ヒロイン候補を見つけたようです
乙女ゲームのヒロイン候補を見つけるため、魔法学園生徒のリストに目を通すアイリス。
はたしてヒロイン候補はどのような人物なのだろうか…
「ん?」
一番初めのページに戻ったとき、アイリスは少し気になる箇所を見つけた。
(この家って確か…)
「ねえ、アンナ。ちょっと聞きたいのだけれど。」
「はい?」
アイリスが指さすところを、アンナが覗き込んだ。
そこには、アルテミシア・フォンセという名前が書かれていた。
「このファーストネームって、確か…」
アイリスの問いに、アンナは少し怪訝そうな顔をした。
「アルテミシア」という名は、「光」という意味を持ち、光の魔法を持つ王家スウォィンツェに生まれた女児に付けられる名前だ。もちろん王家しか付けてはいけない名前ではないが、伝統ということもあり、王家以外の女児に付けることは遠慮されている。
いわゆる暗黙の了解というやつだ。
「そのお名前…代々の王女様のお名前ですね。見たところ、爵位は男爵のようですが。」
アンナは「詳しく調べましょうか」とアイリスを見た。
「少し気になっただけよ。どんな名前を付けようと個人の自由だもの。」
アイリスは気にしてない風を装って話を打ち切った。
とはいえ、この名前は少し引っかかった。
転生する前の世界では、ロイヤルベビーの名前が同時期の赤ちゃんの名前の流行になることが多いが、この世界では少し事情が違う。
「アルテミシア」は数世紀前、その身を犠牲にしてこの国を救った王女の名前だ。
人々は彼女の名前を神聖視し、王家では彼女への感謝と哀悼の意をこめてその名を受け継ぐようになった。
つまり、この国で「アルテミシア」という名前を名乗るということは、「私は王女だ」と言っているのと等しいのである。
(どちらの国の文化が正しいとは言えないけれど、この意味をわかっていて付けてるとすると、たしかに少し引っかかるかもしれないわね。)
名前から目立っているのであれば、入学式でも目立つ存在となるだろう。
アイリスは「アルテミシア・フォンセ」の情報を頭の中に入れた。
ヒロイン候補一名発見だ。
(あとは…)
アイリスは、とりあえずもう一度、生徒の情報に目を通すことにした。
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