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お茶会へ行くようです②

老婆の家を出て、フーピテル家へと向かうアイリスたち。

しかしその半ば、またもやハプニングが起こって…

「おばあ様に会えてよかったわね、クレーヴェル?」

馬車の中、アイリスは目の前に座るクレーヴェルに話しかけた。

「うん。まさかまたお会いできるなんて。ありがとうございます。」

嬉しそうに言うクレーヴェルは、まだ信じられないというように頬が赤らんでいた。

「喜んでくれて嬉しいわ。あなたもお礼を言いたいのではないかと思ったの。」

「うん。それにしても、あの贈り物は姉さんが考えたの?」

「そうよ。私に贈れるものは絵くらいしかないけれど、おばあ様にぴったりなプレゼントだと思って。」

「さすがは姉さんだね。」

「ふふっ。」

アイリスは少し誇らしげに笑った。

「さ、今日は早くに起きて眠いでしょう?ラナの家まではまだあるから、寝ててもいいわよ?」

優しく言うアイリスだが、そう言いながら自分があくびをかみ殺している。

「うん。そうしようかな。」

クレーヴェルは少し笑いながらも、素直に目を閉じた。

「姉さん、実は手紙のことなんだけど―」

そう言いかけて目を開けたクレーヴェルだが、アイリスは壁に頭を持たれかけすでにスウスウと寝息を立てていた。

「…まあ、こんどでいいか。」

そう呟き、クレーヴェルは再び目を閉じた。



それからしばらく、二人は馬車の揺れに身を任せ、少しのうたた寝を楽しんでいた。

馬車はいくつかの村を抜け、白樺の並木道にさしかかっていた。

並木道を抜けた先にはフーピテル家がある。

目的地まであと少しだ。

馬車を操作していた御者は、速度を落とそうと手綱を引こうとしたー


その時


ヒュー―ン!


耳障りな甲高い音が一瞬して、辺りに閃光が走った。

「うわあ!」

ヒヒィーン!!

光に驚いた馬たちはパニックになって暴れ始めた。

まともに光を目にした御者は手綱を引いたが、それでも馬たちの力には逆らえず、そのまま体を投げ出されてしまった。

「キャア!!」

強い揺れと衝撃で目を覚ましたアイリスは、とっさにクレーヴェルを引き寄せて水のベールをまとった。

馬車は横転し、アイリスたちは外に投げ出された。

ポヨン

パシンッ

軽い音と共に水泡がはじけた。

「うぅ…」

アイリスは起き上がると、抱きしめていたクレーヴェルを離した。

水泡のおかげで、二人は怪我一つしていなかった。

「クレーヴェル、大丈夫だった?」

クレーヴェルは動揺しているようだったが、アイリスを見てハッとしたように意識を戻した。

「う、うん。姉さんは?」

「私は平気。でも何があったのかしら…。」

「そうだね…。」

辺りを見回したクレーヴェルは、何かを目にして固まった。

見開かれた目は、アイリスの後方をとらえていた。

「クレーヴェル、どうしたの…?」

後方を振り返ったアイリスは、同じように身を固めた。

「…え?」


二人の視線の先には、一人の少女が立っていた。

「だれなの?」

アイリスはそう尋ねようと口を開きかけたが、少女の様子に思わずクレーヴェルを後ろに隠した。

(この子…何かおかしいわ。)

こんなにも大きな事故があったというのに、少女は動揺一つ見せずにじっとこちらを見つめている。

その眼には、歓喜の色さえ見えた。

「あ、あなた、誰なの?私たちに何か用?」

アイリスは警戒するように話しかけたが、少女はそれには全く反応せず、

「あ、あぁ…」

と嬉しそうに息を吐いた。

「クレーヴェル様…!」

(クレーヴェル?)

アイリスが後ろを振り返ると、クレーヴェルと目が合った。

クレーヴェルはフルフルと首を振った後に、何かを思い出したような顔をした。

「もしかして…あの手紙の?」

恐る恐る尋ねるクレーヴェルの問いに、少女はパアッと顔を輝かせた。

「まあ!クレーヴェル様!私をご存知だったなんて!!」

少女は興奮したように身をよじると、一歩こちらへと近づいた。

クレーヴェルを後ろにしながら、アイリスはジリ、ジリと後ろへと下がった。

(なんだかこの子、危ない気がする。)

クレーヴェルの手を握る力を強める。

「なんで逃げるんですかぁ?クレーヴェル様ぁ?」

少女は不思議そうに小首をかしげ、こちらへと歩いてきた。

「近づかないで。」

アイリスが言うと、

「うるさいっ!!お前は黙れ!」

今までの夢見心地な顔が一変し、少女は鬼の形相でこちらを睨んできた。

「!」

その目は、うつろに濁っていた。

(この目…!)

「まあごめんなさい。私ったら…。こんなに取り乱してしまって。」

少女は懐から何かを取り出した。

「クレーヴェル様ぁ?私、たくさんたくさんお手紙を書いたんですのよ。あなた様がいつか私を見つけてくださると信じていましたもの。本当でしたわぁ。」

少女はニイィと笑みを浮かべた。

「ですから、もう少しお待ちくださいねぇ?すぐに邪魔者を消してしまいますから…。」

包みを解いたそれは、小さなナイフだった。

「っ!姉さん!」

「死ねえええぇぇ!!」

お読みいただきありがとうございます。

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