その時々の苦しさ辛さも今となってはなつかしい が、よくやり抜いたと自分でも思う。市村呉服 店と金文字を刷り込んだ店のガラス戸から、高価な棚の商品から、裏の倉庫の軒下まで、作造とお新の働きで手に入れたものだ。いや自分が居たから、作造がこれだけの店を持てたのだとお新は自負している。そこへ宮子がぬくぬくと割り込んできた。

若さにまかせて山奥にまで荷を背負って売りに行った。やっと小さな店を持って、子育てをしながら店番をし、寝る間も惜しんで仕立物をした。それこそ血のにじむような思いで、三十年かかって築き上げた市村呉服店のおかみさんの座を、何の苦労もしなかった宮子に、やがては譲ってしまうのだ。それがお新には納得できない。

 ただ一つ救いがある。敬一が商売の面白味が判ってきたようで、身を入れてよく働くように なったことだ。中年の番頭が一人居るのだが、 客が来ると敬一が帳場から出ていって、反物を広げ、客の相手をする。若さの有利さか、作造や番頭よりも客の受けがよく、商いも上手だ。

「あいつに任せても大丈夫だな」

それにつけても敬一にふさわしい嫁を貰いたかったと、夫婦の思いは同じだ。

「せめて器量でも好けりゃあな」

 作造が言うと、

「そうさ。もっと器量の好い娘を貰えば、世間にも自慢できたのに、あれじゃあ敬一だって一 緒に歩く気にもならないだろうね」

 お新は若い頃、美人だと人に言われたし、自分でも、今でもそう思っている。敬一は自分に似て好い男だ。宮子にはもったいないと思う。

「あんたがやたら先生と親戚になりたがるからいけないんだ。兄弟が大学を出ている。いい所へ勤めてるったって、こっちとは関係ないのにさ。あわててとびついたりするから」

「今更そんなことを言ったって仕様がない。あん時お前だって、女学校を優等で出た嫁さんだって喜んだじゃないか。まあ来年は子供も産まれるこんだし、孫でも出りゃあ又違ってくるかも知れん。我慢しろ」

 言うだけの事を言ってしまうとお新はさっぱ りして、悪口を言い過ぎたようで宮子が気の毒にもなってくる。明日富士館へ活動写真を見に行くつもりだから、帰りに甘い物でも買って来てやろう。


「宮子、聞きたいことがあるから、一寸此処へ坐りんせ」


出来るだけ落ち着いて話をしようと思うのだが、興奮して声がふるえてくる。

 宮子は相変わらず前掛けで手を拭きながら、 お新の前に坐った。ただならぬ姑の気配に不安そうだ。

「あんたはね、あたいが蓄音機をかけると、うるさいって言うだってね。玉江から聞いたよ」

 宮子は怪訝そうに細い目を見張った。

「あんたにそんな権力があるたあ知らなんだよ。どうもどうも悪うございましたね。年寄りは馬鹿だから、あんたがうるさがってるなんて気がつかなんで、はんで蓄音機をかけたりして、申し訳ないことでしたね」

 馬鹿丁寧な言葉を使っているうちに、胸の中に怒りがめらめら燃え上がってきた。日頃から怺えてきた宮子への不満、腹立たしさが堰を切って溢れ出た。

「あたし、そんなこと言いません」




お新の剣幕に圧倒され、宮子は口ごもる。

「嘘を言っちょし。玉江がちゃんと聞いただから」

「でも、本当に言わないけれど」

「じゃあ玉江が嘘を言ったのけ」

宮子は言葉に詰まった。それみろとお新は嫁を睨みつけた。 「あたいはね、三十年間もとんでとび歩いて働いて、これだけの物を求めたんだよ。食う物も切り詰めて、夜もろくに寝ないで働いて、これだけの身上にしたんだよ。蓄音機をかけるくらいの贅沢はしたっていいと思うよ。それを文句を言われちゃあ、それじゃああんまり可哀そうだよ」

 自分の言葉に煽られてお新は涙が出てきた。 蓄音機のある家は、この町内でも他に二軒しか無い。チョコレート色の大きな箱が自慢で、お新は毎日空拭きをして艶を出している。手巻き式のハンドルを巻くのも楽しい。「銀座の柳」や 「島の娘」が特に好きで、聞いていると胸の奥がぎゅっと絞られるようだ。

 玉江も歌が好きらしく、手の空いている時は傍に来て、 「いいねえおかみさん。もう一度かけて」

と言う。言われるとお新も張り合いで又かける。自分達ばかり楽しんでいて、宮子が除け者にな っては可哀そうだから、 「宮子もこっちへおいでんせ。一緒に聞こうよ」

と声をかけた。だが宮子は来なかった。

「手が放せないから、あたしはいいです」

手が放せない程何をしているのだと言いたい。 女学校出を鼻にかけて、流行歌を聞いている自分を軽蔑しているに違いないと腹が立った。そのような以前の事まで重なって、

「三十年も苦労したのに。口惜しいよう」

声をふるわせた。このくらいの事を言ってもいいのだと心の中にささやくものがあった。

「あたいはね。お父さんと二人で血の出るような苦労をして、これだけの身上にしたんだ。それをさ、一寸も有難いと思わなんで、歌を聞いたくらいで文句を言われちゃあかなわんよ」

 その時、廊下の障子が音立てて開いた。

「いい加減にしろ」

 敬一だ。片手に算盤を下げたまま、

「店まで聞こえるじゃんか。みっともない」

「敬一、聞いてくれんけ」

味方が来たとお新は嬉しく、宮子の横暴さを言い立てようとするのを、じろりと見て、

「うるせえったら」

座敷に入り、後ろ手に障子を閉めながら、

「お袋もしつこいねえ。宮子が言わないと言ったらそれでいいじゃんか。宮子も悪い。言わなければ言わんと、はっきりしんからだ」

「あたし、玉ちゃんに注意したんです。でもうるさいなんて言いません」

 敬一が来てくれて安心したのか、宮子は泣き出した。泣きながら、とぎれとぎれに、

「お義母さんの留守に玉ちゃんが勝手に蓄音機ヘレコードをかけてたんです。こわれると困るから、よしなさいって言ったんです」


離れに引き揚げて、お新はぺったり座りこんだ。何をするも億劫だった。蓄音機の件は誤解とわかったのだから、もっと晴れ晴れしそうのものなのに、前より一層気が滅入ってしまった。

「うるせえったら」

 舌打ちしながら言った敬一の一言がお新を打ちのめしてしまった。前はあんな子ではなかったと思うと、情なくて悲しくて涙が出てくる。ふと顔を上げると、廊下の雪見障子のガラスに自分の顔が映っていた。早々と廊下の庭側の雨戸を閉めたので、ガラスが鏡の役をして、四十

八歳のお新のゆがんだ顔があからさまに映っていた。ぞっとして目を逸らした。だが目の底に、たった今ガラスに映った年相応に老けこんだ自分の顔が残った。言いようのないもの悲しさと 。 やるせなさが、ひたひたと胸に湧いてきた。

親の反対を押し切って、作造と世帯を持ったあの頃が急に浮かんできた。

 不意にお新は立ち上がった。

 押し入れから大きな信玄袋を取り出した。作造は昨日から京都へ仕入れに行っている。染め屋や織元を回るので、あと二日は返らない。京都へ行こうと思い立った。作造の顔を見たら、過ぎ去った日々が取り戻せるような気がしてきた。

 まだそれ程遅い時間ではない。駅に行けば汽車があるだろう。京都へ着くのは明日の朝になるだろうが、作造の室町通りの宿はわかっている。誰にも黙って裏から出て行こう。明日の朝、 若い二人の狼狽ぶりを想像しながら、お新は箪笥から肌着や着物を出し、いそいそと信玄袋に詰め始めた。京都は紅葉の頃だろう。



読んで下さった方々、ありがとうございます。

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