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ちびドールさん罠を張る

「というわけで捕まえました。」


「ぅ!!ぬぅー!んうーー!!」

あっさりと捕まったドールちゃんは、今はルインに捕まってジタバタ暴れていた。

しかし脇の下をもって宙ぶらりんなので脱出は困難そうだった。


「ど、ドールちゃん。私と契約を……」


早速フローネは契約魔法を唱えるが、


「んな!!」

と拒否して軟体動物のように体をくねらせ、ついにルインの捕縛から抜け出してしまった。


「ああ!!」


しかし、逃げ出した後は、さっきまで隠れていた岩の陰にまた潜りで行くのだった。


「あれ?逃げていかないのかな?」

「多分これに未練があるんじゃないのかな?」


そういてリューナが持ち上げて見せたのは例のお菓子の入った袋だった。

まだいっぱいあるのだった。


それを岩陰から覗くドールちゃん!


まだいっぱいあるのだった!!


とはいえ、さすがに警戒したのか、投げたお菓子には飛びつこうとはしなかった。


しかし逃げる気配もないようなので、とりあえず四人はシートの上に戻って作戦会議をすることにしたのだった。

幸いこの部屋の出口はドールちゃんよりもこちら側にあるので、いつの間にかいなくなっていたというのはないだろう。


「どうしよう。契約拒否されちゃった。」

「いや、無理に捕まえたらそうなるだろう。」

「お互いが望まないと、無理やりはできないよ?」

「でも私あの子がいいなぁ。」

「もう一回捕まえられるかな?正直あの子ちょろそうなんだけど。」

「ええ……いや、まあうん。……ん?」


ふと後ろを見ると、ドールちゃんがお菓子を拾っていた。どうやらこちらがすでに見ていないと判断して動き出したようだ。


「なんかどうとでもできそうな気がしてきたね。」





四人が見て見ぬふりを続けていると、ドールちゃんは四人の方を伺った後、なぜか先ほどの罠の方に近づいていった。

当然気が付いている四人が何をする気なのかとみていると、籠を持ち上げてつっかえ棒をいれなおし、

中に何かをざらざらと撒いていた。


「なんだ?あれ」

「なんだろう。」


そしてその何かを一つずつ点々と並べながらこちらに近づいてくる。

背中を向けながら


「む。む。む。」


(もしかして私たちの罠を真似してる?)

(みたいだな。)

(ていうか隙だらけなんですけどっ)


リューナが吹き出しそうになっている。

必死に何かを並べながらこちらに近づいているが、完全に背中をこちらに向けているのでその気になったらすぐにでも捕まえられそうだった。


そして四人のすぐ近くまでお尻を向けながら何かを並び終えた後は、元の岩陰まで ててて、と駆けていった。


「仕掛け終わったみたいだな。」

「何撒いてたんだろ。」


ライルが近くに並べてあるそれを拾い上げた。


「っておい!これ小粒の宝石だぞ」

「うええ!!」

「うそ!」

「じゃあ、今点々と並んでるのって、全部そうなの?」


思わずごくりと喉が鳴る一同。


「あ、そっか。多分あの子さっきライルが宝石拾ったところ見てたんだよ。」

「あーそれで餌にできるって考えたのか。」

「あの子もこのダンジョンの中で集めてたのかな?」





とりあえず罠に引っかかってみることにした。

ライルは、点々と置かれている宝石を拾いながらゆっくり罠の方向へ近づいていく。

するとドールちゃんが顔を岩の陰からライルの伺っている。

ていうかライルの方向からは隠れられているのかもしれないけど、シートに座っている三人からは丸見えなのは気が付いていないようだ。


ライルが次々と宝石を拾っていくたびに、物陰で口元を抑えてクスクスと笑いをこらえている。

そしてついにライルが罠の目前まで到達した。


どう考えても籠はライルの入るほど大きくないのだが、それ以前に、

籠を落とすためのひもは未だにルインの手元につながっているのはどう考えているんだろう。

多分何も考えていないんだろう。


ついに籠の中以外の宝石を全部拾い終わったライル。

この後どうするのか特に考えてなかったが……


おもむろに手に山になっている宝石を籠の中に放り込んでシートの方に引き返した。


「あーーーーー!!」


それを見たドールちゃんは、引っかからなかったうえに折角並べた宝石を台無しにされたことにショックを受けたようで、物陰から飛び出して罠の方へ駆けて行った。


「もぉーーー!んもぉーーー!」


ぷんすこぷんすこ言いながら罠に駆け寄ったドールちゃんは、もう一度並べるために宝石を取り出そうとする。


「んもぉーー(カタン)!!っ~ーーー・・!!」(ジタバタ)


「あ、つい」

紐を引いてしまったルインは多分悪くない。




「ほーら、怖くないよ。おいで」

四人に囲まれてしまったために逃げられないと悟ったドールちゃんは、それでも野生動物のように警戒しているようだった。


「ぅん~~~!!」

「やーん!せいいっぱい威嚇してる。かわいい!」


一目見た時からかわいさにやられているフローネはもうデレデレだった。


「でもどうしようか。このままじゃ契約してくれそうにないけど。」

「やっぱりこれでしょ?はいフローネ、お菓子」


そう言ってリューナはお菓子の袋をフローネに手渡した。


とりあえず一つ手に取って差し出してみる。


「う?」

「ほら~お菓子だよ。ドールちゃん好きだよね?」

「ぬ、むぅ」


ドールちゃんはじりじりと差し出されたお菓子に近づいて、素早くさっとお菓子だけをとるとまた離れていった。


そこでリューナがすかさず


「ドールちゃん。もいっこくれるって」

と言ってフローネの方を指さす。


「う?」

振り返るともう一つお菓子を差し出しているフローネ。

しばらくフローネからお菓子を受け取っては離れてを繰り返すことになる。



五分後

そこにはフローネの目の前でお菓子をポリポリ食べながら都度手をお菓子に伸ばすドールちゃんの姿が!!



さらに五分後

もうすでにフローネの膝の上でお菓子をポリポリしているドールちゃんの姿が!!



またさらに五分後

親に餌をもらうひな鳥のごとく、上に向かって口を開けてお菓子を放り込んでもらうドールちゃんの(ry



そして現在。

ドールちゃんは満腹になったらしくフローネの膝の上で体を投げ出すようにぐっすりと眠っていた。


もうさっき野生動物がどうこう言ったが取り消させてもらおうと思う。

飼い猫ですらもうちょっと警戒心があると思うね。


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