最強のお友達のようです
ラナの屋敷にお邪魔しているアイリスたち。
庭を案内してもらうようですが、お客さんが紛れているようです…
本庭に着いたアイリスたちは、その美しさに唖然とした。
広大な敷地には多種多様な植物がのびのびと、しかしきちんと節度を保って植えられていた。
木々はみずみずしく生い茂り、色の薄い花々は落ち着いた雰囲気ながらもはかない可
憐さがあり、冬の寂しさを一切感じさせないほど生命にあふれていた。
「すごい…。」
アイリスたちは白いバラの咲き乱れるトンネルを抜け、ラナの案内のもと、芝生の小道を歩いていた。
カーブを描く芝生の道は足に心地よく、両側には宿根草が手前から奥に背の順に植えられている様子は、さながら不思議の国の迷路のようだ。
「なんだか…同じところをぐるぐる回っているみたい。」
アイリスはキョロキョロと辺りを見回した。
「迷ってしまいますね。」
「ルビー様は耳が良いから、すぐに抜け出せますわよ。」
先頭を歩くラナが笑った。
「確かにそうね。」
アイリスも相槌を打った。
「いえ、そんなことは…。」
顔を赤くして、ルビーはうつむいた。
「マルス家の方々は皆さん身体能力が高いのですよね。うらやましいですわ。」
「ねー。私もルビーに助けてもらったことがあるのよ。」
「まあ、そうなのですか?」
「ええ!ルビーはとってもかっこいいんだから。」
二人の会話に、ルビーはさらに顔を赤らめた。
「かっこいい…」
アイリスの横で、ぼそりと呟くクレーヴェル。
(僕ももっと剣術に励もう。)
「そういえば、クロノス家のご子息もマルス家で訓練なされているのですよね。」
ラナがこちらを振り返って言った。
(クロノス家…あぁ、あの時の子ね。)
アイリスは以前矢を飛ばしてきた、トリスタンの顔を思い浮かべた。
「トリスタンをご存じなのですか?」
ルビーが驚いたように聞いた。
「ええ。ここの庭の土は、クロノス家の方からいただいているのです。家系的にも近いですから、私たちの魔法によく馴染んでくれるんです。」
「だからここの植物はとても生き生きしているのね。」
アイリスが言うと、ラナは頷いた。
「ええ。それと、アイリスのお家の魔法のおかげでもあるのですよ。」
「え、そうなの?」
目を丸くするアイリス。
「草魔法はクロノス家の土魔法とメルキュール家の水魔法から派生しているから、相性がいいんだよ。」
クレーヴェルがアイリスに耳打ちした。
「あー…そんなようなこと誰かが言っていたわね。」
「誰かって…この前授業で習ったよ。」
あきれるクレーヴェル。
「そうだったのね。じゃあ、私たちもこのお庭に貢献してるってことね。」
そんなクレーヴェルを気にせず、アイリスは嬉しそうに言った。
「そうですわね。」
ラナも微笑んだ。
その後、四人はおしゃべり楽しみながら庭を回った。
各区画ごとにテーマが違い、進むたびに色々な景色を楽しむことができた。
「まるで違う国を旅行をしているみたいですね。」
たくさんの木々の並木を歩きながら、ルビーが言った。
「本当。ここなんて、まるで森の中にいるみたいだわ。さっきはきれいなお花畑にいたのに。」
アイリスはきょろきょろと辺りを見回して言った。
木漏れ日が差し込む森の小道は、艶やかな植物たちの香り豊かで、本当に森の中心に迷い込んでしまうかのように感じさせる。
木々に囲まれているせいか、辺りはうっすらと霧がかっており、アイリスの髪は少し湿り気を帯びた。
かすかにサラサラと水の流れる音がする。
(すぐ下に川が流れているのかしら。)
そんなことを考え、のんびりと歩いていると、不意にルビーが
「お待ちください。」
と言って、アイリスたちの前に進み出た。
「ルビー…?」
ルビーの突然の行動に、アイリスたちは困惑気に立ち止まった。
「誰ですか?そこにいるのは。」
ルビーは前方に向かって厳しい視線を向けた。
「出てきなさい!」
そう声を上げると、木の陰から、人影が現れた。
「あ、あなた…!」
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