表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/90

三人集まれば…のようです

ラナの屋敷に着いたアイリスたち。

今回はどのようなお茶会になるのでしょうか…

「アイリス様!お久しぶりでございます。」


案内された部屋は、前回と同じラナの「庭」だった。


部屋に入ると、ラナとルビーが待っていた。


「ごめんなさい。お待たせしてしまったかしら。」


「いえ。ルビー様とお話していましたから。」


(よかった…ルビーも楽しそう。)


和気あいあいとした様子の二人に、アイリスは内心ほっとし、すっと横に移動した。


「ラナ、ご紹介させていただくわ。弟のクレーヴェルよ。」


アイリスが言うと、クレーヴェルは優雅にお辞儀をした。


「クレーヴェルと申します。本日はご招待していただきありがとうございます。」


「ごきげんよう。クレーヴェル様。」


「こちらこそ来ていただき嬉しいですわ。」


二人はにこやかに言い、アイリスたちは席に着いた。


「ルビーたちは、何の話をしていたの?」


着席すると、アイリスは二人に聞いた。


「ルビー様のお店について伺いました。私もぜひ買いたいと、お願いしていたところなんです。」


ラナの言葉に、ルビーは嬉しそうに顔を赤らめた。


「アイリスのデザインしたドレスも、売っているのでしょう?」


「そうなの。」


ちょうどその時、執事たちが紅茶と茶菓子を運んできた。


(やったあお菓子!)


アイリスはぱっと顔を輝かせた。


フーピテル家で出される茶菓子や紅茶は、どれも香りがよく、アイリスは大好きだった。


「今日はなんの紅茶なの?」


「紅茶は洋ナシとキャラメルのフレーバーティーです。洋ナシは、秋ごろに裏庭で収穫いたしましたものを、じっくりとはちみつに漬けましたの。」


ポットからは、キャラメルの甘い香りと、洋ナシの香りがふわりと香った。


「まあ、とてもいい香りですね。」


ルビーが驚いたように言った。


「本当。甘くておいしそうだわ。」


「そうでございましょう。お砂糖がないほうがお楽しみいただけるやもしれませぬ。」


執事はそう言うと、テーブルにクッキーを置いた。


クッキーにはローズマリーの花がアイシングされている。


食べてみると、サクッと軽い歯ごたえがした。


(おいしい~!)


ローズマリーの少しスパイシーな香りが、紅茶の残り香とよくあっている。


「そういえば、クレーヴェル様はお部屋の飾りつけをしたい、とアイリスから伺ったのですが…。」


アイリスがクッキーを食べていると、ラナが口を開いた。


「どのようなお部屋にしたいなどありますか?」


クレーヴェルは一瞬言いよどんだが、


「特に決まったものはありませんが、姉からフーピテル様のお庭は素晴らしいと聞きましたので、ぜひ参考にしたいな…と。」


とすぐに笑顔になった。


「そうなのですね。…ではこの後ご覧になられますか?」


「ええぜひ。」


「フーピテル様のお庭を見られるなんて、夢のようですわ。とても美しいと噂はかねがねお聞きしていましたから。」


「楽しみです」とルビーもワクワクしているようだ。


「アイリス様はご覧になられたことがあるのですか?」


ルビーが目の前にいるアイリスに聞いた…が、アイリスは夢中でクッキーをほおばっていた。


「アイリス様…。」


「姉さん。」


クレーヴェルにつつかれ、アイリスはハッと意識を戻した。


「ん、な、なに?」


「もう…。」


呆れるクレーヴェル。


ルビーたちはクスクスと笑っている。


(え、何か言ってたのかしら…?)


「アイリス様は、ここのお庭はご覧になったことはありますか?」


笑いをこらえながら再びルビーが聞いた。


「このお部屋と、中庭に生かせてもらったわね。」


「そうですわね。今日は本庭にご案内いたしますわ。」


ラナはそう言うと、アイリスの紅茶を注いでいた執事に何やら用意するように頼んだ。


「かしこまりました。」


執事は承って、部屋を後にした。


「ラナ様のご家族は、皆さまお庭を持っていらっしゃるのですよね。」


ルビーが聞いた。


「ええ。本庭は父の魔法で管理されています。しかしあまりに広いので、私もすべて回ったことはないのです。」


「え、そうなの?」


アイリスは驚いて言った。


屋敷に住んでいる本人が言うのだから、相当広いに違いない。


「はい。父と一緒でないと迷子になってしまいます。」


ラナはそう言って笑った。


「なので、今日は一部だけです。」


「そうなのね。―それにしても、このお部屋も中庭もそうだけれど、フーピテル家はお屋敷中がお庭みたいね。」


アイリスの言葉に、ルビーもうなずいた。


「いつの間にか、おとぎの森に迷い込んでしまったのかと思ってしまいます。」


「ふふ、本当に。素敵よね。」


「ありがとうございます。」


アイリスとルビーの賞賛に、ラナは少し頬を赤らめた。


周りの木々も、ラナの気持ちに呼応するようにそよそよと葉を揺らした。


「そう言えば、アイリス様が来る少し前に外で大きな音がしましたが、なにかあったのですか?」


ふと思い出したようにルビーが聞いた。


「音なんてしていました?」


ラナが不思議そうに聞いた。


「ちょうど、並木道のところだと思うのですが。火の魔法を使った魔具も使用されていましたので少し気になって…」


アイリスとクレーヴェルはルビーの耳の良さに驚いた。


「はい。少しトラブルがありまして。」


クレーヴェルははアイリスをちらりと見た。


「そうなの。実は…。」


アイリスは、屋敷に着く前に起きた一部始終を話して聞かせた。


「まあ。そんなことがあったのですね。」


ルビーは少し驚いているようだった。


「社交界ではよくあることです。クレーヴェル様も、あまり気になさらないでください。」


貴族社会に詳しいラナは、そこまで驚いていないようだった。


「社交界って怖いのね…。」


アイリスは身震いした。


「ふふふ。でも、アイリスやクレーヴェル様がご無事で何よりです。」


「そうなの。木の根っこのおかげで助かったわ。」


「木の根…?」


「ええ。その子が運よく気の根っこに躓いてくれたのよ。」


アイリスの言葉に、ラナは少し考えるような素振りを見せたが、すぐに「そうなのですね」と言ってほほ笑んだ。






「準備が整いました。」


しばらくアイリスたちが話していると、執事が部屋に戻ってきた。


「ありがとう。では皆さん、行きましょうか。」


ラナは執事にお礼を言って立ち上がった。


「今日は私が案内しますわ。」


「楽しみね。」


アイリスたちも立ち上がると、執事にならって部屋を出た。

お読みいただきありがとうございます。

また、ブックマーク登録もありがとうございます。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ