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ちびドールさんお菓子で引っかかる

フローネたち四人(と三匹の使い魔)は、倒したゴブリンたちを道の端によけながらダンジョンの入り口を眺めていた。


「もうこんなにゴブリンがわいてやがる。」

「こいつら少しでも住処にできそうな場所があると、すぐに集まってくるからね。」

「もう中にも入り込んでるのかな?」

「ゴーレム系だと無害化したら全く動かなくなっちゃうのも少なくないらしいからね。

いいように住み着かれているかも」


「もう!そんなゴブリンなんてどうでもいいよ。早くしないとジュエルゴーレムがどこか行ったらどうするの」

「いや、中にいたら面倒じゃん」

「いるなら入り口にゴブリントーチが立ってるはず。それがないならいたとしても大した数じゃないから警戒しながら行けばいいの。」

「まあ、使い魔たちがいれば奇襲もされないだろうけどもね。」


入り口の前でまごつく三人に対してそわそわと落ち着きのないフローネ

彼女にせかされて彼らはダンジョンに入っていくのだった。


「そういえば、ジュエルゴーレムがいるかも(・・ )なのはなんで?」


指先でパフ君と遊びながら疑問を口にするリューナに、あらかじめライロから話を聞いていたルインが答える。


「直接見たわけじゃないらしいんだけど、このダンジョンの規模の割には手に入ったお宝が多かったらしいんだ、さらに結構な量の宝石が転がってたりしてて、これはいるぞ。てことらしいよ。」

「そうなんだ。じゃあいない可能性もあるんだね?」


道の端にじっとしているゴーレムを横目にしながらダンジョンの奥に進む一行。

少し脇道があったが、奥に進む道以外にそれた通路の先には小部屋があるだけで、入り組んではいないようだった。

そんななのであっという間にダンジョンの最奥にまでたどり着いてしまった。


「……いないじゃん。」

「かもって言っただろ?」


ジュエルゴーレムは、普通のゴーレムよりは小さいらしいがそれでも人間並みの大きさがあるらしいので、ここまでに覗いてきた小部屋にもいなかった以上見逃したとは思えなかった。


「うう~私のジュエルゴーレムちゃん……」

「いないものはしょうがないだろ。もうそのあたりのゴーレムと契約して帰るしかないんじゃないのか?」

「一度夢見たものが輝きすぎて……落差がひどいなぁ」


もしもジュエルゴーレムを使い魔にできたら、定期的に生み出してくれる宝石だけで生活に困らなくなっただろう。ただでさえ現在金欠中のフローネには、その夢はあきらめがたかった。

しかも、ゴーレムなら自然に生まれることもあるが、ジュエルゴーレムはダンジョンでしか生まれないレア魔物なのだ。

「まあ、帰る前にちょっと休憩してから帰ろうぜ。」

「あ、私お菓子持ってきてるんだ」

最奥の部屋にシートを広げだすルインとそこにボーロのようなお菓子を並べていくリューナはまるでピクニック気分だった。


「……私にもちょうだいリューナ。」

「いいよ。はい」

そう言って一袋丸々差し出すリューナ。

彼女のカバンには同じ袋がまだいくつも入っていた。何しに来たんだこの人……


「それにしても、ならなんでこのダンジョンはそんなに宝石があったんだろ。」

「もしかしたらジュエルゴーレムはいたけど砕けちまって、その破片だったりして……ん?」


ライロが何かに気が付いて砕けた石の中をあさる。するとそれなりの大きさの赤く輝く宝石を拾い上げた。


「うおぉ!!ラッキー」

「ええ?それってもしかして。」

「拾い忘れかな?まあ、今日はこれを拾えただけでも儲けだな。」

「や、山分けだからね。」

「はいはい、わかってるよ。」


みんな懐事情はよくないので、独り占めなんてしたら刺されかねなかった。


思わぬラッキーのおかげで少し気分が上向きになったフローネは、ゴーレムでもまあいいかといった気分になっていた。

そんな彼女を見て、ここに誘ったライルも少しほっとしていた。

向こうからはライバルとしか見られていないようだが、ライルはできれば仲良く(・・・ )なりたいと思っていたりするのだった。


四人でポリポリとリューナの持ってきたお菓子をつまんでいると、ふとフローネは視線を感じた。

そちらに目を向けるが、ちょうどいくつかの岩が崩れているように落ちている場所で、こちらからはみえない。


「ねぇ、何かいるかも……」

「うん?僕のウォルフは反応してないけど?」


ちなみにルインの使い魔はフォレストウルフと呼ばれる小型の狼の魔物だ。

名前は適当過ぎる気がするが、鼻がいいので何かが近くにいるならわかるはずだった。


「そうはいってもゴーレムなら匂いじゃわからないんじゃないのか?」

「!!ってことはジュエルゴーレム?」

「いや、あんなところに隠れられるほど小さくないだろ。」


三人であーでもないこーでもないと言っていると、不意にリューナがお菓子を一つ岩に向かって投げ込んだ。


「「「あ」」」


お菓子はなかなかのコントロールで飛んでいき、岩のすぐそばに落ちた。

すると、そろそろと岩の陰から小さな何かが少し体をのぞかせて、シュッと落ちたお菓子を拾ってまた隠れていった。


「……今の見えた?」

「いや、一瞬だったから。でも……あれって」

「子供の腕だった、ような?」

「もっかいやってみたらわかるよ。えい!」


混乱している三人をよそに、リューナはひょいひょいお菓子を同じように投げ込む。

そのたびに素早く拾っていくそれは、やはり小さな子供の手のように見えた。


「でも、子供ならウォルフが気が付かないことはないと思うんだけど。」

「ええ?じゃあゴーレムなの?」


少しづつ離れた場所にお菓子を投げていくリューナ

ついに隠れることをやめて岩陰を出てきてお菓子を拾うその姿は。


「「女の子?」」

「わ~かわいい」


プラチナブロンドの長い髪を黒字に金のヘッドドレスでとめ、同じデザインのゴスロリ衣装に身を包んだその少女は空の色を溶かし込んだような大きな目をきょろきょろとせわしなく動かしながら落ちているお菓子を探している。

その顔はまさにお人形の様という表現がぴったりで……?


「ていうかあれリビングドールじゃねえの?」

「「ああ!」」


それは確かにゴーレム系列の魔物で、しかし普通のゴーレムとは違い精霊が宿っているなどと言われるほど

しっかりとした自我を持っている。ジュエルゴーレムに負けないくらいレアな魔物だった。

しかも、その力は精霊その物や、宿る人形の出来に上下され、同じリビングドールでも天と地ほどの差があることでも知られている。

それでみると、まるで少女と見間違うほどの精巧さなそのドールは、手首などに見られる球体関節に気が付かなければそうと分からないほどのクオリティなのが分かった。


(これはまさかのあたりなんじゃねぇの?)


そう思って隣のフローネに視線を向けるライル。

そのフローネは。先ほどドールが姿を現した時から一言も発さずに目を皿のようにしてドールを見つめていた。


「……に、する」

「え?なに」

「あの子にするって言ったの!!」

「わぁ!いきなりでかい声出すなって」


幸いお菓子に夢中なドールは先ほどの大声にもさほど反応を示さなかった。


「まあ、そう来るだろうと思ったけどな。」

「ああ、かわいいなぁねぇあれかわいいよね。あの子がいいなぁ」

「わかったから落ち着いて。」

「じゃあ、契約魔法をかけないといけないんだけど、割と警戒されてるからまずは捕まえないと。」


もうお菓子はないと確認したドールは、手にお菓子を乗せたまままた岩陰にシュッと隠れてしまった。


「ていうか食べるのかな?」

「食べるんじゃない?」






ドールちゃん捕獲作戦その1


お菓子で釣ってみよう。


「お菓子を投げたら寄ってくるのは解ってるんだから、それを利用すればいいんじゃない?」

というルインの発案で罠が用意された。

材料は、木の枝、紐、大きな籠、あとお菓子、以上である。


「いやいやいやいや!」

「これ知ってる、小鳥とか捕まえる奴だ。」

「ていうか籠よくあったね」


本作戦を不安視する声も出たが、とりあえずということで実行してみた。



まずは適当にドールちゃん周辺にお菓子を投げ込み、そちらに夢中なうちに罠を組み立てる。

そして点々とお菓子を順番に並べて籠へ誘導するようにできたら準備完了だった。

さてどうなる。


「ん?む……む……ん!」


ドールちゃんは自分の周りのお菓子をすべて拾い切ってポケットに詰めたのち、少し離れたところにあるお菓子に気が付いたようだ。


「む。む。む。」


妙な掛け声(?)を上げつつ一つ拾っては次のお菓子を見つけて駆け寄っていく。その目は宝物を見つけた子供のようにキラキラ輝いているようだった。


「む。む。む。む。(カタン)!!っ~ーーー・・!!」(ジタバタ)


まさかの一発成功だった。

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