入学式のようです
入学式に参加しているアイリス
その隣には久しぶりにであう婚約者が…
魔法学校―
魔法あふれるこの世界で、最も歴史ある学校。16歳から18歳までの3年間、貴族の子供たちは皆この学校で学び、統治者としての力を養っていく。
そして、各地から才能ある者が集まってくるこの学校は、豊かな出会いをもたらすだろう…
(いや、分からないわ~)
アイリスは心の中でため息をついた。
(だってキャラもシナリオも何もわかってないのよ!攻略対象もフラグも全部ただの
想定だし!そもそもこの学園が本当に乙女ゲームの舞台になってるのかさえも分から
ないし、ヒロインがいるのかさえ分からない…)
「はあ」
「どうしたのですアイリス?緊張しているのですか?」
アイリスがため息をつくと、隣から声をかけられた。
「それともこの式が退屈なのかな?」
「い、いいえそんなことないです―」
慌てて姿勢を正し、声をかけてきた人物に笑顔を向ける。
「―エドワード様。」
アイリスの顔を覗き込むようにしていたエドワード王子は、アイリスの答えにニコリと笑うと、視線を再び壇上に戻した。
アイリスたちは今、魔法学校の入学式に参加している。さすが国で一番権威ある学校だけあって、その格式たるや、王宮に勝るとも劣らない素晴らしさだ。
王室のパーティーやイベントごとに何度も参加しているアイリスも、実はかなり緊張していた。
一番前の席に座っていることも、さらに緊張を増大させている。
(それというのも…)
アイリスはちらりとエドワード王子の顔を盗み見た。
(まだ王子の婚約者だから仕方ないのよねー)
横に座るエドワード王子は、この国を統べる王家、スウォィンツェ家の次男であり第二王子だ。
肩まで伸ばしたブロンドの髪と朝空のように澄んだ薄水色の瞳は、8年前出会った時から変わらず、見るものをハッとさせる美しさがある。
8歳の頃よりぐんと背は伸びたものの、細身な体と外見も相まって、ガラス細工のような儚さがまだ残っている。
(何度見てもこのきれいな方が婚約者だなんて信じられないわね。)
「ん?」
じっと見つめていると、王子と目が合ってしまい慌てて目をそらす。
「…実は、私も少し退屈していまして。」
アイリスの方に少し身を傾けながら、王子がささやいた。
「え、エドワード様もですか?」
アイリスが驚いたように再び王子に顔を向けると、王子はクスクスと笑いながらも
「少しですよ。」
とアイリスに視線をやった。
「驚きました。私だけかと思っていましたので。」
王子たるもの、普段こういった式典に慣れていると思っていたが、やはり退屈なものは退屈なようだ。
「きっと楽しんでいる人の方が少ないですよ。―ほら。」
エドワード王子が少し体をのけぞらせると、隣には椅子の背にもたれかかって座る、エドワード王子の双子の弟、レオン王子の姿があった。
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