登校のようです③
魔法学校の登校日を迎えたアイリス。
ついに始まる乙女ゲームに向けて、何やら事前準備があるようで…
馬車は公爵家の門を潜り抜けており、窓から見える屋敷はすでに小さく遠くになっていた。
「屋敷を長く空けるのも、初めてのことだものね。」
そう思うと、少し感慨深い。
転生してからずっと過ごしてきた屋敷と、家族と離れるのは、少し心細い。
それに、これからは一人でシナリオの分からない、この乙女ゲームと戦わなければならない。
(卒業、そしてエドワード王子との結婚成立まで3年間。断罪されないために、頑張らないと!)
「頑張るわ!」
アイリスはガッツポーズをした。
「その意気です、お嬢様!」
学業への意気込みだと勘違いしたアンナは、アイリスの真似をして同じようにガッツポーズした。
「アンナ。頼んでおいたもの、用意してくれたかしら?」
屋敷を出て数十分後、アイリスはアンナに尋ねた。
「もちろんですお嬢様。」
アンナはカバンから数枚の紙を取り出してアイリスに手渡した。
「ありがとう。」
そう言って受け取った紙には、びっしりと文字が羅列されている。
これは魔法学校の生徒リストだ。
(名前と住んでいる国…爵位と魔法属性もあるわね。これが一番大事だわ。)
アイリスはまずパラパラとリストをめくった。
この世界が乙女ゲームであるとするならば、物語は学園で起こるだろう。
元の世界で友達だったしーちゃんがやっていたゲームのキャラクターたちも皆、学生
服を着ていたはずだ。
(えっと確か…ヒロインになりそうなステータスは…)
足元に置いていたカバンから、アイリスはこっそりと『フラグメモ帳』を取り出した。
自分が乙女ゲームの悪役だと気付いてから書き始めたメモ帳
自分の不精さに苦笑いする。
メモ帳には、婚約者のエドワード王子を始めとする攻略候補の他、ヒロインっぽい要
素が書き留められている。といっても、しーちゃんが話していた、ヒロインっぽい要
素を思い出せるだけ書いたものだ。
どうやら、ヒロインは「平民出身」「かわいい」「珍しい魔力持ち」など、いわゆる《《目立つ》》要素を何かしら持っているらしい。
(「かわいい」はとにかく、「平民出身」は確かに目立ちそうね。)
魔力持ちが貴族階級のほとんどを占めるこの世界で、平民出身の魔力持ちはほとんどいない。
アイリス一行が現在向かっている魔法学校は、魔力をもつ者なら誰でも入学可能であるが、その学費の高さから最低でも男爵、もしくは商人の身分であることが必要だ。
これまでの長い歴史の中でも、平民の卒業生は片手で数えられるくらいしかいない。しかも、その誰もが地主身分である。
もしヒロインが平民出身であるとすると、相当魔力の才能があるか、もしくは―
(「光の魔法」を持っているってことかしら…。)
平民階級が公爵家の魔法を用いることはそれほど珍しくない。なぜなら、そのほとん
どが没落貴族やクレーヴェルのような貴族の隠し子であるためだ。
しかし、「光の魔法」を持っているとなると話は別だ。この魔法は王家の中でも国王
のみが持ち得る魔法であり、この世に2人とその持ち主は存在しないはずだからであ
る。
(でも、さすがにないわね。光の魔法を持っていたら今頃大ニュースだもの。)
今のところ、そういった話は耳に入っていない。国王の次に影響力のある公爵家に情
報が回っていないのだから、この線はないだろう。
(となると、ものすごい魔力の持ち主ってことかしら。)
頭の中で様々な線を考えながら、リストに目を通していると、
「学校の生徒の名簿を覚えるなんて、お嬢様はとても熱心ですね。」
と、アンナが話しかけてきた。
どうやら、アイリスが生徒全員の名前を覚えようとしていると勘違いしているようだ。
「え、ええ。まあね…」
「そんなお嬢様のために、こちらも用意しました!」
そう言って、アンナはなにやらカバンから取り出した。
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