5年前
♢とある街 酒場にて♢
「たっくよぉ~!!あの斧振り回す化けもんが出てこなけりゃあ、もっとかせげたかもしんねぇのによぉ~!!!」
「今日はやけ酒だ~!!!」
隣の席で騒いでいる4人組ののんだくれ達。
斧を振り回す化け物というのはミノタウロスの事だ。
「あのぉ~お客様。周りのお客様の迷惑になりますのであまり大きな声は出さないで下さいますか…?」
酒場の定員が隣の席ののんだくれ共に言う。
周りの他の客も迷惑しているようで4人組をチラチラと見ている。
「ああぁん!?うっせなぁ~!!金は払うって言ってんだろ!?酒がまずくなるじゃねぇか!!」
のんだくれのパーティーのリーダーだろうか。大きな声を張り上げて定員を黙らせる。
「酒がまずくなるねぇ。その言葉そっくりそのままお返しするよデカ物。」
俺は隣で話の一部始終を聞き終えてガタリと席を立ちデカ物の肩にポンッと手を置いた。
「あん?んだァてめぇ。」
デカ物も立ち上がって上から睨みつけてくる。身長はおよそ2倍、体格はひょろひょろの俺に比べてデカ物は筋肉ムキムキだ。
「おいチビ。ここは酒場だぜぇ?てめぇみてぇな野郎がいるような場所じゃねぇぞ馬鹿が!!」
デカ物はそう言うと仲間と一緒に俺を大笑いした。周りの客も多少苦笑しているようだが定員は怯えきって床に転がっている。どうやら定員は俺が誰か気づいたみたいだ。
「外に出ろよ。ここじゃあ店が壊れるからな。」
「ああいいぜ?てめぇを空の彼方へぶっ飛ばしてやるよ!」
店の外に出ると野次馬がゾロゾロとやって来て、ヒューヒューと歓声を飛ばしてくる。
デカ物は肩をグルングルンとまわし手をバキバキと音を鳴らす。余裕そうな顔をして俺をビビらせようとしているようだ。
「観客の皆さんあと2メートル。いや3メートルぐらいは下がった方がいいですよ。そんじゃあ始めるぜ。ほらデカ物?かかってこいよ」
「ふーん?良いのか?まっ聞くまでもねぇ……かっ!!」
俺の顔面めがけて奴の拳が振り落とされる。その拳は見事あたって突風を巻き起こした。
「はっ!ざまぁねえなぁ!!俺らの親分に喧嘩売るなんて自業自得だな!」
「なんだよ。もう終わりか?つまらないな。」
突風が止まりざわめく観客たちの目に衝撃的なものが写った。デカ物の拳は隣のチビの顔面スレスレで片手によって止められており、フードで隠れていた顔が露になっていた。
「なっ!まさか……親分の拳を片手で……!?」
「おい。あの顔ってまさか!」
「やっと気づいたかデカ物。俺の名はアンノルフ。史上最強の男だ……!!」