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波乱の予感

闇の呪いが古代魔法によるものだということが分かり、途方に暮れるアイリスたち。

しかし、チェルシー伯爵はまだ可能性があるというが…

(今回は書く時間が少ししかなかったので短くなってしまいましたが、お楽しみいただければ幸いです。あとがきにこれからの投稿について記載いたしましたので、目を通していただけますよう、お願い申し上げます。)

「私達には、まだできることがあるのですから。」


そう言ってチェルシー伯爵が取り出したのは、袋に包まれた、透明の小さな石だった。


伯爵はその石を慎重にテーブルの上に置いた。


「これは…?」


「これは魔石です。魔力をこの石に込めることによって、石に魔力を保存することができるのです。」


伯爵はそう言うと、魔石を手で包み込んだ。


ポウっと魔石が輝き、薄い水色の光が石の中に吸収されていった。


「この光が、石に込めた私の魔力です。」


アイリスは伯爵が持つ魔石をじっと見つめた。


淡い水色の光が、魔石の中を変動している。


「すごい…」


「初めはこの石にクレーヴェル殿の闇の魔力を移そうと考えていました。しかし、呪いの大きさや、それをかけた者が古代魔法を用いたことから、この石だけでは完璧に移すのは難しいと思われます。」


伯爵は静かに言うと、魔石をメルキュール公爵に手渡した。


「…もしかしてこれは、神殿の魔石か…!」


公爵は魔石を手にして、驚いたように言った。


「はい。まったく同じものではありませんが、似たような種類の物です。」


「しかし、これをどうやって手に入れたんだ?」


 この世界には様々な種類の魔石が存在している。

魔法を使うことができない人々が日常で用いる物から、神殿で祀られているような非常に貴重な物まで多岐にわたる。

一般に使用されているのは、一定条件で熱を放つ石や暗いところで光る石など比較的入手しやすい魔石だが、今伯爵が持っているものは、それ一つで同じ大きさのダイヤよりも高い価値を持つほど貴重な魔石だ。


「商人から買いました。彼はこの石の価値に気づいてない様でしたので、他の魔石と同じ値段で買うことができましたが。」


伯爵はそう言うと、公爵の方を向き、


「その商人曰く、この石は王都で手に入れたそうです。なので、次回王都へ行くときに話しを聞いてみましょう。ちょうど《《私達も》》王都へ行く予定がありますので。」


と笑顔を浮かべた。


(げえ!てことはアラン様も来るの!?)


あからさまに嫌な顔をするアイリスとクレーヴェル。


「おお!それは良い考えだな!ではみんなで一緒に行くとしよう。」


公爵は上機嫌になって言い、なるべく攻略キャラと関わりたくないアイリスは、余計なことを言うなと公爵を睨みつけた。


しかし、アイリスには良い切り札があった。


(私は、ルビーの家でお泊りするもんね!)


「残念ですが、私はご一緒できませんわ。私は王都へ行く前日に、エドワード様のところへお邪魔するのでルビーの家に泊まります。」


アイリスはいかにも残念そうな表情を浮かべた。


隣を見るとクレーヴェルが訴えるような目でアイリスを見つめていた。


(王子に会いに行くなら、僕たちと一緒に行ったほうが良いよ!)


目で必死にそう伝えるクレーヴェル。


(…クレーヴェル…分かったわ!)


アイリスは力強く頷くと、


「あ、それとクレーヴェルも一緒に行きますわ。」


と付け加えた。


(アラン様とはあまり馬が合わないようだし、ここは姉さんに任せなさい!)


自信満々な視線を送るアイリスに、クレーヴェルは頭を抱えた。


(姉さん…違うよ…)


「そうかい?それは残念だなあ…」


公爵はしょんぼりとしたが、伯爵は意外にもあっさりと


「それは仕方ありませんな。」


と言って引き下がった。


(よしっ。このまま帰りも別々に…)


「確か、アイリス嬢が王都へ行かれるのは明後日でしたな。では一緒に帰ることはできますね。」


言い訳が上手くいったアイリスに、伯爵がにこりと笑って言った。


「そうだな!アイリス達は一日しか泊まらないんだろう?帰りは一緒だな!」


公爵はぱあっと表情を輝かせた。


「ええ…は、はい。」


アイリスは父親の笑顔に完全に押されてしまった。


「楽しみだなあ!アイリス!」






「なんだかうれしそうですね、公爵?」


アイリス達が出て言った後の部屋で、伯爵がニコニコ顔の公爵に話し掛けた。


「もちろんだ!初めて家族そろっての買い物だからな!」


「はは、それは楽しみですな。」


「ああ。…そういえば、お前の長男は元気かい?」


「はい。彼にはやはり魔法の素質があるようで。いつも魔法書を読み漁っていますよ。」


伯爵がそう言うと、公爵ははっはっはっと笑った。


「いやあ、私も常々彼の才能には驚かされるよ。本当に将来が楽しみだ。」


「そう言っていただけてあの子もうれしいでしょう。…アランにも見習ってほしいものです。」


「アラン君もよく働いてくれているじゃないか。」


「それはそうなのですが…何というか、あの子はあまり積極性がないので。」


そう言って伯爵は苦笑いした。


「しかしアラン君は今回のことを手伝ってくれているだろう?」


「ああ、それは長男が魔法学校の見学で家を不在にしているため、代わりに来てもらったのです。」


それを聞いて公爵は複雑な顔をしたが、チェルシー伯爵はそれにかまわず、


「それはそうと、公爵殿に知らせておかなければいけないことがあります。」


と話題を変えた。


「なんだ?」


「先ほど申しました、魔石の話なのですが…実はあの石を手に入れたのは商人からではないのです。」


「…どういう事だ?」


伯爵は声を落とすと、


「商人から手に入れたことは変わりませんが、正確にはその入手ルートが違います。あの場では言えませんでしたが、実はその入手元は―東の森なのです。」


すると公爵は驚きで目を見開いた。


「なんだって…あの東の森か?」


東の森

ティエラ王国郊外に位置する森で、常に霧が濃く立ち込め視界が悪く、その上危険な魔物が多く住むとても危険な森だ。

どんなに強い騎士も、そこに入れば出てこれないと言われ恐れられている。


「どうしてそんなところから魔石が…」


「それは彼にもわからないそうです。東の森に入り、気が付いた時には大きな魔石の前にいたと。」


「では、まだそこに魔石はあるのか?」


「そのようです。しかし、彼自身もなぜそこにあったのか、どうやって森から出てこれたかはわからないそうです。」


「そうか…」


公爵はしばらく考えるように黙り込んだ。


「まさか、東の森に直接行こうなどと言い出しませんな?」


伯爵は厳しく言った。


「いや。私は息子のためなら何でもする。たとえそれが危険なことであってもな。」


公爵は力強く言うと、立ち上がってドアの方へ歩いて行った。


「とりあえずその商人に話を聞こう。このことは息子たちには決して言わないように。」


そう言うと、公爵は部屋を後にした。

お読みいただきありがとうございます。

また、ブックマーク登録もありがとうございます。励みになります。

ここでお知らせなのですが、六月に入り生活が徐々に元に戻りかけている中、今回のように話が短くなってしまうことが増えるため、安定した文章量を投稿するため、週一回の投稿を検討しております。

読者の方々により良い作品を読んでいただきたいので、投稿回数は少なくなりますが、変わらず応援していただけると嬉しいです。

もし何かアドバイス等ございましたら、感想欄にてお待ちしております。

よろしくお願いいたします。

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