登校のようです
「それじゃあ、行ってまいります。」
「ああ、行っておいで。」
アイリスとクレーヴェルは、順に公爵に抱きしめられた。
後ろでは、使用人たちが勢ぞろいで二人を見送りに来ていた。
「うう、お嬢様…あんなに成長なさって…」
「屋敷も寂しくなりますな…」
口々にそう言う使用人は、皆アイリスたちより泣きそうな顔をしていた。
「みんなを見てると、こっちまで泣きそうになるわ。」
「ハハハ、仕方ないだろう。なあ、マルタ。」
「そうでございますね。」
そう言うマルタも、すましてはいるが、声が少し震えている。
「お嬢様がきちんと一人で起きられるのか、好き嫌いはしないか、ちゃんと勉強なさるか心配で心配で…」
マルタは困ったように頬に手を当てた。
「わ、分かったわマルタ!ちゃんとするって約束するから…」
「ふふ、ちゃんと聞きましたよ。」
途端にけろっとした顔に戻り、いたずらっぽく笑うマルタ。
(あ、やられた!)
「ハハハハハ!図られたな、アイリス。」
「も~!」
頬を膨らませるアイリスに、皆が笑い、その場の雰囲気が和んだ。
「まあ、色々と大変なこともあるだろうが、二人で力を合わせて頑張るんだよ。」
改めて二人を抱き寄せると、公爵は優しく言った。
「はい、お父様。」
「お任せください。父上。」
「それから、何かあればすぐに知らせなさい。お前たちの味方は、いつでもここにいるのだから。」
公爵の言葉に、使用人たちはみな力強くうなずいた。
「お嬢様、坊ちゃま。」
マルタがアイリスに一歩近づいた。
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