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もやし系竜人の僕は。  作者: 森マッコリ
9/9

雪遊び

私の住んでいるところは太平洋側なので雪はあんまり降らないんですよねー。

 [ルルルンパ、ルンパー]


 [……ホントに歌が好きなんだねえ。それっ]


 [えー、だって楽しいじゃない?おうた。よいしょ]


 [ちっくしょー、やっぱ当んないなあ]


 [ふっふっふ、僕に球をあてることなど100年早い……うわっ、わぶっ!]


 いい気になっていた僕の口に雪玉がヒットした。ぺっぺっ。ひゃーびっくりしたあ。


 [よそ見は禁物だぞ、ラウル]


 そういってカッコよさ全開なのは我らが姉貴、フェリオ姐さんだ。


 僕が目を覚ましてから少し経って、竜の島は本格的な冬に突入した。しばらくものすごい吹雪で外へ出れなかったんだけど、今日は久しぶりの青空が広がっていた。すぐさま外へ出ようとしたんだけど戸口は完全に雪で埋まって出れず、二階の窓から外に出れば一面の銀世界。飛び降りればぼすーっと体が全部雪に埋もれてしまった。


 それから何とか脱出して、空から辺りを見ればみんなの家がちょこちょこと雪の上に見える状態で、しばらく誰もいない真っ白な村を飛び回っていたらしだいに皆も外へ出てきた。みんな集まればやることは同じ。雪の掛け合いから始まって、いつの間にか雪合戦をすることになっていたんだ。


 バビュン、ドスッ


 [うぎゃあ]


 皆とんでもない大玉をすごい勢いで投げつけてくる。そんなのが当たれば皆体勢を崩して、雪の中に埋まっていってしまった。眼下の景色はドラゴン型の穴でいっぱいだ。


 [えいやっ]


 僕だって負けないよ!前世から雪は大好きなんだ。おじさんでも雪見ればはしゃぐんだよ。それに僕は水魔法の使い手だ。川を泳いでいるときほどじゃあないけれど、雪を触ってるとエネルギーがわいてくる!


 僕の作ったトンデモビッグサイズの雪玉。たぶん僕の体の3倍はあるだろうその玉を、風の勢いにも乗せてブン投げた。


 [わあああああああ]


 [ちょ、え、おわああああああ]


 目の前にいたドラゴン4匹を一掃した。ふふー!どうだ、まいったか!


 と、腰ふりダンスを空中でしていたら、顔面のすぐ隣を特大玉が通り過ぎて行った。


 [わわわっあっぶな……]


 [チッ]


 舌打ちをしてご機嫌斜めなのはエレク。エレクはさっきから一回も球が当たっていないんだ。


 [まあまあ、もうちょっと落ち着いてればいつかは当たるよ]


 [うっせ]


 そういってうつむいてしまったエレク。ええ……どうしよう。もしかして泣いちゃった……?そう思った時だった。エレクがいきなりバッと正面を向いて臨戦態勢を取ったかと思うと、


 [こうなったらてめえら全員撃ち落としてやる!]


 そして球を作っては投げ作っては投げ、ランダム放射し始めた。玉は今までのに比べて小さいものの、ものすごい厚がかけられて氷の塊と化していた。それがびゅんびゅん飛んでくる!もはやエレクは雪玉製造マシーンとなっていた。高速で投げられる大量の玉で姿もおぼろげにしか見えない。


 [ぎゃあああエレク、いたいよ、いたたたっ]


 [あたたた、ってうわっ!へぶう]


 [ちょ、一回やめ、うわああああ]


 繰り出される球の攻撃に打たれて皆次々と雪のクッションの中へと墜落して行った。僕も粘ったんだけど、翼を打たれてバランスを崩してしまった。


 ぼすん


 目を開ければ、周りは真っ白な壁。こうなってしまえば出るのはとっても一苦労だ。しばらくもがいて脱出してみようとはしたけれど、疲れてその場に制止した。上には青い青い、空。そして聞こえてくるのはエレクの勝ち誇った雄叫び。どうやら全員雪送りにしたようだ。


 ひんやりとしたこの場所で、思い返すのはあの楽しかったパーティーのこと。あれは本当に楽しかったなあ。


 机に並んだのはホッカホカのプルコ鳥の丸焼き。切り分ければ、切断面からこぼれでる肉汁とともにもわあっと湯気が立ち上る。その隣に並ぶは鹿のもも肉。皮をむいただけの加熱も一切していないそれに、荒く砕いた黒こしょうをかけて、ガブリ。

 

 ああ、それからあっつあつのスープはじゃがいも、玉ねぎ、にんじん。たっぷりの根菜とベーコンの入った、トマトの旨味たっぷりミネストローネ。エレクの所の畑で採れた、パリパリのトルコスっていう栄養満点の野菜を使ったサラダには、僕の庭にある木の一つからとった、バコレっていうスパイスをふんだんに使ったドレッシングがかけられた。


 それと、忘れちゃいけないのはデザートだ。北の集落の栄養満点の乳から作られた濃厚な生クリームから、土台のスポンジにまでオレンジピールのたっぷり入ったオレンジケーキ。上の飾りにも薄皮を向いたオレンジの果肉が、ドカンとあふれんばかりに乗る。そこへ甘い砂糖のシロップをかけて、いただきます。





 全部全部おいしかった。文句のつけようなんてこれっぽちもなかった。みんな笑顔で楽しそうに笑ってて、そして思った。


 あ、僕今幸せだなぁ


 って。


 その後お開きになったパーティ。僕はエレクを連れて外へ行った。母さんたちには適当に散歩に行くと伝えた。西の集落の三分の二を占める、うっそうとした雑木林を超えてついた先は一軒の家屋。


 「ごめんください」


 少しの間を経て扉から顔を出したのは、とっても高齢に見えるおじいさん。


 「近いうちに来るのではないかと思っておったよ。さあ、お入り」


 僕らがやってきたのは今、竜の島で最も長生きをしているおじいさん、”長老”の家。そう、あの日ティラノサウルスに蹴られたおじいさんだ。


 「外は冷えたじゃろう?今、茶を出すから待っておれ」


 いそいそと奥へ引っ込んで行く長老をしり目に、部屋を見渡せば何とも不思議な光景だった。


 壁は一面すごい数の本で埋め尽くされている。この世界には印刷術はあるものの、そのもととなる本は全て手書きでできているためかなり高い。そんな本たちが、壁いっぱい。

 それから床に所狭しと並べられているのは様々な置物たち。高価そうな魔法道具から、何に使うのかよく分からないツボまで種類は様々だ。

 壁にはここらじゃ見かけない魔物の首の剥製が並ぶ。どれをとっても凶悪そうな顔をしていて、それぞれがとんでもない強さの魔物だったんだとうかがえた。


 案内された柔らかい革張りのソファに座りながら、エレクと一言もしゃべらずにきょろきょろしていたら、いきなり背後から笑い声がした。


 「ふぉふぉふぉ、そんな固くならずと気軽にせい」


 「「!?」」


 びっくりした。背後に立たれた気配が全くしなかったんだ。隣を見れば、エレクもどうやら気づけなかったらしい。目を見開いて長老を見つめていた。


 「おお、すまんすまん、驚かしてしまったようじゃのう。気配を消すのはもう癖のようなもんじゃて……」


 そういって座った長老から、とてつもなく巨大な存在感が生まれた。竜族特有の気配だけれど、その大きさがとてつもない。長く生きた竜族だけが持てる気配だ。


 それにまた驚いていると、長老はまた楽しそうに笑った。


 「ふぉふぉふぉふぉ、お主らはほんに面白いのぉ。……さて、お主らは儂に効きたいことがあるのじゃろう?申してみよ」


 途端に空気がピリッと引き締まった。


 「はい。それなんですが、先日のあの事件のことです。赤い魔物がは僕らを先導者と呼び、貴方はそれを否定しなかったこと」


 「俺たちは真実が知りたい。どうか教えてください」


 長老の目をしっかり見据えて言った。思ったよりも厳しい視線に内心怖気づきながらも絶えること、たっぷり五分間。大きなカップヌードルが出来ちゃうね。


 やがて長老はふう、と吐息をつくと口を開いた。


 「……仕方あるまい。本当は成竜の儀を終えるまでは話さないつもりじゃったのじゃが……まあ今日お主らがここへ訪れた時点でこれが目当てだったことは、大かた予想はついていた……」


 長老は、下に落としていた目線を僕らの方へきっと戻すとこう言った。


 「今から話すことは、島の子らや外の者には他言無用じゃ。いいか、決して口にする出ないぞ?」


 「「はい」」


 そして長老の口から発せられた言葉の数々は、僕たちには予想もできなかったものばかりだったんだ。






 古木の集う森の最奥、最も歳を重ねた老竜の語り


 それは


 とても

今の時点ではここまでです。お読みくださり、ありがとうございました。

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