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3:意味わかんない

 目が覚めた。目の前が茶色だ。いや、こげ茶色?

 青空の下でお昼寝してと思ってたら、木の上でした。何故に?


 上体を起こしてみると、藤の木のようなグネグネした木で、籐で粗めに編んだような床に寝ていた。意味がわからない。


 雨でできた池と、樹はそのままある。違うことは、寝る前に服を埋めた場所から、1cm位の太さの木がグネグネ生えて、絡み合って1m位の高床みたいになっていること。そして、床の上に私が寝ていることだった。


「なんでこうなったの?」

『雨巫女様の衣を授かった大地が、雨巫女様の寝床を創りました』


 独り言のつもりだったけど、精霊さんらしき声が答えてくれた。どこぞの音声検索みたいで意外と便利だわ。


 なんかよくわからないけど、快適環境になるならまぁいいか。

 なんか色々キャパオーバーだし。


「ところで今更なんだけど、私は地球に帰れるの?」

『・・・雨巫女様は、元々この星の方。精霊の主。マナの源でございます』


「そうなんだ・・・?」

『先代の雨巫女様が、三種族の争いからお守りするため、雨巫女様を異界の地へ転移させたのです』


 どうやら先代巫女の時代に、三種族間で巫女の取り合いが勃発。

 大きな争いが起き、互いに有利になるよう魔導具の開発に力を入れ、マナを大量消費し、さらなる自然破壊を招いたらしい。


 この星のエネルギー源はマナなので、自然が減少するとマナが少なくなる。

 マナが少なくなると、更に自然が減少する。


 三種族が急激に文明を発展させた弊害もあり、星の砂漠化が進み、先代巫女はそれを嘆き、全ての力を私に託して地球に転移させたとのこと。


 出生直後に亡くなった【美加】の元へ。


 転移で呼び戻された現在は、地球では神隠しのように失踪したことになるらしい。

 母との関係は良好とはいえなかったけど、今まで育ててきてくれた感謝の気持ちと、寂しい思い、失踪直前までお世話になった祖母に、心配をかけてしまうことに胸が締め付けられるようだった。


「うん。でも。ごめんなさいだけど。寂しいけど。これが運命ならしょうがない」


 ココは私の世界。

 小さな頃から感じた色の違和感も、理解できた。


 いつの日か、美加は元気だよ!って伝えられる手段が見つかるかもしれないし、嘆き悲しんでも変わらない。

 とりあえず、なんか、できることから、やってみよう。


 ーーー


 意味がわからない力があるなら、意味なく使ったっていいじゃない。

 というわけで、雨を降らせてみました。お腹すいたし、食べ物ないし、木の実でも育たないかなと思って。

 なんか範囲指定が必要っぽいんで、面倒くさいので、サッカーコート、二面分ほど。


 その後、エアー種まき。

 まるで節分の豆まき。


「みかん〜レモン〜りんご〜オレンジ〜パイナップル〜マンゴー〜」

 木の実じゃない果物もあるけど気にしない。


「じゃがいも〜トマト〜キャベツ〜きゅうり〜ナス〜」

 最早、果物ですらないけど気にしない。


「お風呂〜温泉〜お家が欲しいな〜」

 すでに無機物だけど関係ない。


 変な節をつけながら、クルクル回転し、ウサギ手袋の人差し指でグルグル渦巻きを空中に描いていて、ふと、気がついた。

 私、一人で踊って歌って変な子だ。


 しばらくの間、羞恥心に悶えることになった。あああああ恥ずかしい。


『雨巫女様。お願いがございます』

「なんでしょう。私は今、羞恥に悶えております」


『巫女様の神秘的な奉納舞で、周辺のマナが活性化しております』

「やめてよ!。傷口に塩を塗らないでよ!」


『私は、巫女様のお力により知恵を得たモノ。どうぞ顕現するお許しを』

「けんげん?」


『受肉でございます』

「生々しいな!」


『お許しを』


 どうやら精霊さんは実体が欲しいらしい。

 私も独りは寂しいのでそれは賛成だよ。

 でも、どんな実体にするかひとしきり悩んだけど、私のセンスは煌めかなかった。


 黒ウサギと白ウサギのどっちがいい?」

『・・・ウサギ?』

「二択だよ!大盤振る舞いじゃん!」


 精霊さんは若干の不満があるようだ。なぜだ! ウサギ可愛いじゃん! しかも二択だよ? 贅沢だな!


『・・・』

「はい。時間切れ。私の独断で黒ウサギに決定」


「出でよ黒ウサギ!」


 人差し指をくるりと回して願ってみたら、キラキラポンッと目の前に黒い物体が現れた。

 ああ!ふかふか滑らかな毛並みの黒ウサギが現れた!

 可愛い。抱っこできるにゃんこサイズだわ。

 しかも、瞳が青い。なんて可愛いのかしら。


『雨巫女様、感謝いたします』


 言葉遣いと見た目の違和感、ハンパないね!


 黒ウサギさんと話をしてみると、水の精霊とわかった。だから瞳が青いのかぁと納得したけど、ウサギが水の中をパシャパシャ泳ぐ姿を想像したら、なんか違うと思った。


 しばらく黒ウサギさんと戯れた後、エアー種まきの場所を確認してみると、なんということでしょう。

 サッカーコート、二面分の森の中に、ちょこんとお家が建ってました。

 わあ池の畔の森の一軒家だね。ログハウス。ワンルームサイズだけど。


 いくらなんでも、ちょっと意味わかんない。


 後、人参を植え忘れたので黒ウサギさんに怒られました。だけどキャベツがあるので許してもらえました。


 でも精霊なんだから、食べなくても良くない? と思ってしまった。 やっぱり意味がわからないや。



 。

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