最強のお友達のようです②
庭を散策するアイリスたち。
しかし何者かに襲われて…
「出てきなさい!」
そう声を上げると、木の陰から、人影が現れた。
「あ、あなた…!」
アイリスが言うのと同時に、その人物が顔を上げだ。
「何でここにいるの!?だってさっき…!」
「うるさいわよ。」
ぽつりと、その人影は呟いた。
「アイリス、彼女は一体…?」
状況をつかめないラナが不安そうに聞いた。
「クレーヴェルのストーカーよ。でも、あなたはうちの御者が連れて行ったはずじゃ…!」
乱れた髪に、埃だらけのドレスをまとった少女は、にやりと口元をゆがめた。
「だぁって~未来の旦那様に会いに行くことくらい普通でしょ~?」
「弟はあなたと婚約してはいないわ。」
アイリスが厳しい声で言った。
「うるさい!うるさい!!」
少女は髪を振り乱して絶叫した。
そしてアイリスを守るように立つクレーヴェルの姿を見て、嬉しそうに目を見開いた。
「ああ!やっぱり私たちは運命の赤い位置で結ばれているんですわ!クレーヴェル様。」
「何言って…!」
「運命の赤い糸が、私をあなたへ引き寄せてくださったんですわ~!」
少女は夢見心地で、うっとりとクレーヴェルを見つめた。
その狂気ぶりに、アイリスはゾクリと寒気を感じた。
「ここはフーピテル様の私有地ですよ。どうやって入ったのです。」
ルビーが咎めるも、少女は全く聞く耳を持たない。
そればかりか、じりじりとこっちに近づいてきている。
「止まりなさい。それ以上来ることは許しませんよ。」
少女が走り出した。
手に持ったナイフが赤く光る。
(あれは…血?)
その瞬間、ルビーが動き、瞬きする間もなく少女のナイフが宙に舞っていた。
「んなっ!」
カシャリと軽い音がして、ナイフが地面に落ちる。
慌ててナイフを撮ろうと向きを変えた少女を、ルビーがとんと軽く押した。
「きゃあ!」
バランスを崩した少女は、そのまま横へ倒れた。
すると、どこからともなく蔓が伸び、起き上がろうとする少女にからみついた。
「何よこれ!くそっ放しなさいよ!!クレーヴェルさ、んぐっ」
大声で喚き散らす少女の口を、蔓が塞いだ。
「ちょっと、お黙りになって?」
片手を上げたらなが、にこやかに言った。
しかし、目は全く笑っていない。
あまりにも静かな剣幕に、ルビーも固まっている。
「神聖な庭を汚した挙句、大切なお友達を傷つけるなど…。」
風もないのに、ざわざわと周りの木々たちが揺れる。
ラナは一歩少女へと近づいた。
「きっと覚悟は、できているのですよね?」
にこりとほほ笑んだのと同時に、四方八方から蔦や根がすごいスピードで伸び、少女を覆っていく。
「ん”!?ぐう!!」
少女は恐怖に目を見開き、何とか蔓から逃れようと抵抗している。
彼女にとってはとてつもない恐怖だろうが、みずみずしい葉や、色とりどりの花々が咲き乱れたその様子は、美しくさえあった。
「屋敷に連れて行きなさい。」
ラナがそう言うと、すっぽりと少女を囲んだ蔓たちは、そのまま猛スピードで屋敷へと向かっていった。
後には、いくつかの花弁や葉が、木漏れ日の光を班指して、ひらひらと舞っているだけだった。
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