新しい日常が始まるようです②
「お嬢様!朝でございますよ!」
聞きなれた声とともに、視界が一気に明るくなった。
「はやく起きてください!」
そう言われた人物は、ベットからガバッと飛び起きた。
「大変!寝坊した!?」
バタバタとあわただしくベットから離れたその人物は、顔を洗いに洗面台へ向かった。
緩くウェーブのかかった金色の髪に、黄緑色の瞳の少女は、鏡に映る自分の顔を見て驚いたように声を上げた。
「わあ!どうしよう!!変な寝癖が付いてるわ!」
「いつも変な姿勢で寝るからですよ。いつも申しているではありませんか。…私に任せてくださいまし。」
侍女はこなれた手つきで、少女の髪を直していく。
「ありがとう!マルタ!」
マルタと呼ばれた侍女は、笑顔を向ける少女にため息をついた。
「まったく…何年たってもお変わりありませんね。―アイリスお嬢様。」
そう言われて、アイリスは「へへっ」と笑った。
「マルタがいてくれるから大丈夫よ!」
「もう、調子いいんですから…。」
「ふふ。」
「お嬢様、おはようございます。」
扉をノックして、もう一人別の侍女が入ってきた。
「おはよう、アンナ!」
アイリスは扉の方を向いてにこやかに笑った。
「ああ、アンナ。来てくれたのね。ではお嬢様は任せるわね。」
「任せてください!」
鏡の前に座ったアイリスの後ろに立ったアンナは、意気揚々と櫛を手に持った。
「今日は特に気合を入れますからね!私にお任せください!」
「あまり派手なのはやめてね。」
アンナにバトンタッチしたマルタは、テキパキとベットを整えていく。
「今日の朝食は何かしら?」
髪をセットしてもらう中、アイリスはワクワクして聞いた。
「今朝はシェフたちも張り切っておりましたから。お楽しみです。」
「え~待ちきれないわ!」
「お嬢様がもっと早く起きてらしたら今頃召し上がってますよ!」
シーツを取り換え終わったマルタが小言を言う。
「うう…」
「まあまあマルタさん。いいじゃないですか。」
アイリスの髪をセットしながらアンナがなだめる。
「ア、アンナぁ…」
「アイリス様のお寝坊は、今に始まったことではないですから!」
「…」
清々しいほどの笑顔で言うアンナに、返す言葉もないアイリス。
「お嬢様、お洋服をこちらに用意しておきますね。」
「ありがとう、マルタ。」
アイリスは、丁寧にかけられた服に視線をやった。
「さ、セット終わりましたよ!きっとそのお洋服にぴったり合いますわ!」
「ありがとう~じゃあ着替えるわね。」
「かしこまりました。」
髪のセットが終わったアイリスはが立ち上がってそう言うと、二人は一礼して部屋から出ていった。
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