新しい日常が始まるようです
小鳥の声が聞こえる。
もう朝のようだ。
清々しい朝の香りを吸い込むと、すっと眠気が覚めていく。
目を開いて体を起こすと、朝日に照らされた部屋の中が見える。
お気に入りの景色を朝一番に見ることができて、今日一日の活力がわく。
この部屋は世界一のデザイナーが手掛けてくれたものだ。
白をベースにした天井には濃淡様々な葉が描かれ、深緑の壁と相まって、草のアーチの中にいるようで落ち着いた雰囲気を醸し出している。
所々に生けられている白や黄色を基調とした小さな花々も、自然な色合いで美しい。
僕が一番好きなのは、カーテンを開ける瞬間だ。
窓いっぱいから差し込んだ光が壁を映し出すと、深緑の壁が鮮やかな黄緑色に染まるのだ。
その様子は、先ほどまで見ていた夢の中そっくりだ。
フーピテル家で茶会をした日の夢。
姉が僕を気遣って開いてくれた茶会で、僕はたくさんの美しい景色を見せてもらった。
そのうちの一つ、川下りをしたときに差し掛かったくら花のアーチが僕のお気に入りで、その景色をもとに、姉がこの部屋のデザインを考えてくれたのだ。
「あの時から、もう8年か…」
窓から外を眺めていた僕は、小さく呟いた。
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