5:チューリップは何色
私が自転車に乗っていた時、自分用のチューリップの球根を一つだけ、パーカーのポケットに入れていて、こっちに転移した時に砕けてしまったけど、緑目ウサギさんがなんかいい感じにしてくれたよ。ウサギさん逹は有能だね。
四匹の黒ウサギを撫でながら、芝の生えてきた地面に座り込んだ。
柔らかい新芽が足をくすぐっている。
水と草木のざわめきが心地よい。
おばあちゃんとお母さんに会えなくなるのは寂しいけど、ここは自分のいる世界だって本能で分かる気がした。そんなことを思いながら、ぼんやりウサギさん逹の作業を見つめた。
水の青目黒ウサギさんは、土の茶目黒ウサギと共同作業で噴水を造ってくれた。
木の緑目黒ウサギさんは、赤いチューリップを整えてくれた。
火の赤目黒ウサギさんは、することないみたいで踊っていた。
四つ脚でお尻フリフリしてるから、猫が獲物を狙ってるみたいだった。
ついでに私も隣でフリフリダンスしておいた。フリフリ。ウサギ尻尾が揺れて結構面白い。
四精霊さんにはお礼のウサギ小屋を建てることにした。
土で砂場トンネルみたいな、ちっちゃいカマクラを。
木で百葉箱みたいな、ちっちゃいログハウスを。
火はキャンプファイヤーみたいな、ちっちゃいカマドを。
水は噴水があるから省略した。チョコレートフォンデュのタワーみたいに水が流れているからそこを住処にすればいいと思った。
くるくるポンッとちっちゃいそれぞれを噴水の周りに造ったら、皆、喜んでくれた。
『『『『おお!我らの祠!』』』』
私もおばあちゃんのチューリップが復活して嬉しい!
チューリップの上に優しい雨が降りますように!
お祈りしている私の周りに薄い霧が広がって、砂漠の空気から草原の空気へ変化した。
おおスゴイ。
ちゃんとおばあちゃんのチューリップも一輪咲いた。赤をベースにキラキラ虹色に輝いていた。
普通なら花がしおれた頃に茎の上部を切るんだけど、球根を休ませてあげたくて茎の上部をパキンと折った。
なんだか、おばあちゃんの優しさと思いやりが詰まってる気がする。
ふわふわホワホワした光がちっちゃな蛍みたいで可愛いな。
うん。おばあちゃん。私、ここでちょっと頑張ってみるよ。
雨を降らすことしかできないけど、まずはこの砂だらけの場所をオアシスにしてみるよ。
おばあちゃんのチューリップと一緒に頑張ってみる。
手のひらの一輪のチューリップ。大事にしよう。
それでこの花で指揮棒みたいな杖作ったら、魔法少女みたいじゃない?って思ったので造ってみた。
ギュッとキラキラが収束して最後にピカッと光ったら、なんだか土産物屋にある、花のついたボールペンみたいになった。
うんこれはこれで競艇場のおじさんの赤ペンのように、耳の上に置けば髪飾みたいでいいか。
近所にあったんだよね競艇場。
なんかでもごめんおばあちゃん。
さてと。衣食住は確保したけど、これからどうしよう?