ヒロイン候補を見つけたようです②
さっそく一人ヒロイン候補を見つけたアイリス。
さらに候補を見つけようと、あんなに情報を求めてみると…
(あとは…)
ざっと生徒の情報に目を通すも、これと言って特別なステータスを持っている人物はいないようだ。
(うーん、今のところ一人ね…念のためアンナにも聞いてみましょう。)
「ねえ、アンナ。」
「はい、なんでしょう?」
「アンナはこの中で気になった方とかいる?」
「気になった方、といいますと?」
アンナは首をかしげた。
「ほら、例えば、すごく珍しい魔力を持っているとか…平民出身とか。」
自分でも変なことを聞いているなと思い、最後の方をごにょごにょと付け加えるアイリス。
アンナはしばらく考えるそぶりを見せた後、「そうですね」と口を開いた。
「お嬢様と同じ学年ではないのですが、「リリー・ニチェット」という方が平民出身であったはずです。昨年少し話題になっていました。」
(!平民出身の生徒がいるのね!)
まさか本当に平民出身の生徒がいるとは思っていなかった。
(乙女ゲームみたいだわ…)
実際、自分が乙女ゲームの世界にいるということはすっかり忘れている。
「そ、その方、どういう方なの?」
アイリスは興奮を抑えなるべく平静を保って聞いた。
平民出身の学生がいるのは初耳だ。
「なんでも、新しい魔法を開花させたのだとか。」
てっきり光の魔法を持っていないと学園に入れないものとばかり思っていたが、たしかに新しい魔法を開花させたのだったら納得できる…のだろうか。
「でも、そんな話、去年一度も聞かなかったわ。」
アイリスは去年の今頃の記憶をたどった。
しかし、父である公爵も、情報通のアンナもそのようなことを話題にしてはいなかった。
「実は…」
アンナは声を潜めた。
「どうやら、新しい魔法というのが、予想されていたものではなかったらしく…」
柔らかく濁してはいるが、少し気まずそうな態度がすべてを物語っていた。
(なるほどね…)
つまり「大したことない」魔法だったということだ。
「その方は今どうしているの?」
少し心配になってアイリスは尋ねた。
平民上がりでしかも期待されていたほどの魔法を開花させていないとなると、学校生活もかなりの苦労があるだろう。
「わかりません。なんといいますか、情報が入っていなくて。」
(見放されているのね…)
聞いているだけでも不憫なプロフィールだ。
しかし、このある意味《《特殊》》な状況はヒロイン候補に匹敵する。
(平民出身で周りからも見放されたヒロインが、攻略対象たちの力を借りて成長していく、って所かしら。)
誰が見ても完璧なシナリオだ。
(もう一人、ヒロイン候補を見つけたわ。)
アイリスは「アルテミシア・フォンセ」と同じく「リリー・ニチェット」の情報も頭に入れた。
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