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ちびドールさん目を覚ます

他の作品の続きが何故か書けなかったので、いったんこっちを書いてみました。

ある浅いダンジョンで、そこを支配していた魔物が何者かによって倒された。

その瞬間、そのダンジョンの中に残っていた魔物たちは、支配者から解放され、これまでの朦朧とした意識しかない世界から解放されたのであった。


その小さな魔物も、そんな中の一つだった。



「……ぅん?」


それは、今まで運んでいた石を足元におろした。

自分がなぜそれを運んでいたのか、それどころかどこに持って行こうとしていたのかが、突然わからなくなってしまったからだ。

さらに、自分を支配し、命令を与えていた何者かの干渉を感じなくなり、生まれて初めて感じる自由に戸惑ってもいた。


そう……自由だ。

だが、自由になったとして、それは自分がどうすればいいのかわからなくなってしまった。

ふと周りをみわたすと、おそらく自分と同じ境遇だと思われる者たちが呆然と座り込んでいた。


いきなり自由なんてものを渡されても、自分たちは困ってしまうじゃないかと憤り、文句の一つでも言いに行ってみようかと、これまでの支配者がいたはずのこのダンジョンの奥へ進むことにした。


自由を持っていなかったとしても、ここで発生してから今まで過ごしてきたのだ。このダンジョンの構造など知っている。



このダンジョンは、小さなものなので、ここからでも最下層はすぐだ。

どうにも歩きにくいでこぼこした道をどうにかこうにか進んでいくと、見たことのある……おそらくは自分と同じくここのマスターの配下だったであろう同僚が同じ道に合流してきた。

そいつは、小さな自分とと比べるととても大きくごつごつとした奴だった。

確かに知り合いのはずなのだが、意思の疎通などしたことがあるはずもない。

コミュニケーションをとってみようかとも思ったが、言葉すら操ったことのない自分たちにはそれもむずかしかった。

しかし、なんとなく彼もまた、自分と同じようにマスターのところへ向かおうとしているのだろうとおもえた。

お互い、なんとなく視線を交わしていたが、ふとそいつは視線を道の先に向け、こちらには興味がないとでも言わんばかりに歩き出して行ってしまった。


……連れて行ってくれてもいくない?


乗り物を手に入れそびれてしまったが、まあ、それも仕方ないとまたそれもせっせと道を進むのであった。






「ここのダンジョン、浅かった割にはマスター強くなかったか?」

「まあ、確かにね。でも、お宝もそれなりにいいものがおおかったね。」

「この宝石とかなかなかな大きさじゃない?かなりの値が付きそうね。」


彼らは冒険者だった。

つい先ほどここのダンジョンマスターを討伐し、ため込んでいたお宝をいただいてきた帰りだった。

魔物というやつは、力を持つとモンスターネストとか言うスキルを手に入れ、気が付いたらそれを使ってそこらにポコポコダンジョンを作るから厄介だ。

しかもダンジョンからはさらに魔物が生まれるというから始末に負えない。


とはいえ、マスターの倒されたダンジョンは、なかなかにおいしい資源を生み出す。

マスターの死亡と同時に住んでいる魔物たちは無害化し、ダンジョンの再生能力が尽きるまでは

ダンジョン内の資源などは取り放題になるのだ。

このダンジョンも、そういった採掘場になる予定で、無害化に成功した冒険者たちには、以降の採掘利益に対して国からマージンがもらえるようになるので一角千金を夢見る冒険者は多い。


それらの利益に脳内でそろばんをはじきながら帰り道を急いでいると、目の前の曲がり角から ぬぅ っと

ゴーレムが姿を現した。


「っ!!うわぁ!」


別に襲い掛かられたわけではないが、いきなりの遭遇に驚いた冒険者の男は思わずそのゴーレムにもっていた武器をたたきつけた。

哀れにも彼らを驚かせてしまったゴーレムは、その一撃を躱すことが出来ず、吹き飛ばされて体を砕かれてしまった。


「ああ!しまった。」

「何をやってるんですか。折角の無害化した魔物を。彼らも大切な資源(・・ )だというのに……」

「すまねぇ。つい……」

「うわ~……ここが魔法生物(ゴーレム )系のダンジョンでよかったわね。普通の魔物だったら罪悪感が……」

「もしかしたら使い魔にできたかもと思うと、ゴーレムでももったいないと思いますがね。」

「言わんでくれよ。」


少し帰り道の途中でアクシデントがあったものの、大きな仕事を終わらせたばかりの彼らはそれほど気にすることもなくそのまま帰り道を急ぐのであった。

その道の隅、転がった岩の陰にいた小さな魔物には、どうやら気が付かなかったようだが。




それは、去っていく三つの人影をこっそり見送っていた。

先ほど自分と遭遇した同僚が、角を曲がろうとしたとたんに吹き飛ばされ、動かなくなったことに驚き、

さらにその吹き飛ばした何かが角を曲がってくるのを知って、とっさに物陰に隠れたのだがどうやらうまくやり過ごすことができたようだ。

人影はそのまま自分の横を通り過ぎ、今まで歩いてきた道を戻る方向に、つまりは出口に向かって歩いていく。


自分よりもはるかに大きな同僚を一撃で吹き飛ばしたそれらは、小さな自分にはとても恐ろしく思えた。

あの人影のような存在が、時々このダンジョンに侵入してきていたのは知っていたし、同僚たちが追い払うためにマスターに戦わされていたことも知っていたが、自由になってからそれを見たのは初めてだった。

そもそも自分は、それらと戦わされることはなかったので、もし見つかっていたら抵抗すらできずに同僚と同じ末路をたどっていたかもしれない。

背筋に冷たいものを感じながら人影を見送っていると、彼らが突然立ち止まり、何かを拾って騒ぎ出した。

何かに喜んでいるようだが、よく見るとそれらは先ほどまで自分が運んでいた石を拾って騒いでいるようだ。

確かに石の中ではきれいなものだったようだが、あんなものを喜ぶなんて変な奴らなのかな?なんて思いながら、彼らが去ったあとその辺りに転がっていた灰色の石ころをひょいと拾うと、

うりゃ!!と気合を入れてその石に力を注ぎ込んだ。

すると、灰色の石ころだったものは、先ほどの人影たちが喜んで拾っていたのと同じようなきらきらと輝く石ころ(・・・)に変化していた。


こんなものをわざわざ喜ぶなんて、変わった奴らだなと思いつつ、手にしたそれを無造作にぽいと放り投げ、とりあえずマスターがいるはずの場所を目指して進んでいくのだった。

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