11:雨巫女は大人になる
雨巫女が沢山の思いを込めて祈りを捧げると、周りの精霊達がキラキラ喜ぶ。
そしておばあちゃんの赤いチューリップもキラキラ輝く。
地球のお母さん、おばあちゃん、私は元気にしているよ。どうかチューリップを通じて雨の優しさが届きますように。
この召喚で、たった一つのチューリップを持ってこれたのも運命かもしれない。
おばあちゃんの気持ちかもしれない。
チューリップは何処かの国で、頭巾が語源って教えてもらったことがある。
きっとこの暑い砂漠で、私が困らない様にしてくれたんだね。
チューリップの花言葉はいろいろあるけど、赤色は真実の愛。
きっとこの暑い砂漠で、私が精霊達を守れるようにしてくれたんだね。
深い祈りを捧げた後、マナが満ちていることに気がついた巫女は元黒ウサギの水の精霊に聞いてみた。
「私、元の姿に戻れるんじゃない?」
「はい。可能でございます。
ですが、御髪と瞳の色は元々そのお色。
召喚でご負担がかかった肉体に戻すのは、少しばかり力が必要でございます」
「そうなんだ。でも身長は戻せるよね?」
「はい。それは可能でございます」
「そっか、頑張ってみる」
元の姿に戻りたい。強い祈りを込めて雨巫女は祈った。
チューリップの杖を両手で天に掲げ、強く願った。
そして今までで一番大きな光の渦が、雨巫女を包み光り輝いた。
光の奔流が消えたとき、そこに黒々とした髪が腰まである、黒い瞳の美加が立っていた。
服は地球にいたときにお気に入りだったモスグリーンのワンピース。
少し長めの袖がフワッと膨らんだパフスリーブで、襟や裾、袖口についた白いレースがお気に入りだった。
15才の誕生日に、祖母と母からプレゼントされた特別な服だ。
「どう?似合う?」
くるりと回る雨巫女の黒髪やスカートがふわりと広がり、精霊の光が舞い踊った。
「雨巫女様お似合いでございます」
「これでまた雨を降らして精霊を助けられるよ」
微笑む水の精霊の瞳は優しかった。
しばらくの間、雨巫女はくるりくるりと楽しそうに回っていた。
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三種族を行き来する商人に、オアシスの雨巫女が噂されるようになった頃、各上層部もマナの広がりを感じ取っていた。
雨巫女が姿形を変えるために膨大な力を使ったことにより、砂漠のオアシスが特定されたのだ。
「特定できたぞ。至急、雨巫女様を保護する人員を送れ」
各種族は軍の精鋭をそれぞれ送り込んだ。




