表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/90

お茶会へ行くようです③

お茶会へ行く途中、いきなり知らない少女に襲われたアイリスだが…



「っ!姉さん!」


「死ねえええぇぇ!!」


大声で叫びながら、少女はカッと目を見開きこちらに向かって突進してきた。


(まずいっ!魔法を…!)

 

身を守ろうと手を前に掲げるが、間に合わない。


(―!)


死を覚悟したアイリスは固く目をつぶった。


―しかし、


いつまでたっても、想像していた感覚が来ない。


(あれ?)


不思議に思い薄く目を開けてみると、少女の姿が消えていた。


「え、消えた…?」


ゆっくりと目を開き、恐る恐る足を踏み出すと、ふにゃっと変な感触があった。


「うわっ」


驚いて後ろに退くと、アイリスの手前、目と鼻の先の地面に、さっきの少女がへばりついていた。


「え、なに?どうしたの?」


訳が分からず、クレーヴェルの手を引いて後ろに下がる。


「姉さん、見てみて。」


クレーヴェルが少女の足元を指さした。


「これは…根っこ?」


地面に伸びている少女の足には、木の根っこのようなものが絡みついていた。

彼女はこれに足を取られて躓いたらしい。


「なんにせよ…ラッキーだった…てことでいいのかしら。」


「…そうだね。」


アイリスとクレーヴェルは、少女から目を離さずに後退し、道のわきで倒れている御者のもとへと向かった。



「大丈夫ですか?」


少し肩をゆすると、御者はすぐに目を覚ました。


「はっお嬢様方!ご無事でしたか!?」


「ええ大丈夫よ。あなたは平気?」


「ええ俺は…馬たちは?」


「馬たちはあそこにいます。」


クレーヴェルは、端のほうで身を寄せ合っている馬たちを指さした。


御者は安心したようにほっと溜息をつくと、


「そうですか…よかった…。」


と言って立ち上がった。


「何があったのか分かりませんが、馬車も無事なことですし、行きましょう。」


「そうね。行きましょうか。」


御者は馬車を元に戻すと、馬たちを引っ張て来て馬車につないだ。


「さ、フーピテル家までもう少しです。」


御者は馬車のドアを開けて、アイリスたちをエスコートした。


「あ、お嬢様…あの方はいかがしたので?」


アイリスが馬車に上がるとき、御者が地面に伸びたままの少女を見た。


「あぁ…あの子…。どうしようかしら。放っておくわけにいかないだろうし…。」


アイリスがちらりとクレーヴェルを見ると、クレーヴェルも「しかたないよ」と小さく頷いた。


「本当に平気?」


念を押すと、クレーヴェルは


「うん…。まあ仕方ないよ。社交界ではよくあることらしいし。」


と言って、あきらめたように笑った。


「へ、へえ…」


(よくあることなの…。)


貴族社会に一抹の恐怖を覚えつつ、アイリスは御者に馬車に運び込むように言った。


「フーピテル家にお邪魔している間に、この子のお家まで届けてあげてくれる?徒歩で来たはずだから、きっとここから遠くないわ。」


「かしこまりました。」


御者は特に深い理由を聞かずにそう言うと、気を失ったままの少女を抱え運んできた。


頭を思いっきりぶつけたせいで、少女のおでこには大きなこぶができていた。


(うわ…痛そ。)


跡が残りそうだと不憫に思うアイリス。



少女を馬車の荷物入れに収納した後、馬車は何事もなかったかのように走り出した。


アイリスとクレーヴェルは、落ちた衝撃で乱れた格好を直していた。


「まったく…とんだ災難にあっちゃったわね。」


「そうだね。でも、姉さんの魔法のおかげで助かったよー」


クレーヴェルは、少しよれただけのジャケットを直しながら言った。


「ありがとう。」


「お役に立ててよかったわ。」


アイリスは二カッと笑うと、スカートのほこりを払った。


「着きましたよ。」


カタンと軽い振動がして、馬車が止まった。


ドアが開き、御者の手を取って馬車から降りる。


玄関先には、茶会の時と同じ執事が迎えに来ていた。


「メルキュール様。ようこそお越しくださいました。」


「ごきげんよう。」


「我が主人は中でお待ちでございます。では、こちらへ。」


執事はそう言うと、屋敷の扉を開けた。


「ありがとう。」


アイリスはちらりと馬車の方を振り返ると、執事について屋敷の中へと入った。





お読みいただきありがとうございます。

また、ブックマーク登録もありがとうございます。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ