幕間 現代版のようです
登録者50人記念におまけ話を作りました。
「-さん!姉さん起きて!」
シャっとカーテンを開ける音がし、視界が一気に明るくなった。
「ん…何よー…。」
まぶしくて目をこすると、もう朝のようだ。
「おはよう、姉さん。」
「あぁ、おはようクレーヴェル。」
むくりと起き上がり、時計を見るともう8:00だ。
「うわああ!もうこんな時間!」
慌てて起き上がり、バタバタと下へ降りる。
「遅刻する!」
「おーアイリス。ようやく起きたかい?」
父親が新聞を読みながら言った。
「パパ!なんでもっと早く起こしてくれないの!」
「クレーヴェルが何度も起こしに行っただろう?」
「そうだよ。姉さんたら、全然起きないんだもん。」
階段から降りてきたクレーヴェルが言うと、アイリスは頬を膨らませた。
「もっと必死に起こしてよ!」
「そんな無茶な…」
アイリスは冷蔵庫を開けて牛乳を取り出し、コップに入れて一気に飲み干すと、二階へと走る。
「アイリス。今日父さんちょっと遅くなるからな。」
「うんわかったー。」
話半分に階段を上るアイリスに、
「もう昔みたいに寂しがってくれないんだな…」
と父親は悲しそうに新聞をたたんだ。
「父さん…それは八歳のころの話でしょ?」
クレーヴェルが呆れて言った。
「じゃあ、夕飯は冷蔵庫入れておくね。」
「ああ、ありがとう。」
しばらくすると二回からバタバタとアイリスが下りてきた。
「もー。朝食食べ損ねたー!」
アイリスはお弁当をカバンの中に入れると、母の写真に手を合わせた。
「お母さん、行ってくるね。」
クレーヴェルも横で手を合わせる。
「じゃあパパ!行ってくるね!」
「行ってらっしゃい。」
クレーヴェルとともに玄関を抜け、アイリスは駅への道を急いだ。
「明日はもっと早く起こしてよね!朝ごはん食べたいんだから。」
「姉さんそれ昨日も言ってたよね。」
などと話しながら住宅街を進んでいくと、アイリスのお腹がぐう~と鳴った。
「はああ~。お腹すいたよー。」
「もっと早く起きればよかったのに。」
「だって~。」
「どうせまた夜中まで絵描いてたんでしょ?」
「う、そうだけどさ。」
そう言いながら、アイリスの足は駅ではなく隣のコンビニへと吸い寄せられていく。
「ちょ、姉さんどこ行くの!」
「一分で戻るから!」
そう言って、ダッシュでコンビニに駆け込むアイリス。
そしてものの三十秒でコンビニの袋を下げて戻ってきた。
「やっぱり朝ご飯は食べないと!」
満足顔で中から肉まんを取り出してかぶりつく。
「ん~朝から贅沢~。」
そう言って、あっという間にぺろりと平らげ、袋からもう一つ取り出す。
「うわ…朝からよくそんなに食べられるね。」
呆れて言うクレーヴェルに、
「残念!これはあんまんでしたー!」
と自慢げに中を見せる。
「はいはい、そうですか。」
プラットホームに着くと、アイリスは袋を捨てに行った。
もどってくると、クレーヴェルは本を読んでいた。
「それ何の本?」
アイリスが本を覗き込むと、難しそうな字がびっしりと書かれていた。
「うわあ。難しそうな本ね。」
「これは中国の孔子だよ。今度授業でやるんだ。」
「そっか。一年生は漢文をやるんだったね。」
ホームに電車が入ってきた。
「うん。二年生はどこやってるの?」
「私は今「山月記」をやってるのよ。」
「主人公が虎になる話だよね。」
「そうそう。でも、そんな魔法みたいな事ほんとにあるのかしら?」
アイリスは電車に乗り込みながら言った。
いつも通り、乗客はあまりいない。
「昔は今よりそう言う不思議なことが多くあったんだろうね。」
クレーヴェルはページをめくりながら言った。
「そうかもね。」
アイリスは読書の邪魔しては悪いと思い、そう言って窓の外を眺めた。
見慣れた街並みが通り過ぎ、電車は次の駅に到着した。
「アイリス、おはよう!」
「しーちゃん!」
ドアが開くとともに友人のしーちゃんが乗ってくる。
「聞いてー。昨日ゲームコンプしたのー!」
電車に乗るなり嬉しそうに話し始める。
「え、早くない!?それ買ったの一週間前だよね?」
「うちのゲーム愛をなめるなよぉ!」
しーちゃんはふふんと得意げに言った。
「乙女ゲーム限定でしょ?」
アイリスはそう言いながら、しーちゃんのカバンに目を向けた。
「あれ、またストラップ増えてない?」
しーちゃんのカバンには、色々なキャラクターのストラップが付いている。
「あ、わかった?この子が新入り!」
そう言ってしーちゃんは一つのストラップを手に取った。
金髪の髪に、優しそうな水色の瞳が特徴のキャラクターだ。
「あ、これ…」
「誰かさんに似てると思わない~?」
「ほんと。エドワード君にそっくりだね。」
そう言った瞬間、クレーヴェルはがばっと本から顔を上げた。
「ほしかったらあげるよ~?」
それを見て、にやにやしながらアイリスに言うしーちゃん。
「えー。どうしよっかな。」
「だ、駄目だよ姉さん!これは大切なものなんだろうし…」
もらおうか悩むアイリスに、クレーヴェルが焦って言った。
「大丈夫大丈夫。私、それ二つ持ってるし。」
わざとらしい笑顔でしーちゃんは言った。
「どうするー?」
クレーヴェルが無言で見つめる中、アイリスは、
「ありがとう。でもいいかな。しーちゃんが買ったものだし。」
と言った。
ほう、とクレーヴェルが安心した様にため息をつく。
「ちぇ。まあいっか。実物にはいつでも会えるもんね~」
にやにやしながらクレーヴェルの方を見て言うしーちゃん。
「うん。そうね。」
「え、ちょっと姉さんそれどういう―」
「あ、駅着いたよ!」
しーちゃんは笑顔でそう言い、アイリスの手を引いた。
続く?
登録者50人を超えましたこと、ありがとうございます。
皆様に物語を楽しんでいただけるよう、頑張ってまいりたいと思います。