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もやし系竜人の僕は。  作者: 森マッコリ
8/9

目が覚めて

朝はやっぱり5度寝ですよね。12時までは寝ます。(休日)

 チュンチュンと鳴く、かわいらしい鳥の声で目を覚ました。風が今日もさわやかだ。

首を持ち上げて大きな欠伸を一つ。体を起こしてぐーっと伸びをする。ついでに欠伸をもう一つ。


 んー?僕は何でドラゴン形態で寝てたんだろ。いや、なんかすごくいい眠りだった気がするけど……いつもはくちゃくちゃのシーツと部屋の壁の木目が見えるはずなのに、今はきれいな青空と緑あふれる自然がみえるや。どうやら僕は庭で丸まって眠っていたらしい。


 えーっと……昨日は、確か……!そうだ、なんかでっかいティラノサウルスみたいなのが襲ってきたんだった。ってか僕、ホントによくやったよね、もうすぐで島ともども蒸発させられるところだったよね。うわーアドレナリンばんばんでてたわ。実は足ガックガクだったわ。てかよく考えたらこっわ、こっわ!ホント何やってたんだよ僕……最後はみっともなく気絶しちゃったっぽいし……


 頭を抱えて翼で体を覆う、お結びの姿勢を取ってゴロゴロそこらじゅうを転がりまわって悶絶していたら、近くで物を取り落すような音がした。

振り向けば、そこには人型のエレクが呆然とした表情でこっちを見ていた。足元には風呂のセットのようなものが入った大きなたらいが落ちている。


 え、見られた?今の見られたよね!?恥ずかしい……そう思って、より一層お結びの姿勢で縮こもろうと思ったその時だった。


 [ラウルッ!!]


 ズドン


 [ぐえっ]


 突然エレクがドラゴン形態になって突っ込んできた。しかもそればかりじゃなくて、僕の背中に頭をぐりぐりと押しつけてくる。


 [いたたたた、痛いよラウル!君、僕よりも一回りも大きいって事分かってる!?]


 今や、僕は地面と強制的にハグをさせられている状態だ。って背中痛い、いたたたたた


 [あ……]


 [はー、痛かった……]


 地面にぺたりと脱力する。と、眼にオレンジ色の小さな花が目に留まった。んー?これはたしか、秋に咲く花だったはず……今って夏の初めだよね……


 [ねーエレク、僕っていったいどんなぐらい寝てたの?]


 なんだか嫌な予感がした。


 [お前……ニか月だぞ!二か月間もずっと……俺、このまま起きないんじゃないかって不安で……]


 まじかー、まさかの二か月……


 でもこれでエレクが僕の背中からくっついて離れない理由が分かった。さっきだって何か持っていたし、ずっと看病してくれていたのだろう。そしたら悪いことしちゃったなぁ……


 [エレク、ありがと]


 [……別に……]


 体をもぞっと動かせば、エレクは頭をどけてくれた。地面に座り込んでボーっととする。まだ人化する気分に離れなかった。もうちょっとこのままでいたい……その気持ちを察したのか否か、エレクは何も言わずに隣にいてくれた。


 しばらくじっとしていたら、今度は唐突に体を動かしたくなった。


 [ねぇ、エレク。母さんたちに知らせる前にちょっと飛んできてもいいかな?]


 [……お母さんたちも、ずっと心配してた]


 [ううう……いいやっ!一っ飛びしたら帰るからよろしく!]


 [あ!待て!]


 僕はエレクの制止の言葉を聞かずに飛び立った。風に乗ってどんどん上昇する。この村で僕のスピードに追い付けるのは、父さんだけだ。


 翼が風を切る感覚が心地いい。こうして飛んでいるととってもすっきりする。目覚めの朝(もう昼だけど)には最適だ。


 [ラッララッラララー]


 竜の島に古くから伝わる民謡を歌う。僕はこの歌が好きだ。アップテンポで軽快なリズムはうきうきと気持ちを高ぶらせる。


 [レレレールルルー]


 風を切る。雲を突き抜ける。


 [ラリラロッレレロー]


 上空から見る竜の島は小さい。前世飛行機から見た日本より断然小さい。


 [ロロロルラーアウエウ]


 そのまま一周空を旋回する。


 [アエウオアーロルレルロル]


 さて、すっきりしたところでかえろうかな。


 [ウパウパピアドーナー]


 自分の家の方角まで来たら一直線に急降下だ。


 [ラパヤパヤパヤフーイイェエエイ!!]


 ジェットコースターよりも千倍も楽しいこの遊び。見る間に西の村が目前に迫る。


 扉が目前に迫ったところで人化をして、その勢いのまま飛び込んだ。


 「母さん父さん、ただいまーっ!」


 ムニッ


 ん?ムニ?


 「ラウリオル……!」


 「かかかか、母さん!」


 お、お胸が顔面ヒットしてますよ!息子は一定年齢越えたら抱きつくのは恥ずかしいことなんですよ!


 母さんは僕の顔を両手で包み込むと、しゃがんで目を合わせてきた。母さんのまあるいサファイヤの目には、今にも零れ落ちそうなほど涙がたくさんたまっていた。


 「ラウル……ああ、ラウル……!心配してたのよ?体は大丈夫?どこか痛くない?おかしなところはない?気分が悪かったならすぐに言うのよ?それから……」


 「アリシア。もういいじゃないか。息子がちゃんと元気になって戻ってきたのだから」


 母さんの後ろから父さんが、ぬっと顔をのぞかせた。


 「さて、ラウル。元気になってよかったな。全く、俺の息子はやってくれるよ……あの四大魔神のうちの一匹に立ち向かったのだから。父さんは誇らしいぞ」


 ポンと、父さんは僕の頭に手を置いた。そして思いっきりわしゃわしゃとかきまぜ始めた。


 「わああ、父さんやめてよ!」


 「なあに、久々に起きている息子の姿が見られたんだ。ちょっとぐらい父さんに甘えろ」


 きゃあきゃあと僕らが騒いでいると、後ろのドアが開いた。って母さん!?いつの間に!?さきっまで僕の隣にいたはずなのに……!と、ふと母さんの後ろの影に気が付いた。


 「まあ!本当にラウルちゃんの目が覚めたのね!」


 「はっはっは。よかったなあ!」


 エレクの両親だ。それから聞こえてくるのは、ずしんずしんと重たそうな音。


 「……ふんっふんっ」


 エレクだ。両腕には朝の袋に詰められた大荷物でいっぱいだ。今にもその重みでつぶれてしまいそうなエレク……


 「って、エレク大丈夫!?」


 急いでそばによると、エレクが荷物を放り出した。どっすーんと若干地面が揺れる。


 「ったく……お前が勝手に飛んでくから……」


 「よ、よく分かんないけどごめんなさい?」


 「……はあ……もとはと言えばおふくろと親父だからいい」


 ……?そばの荷物のうちの一つを見れば、中からオレンジが数個、転がり落ちていた。わ、僕の好きな品種だ!んー?でもなんでこんなにたくさん?


 「さっきエレクがラウルちゃんが起きたっていうから、ラウルちゃんの回復パーティーをしようとおもったのよ!」


 「うちの母ちゃんの料理はうまいですぞ!」


 「もうっお父さんったら!」


 そういってきゃっきゃうふふと笑うのはエレクのお父さんとお母さん。さっと後ろを見れば、僕の父さんと母さんもニコニコ笑ってる。


 料理、かあ。どんな料理が出るんだろう、お肉かな?お魚かな?もしかしてプルコ鳥?そう一瞬でおいしい空想で張り巡らされる僕の頭。と、


 ぐぎゅるるるる


 「はっはっは、今日はたくさんたのしむといいよ」


 今、きっと僕の顔はリンゴみたいに真っ赤になってるに違いない。今、ここらに穴があったらその中でお結びの姿勢で転がってどこまでも行ってしまいたい気分だよ……。掘っちゃう?自分で穴、作っちゃう?


 皆から盛大に笑われた僕。とっても恥ずかしいけれど、でも、どこか幸せだった。






 そう。この時はとっても、とっても幸せだったんだ。前世地球で平和ボケしていた僕だからかな、この世界に”絶対の安全”なんてものは最初からなかったことを、すっかり忘れていた。







 ゴオオオオオオウウ


 轟音が響き渡ったその一瞬の後、紅蓮の弾丸が空を切り裂き、地平線の彼方へ飛んでいく。


 その正体は四大魔神が一人、ザラマンデル。その金色の瞳は、限界まで見開かれており、表情も決して良い物とは言えなかった。


 『何故、何故なのだ』


 『どうして余はこんなにも』


 『こんなにも、震えが止まらぬっ!?』





 その時、鳥は空を羽ばたいていた。もうすぐ近くの島に下りられる。そこで魚を取って過ごそう。と、耳をつんざくような爆音が聞こえた。鳥は、得体のしれない恐怖を感じ、まっすぐ下へ急降下しようとした。


 その刹那、哀れな小鳥は一瞬にして炎に包まれた。その灰は空気の渦にもまれてかき消される。





 『余は、”恐怖”を感じているのか?』


 『あれは、一体なんだったのだ?』


 『あれは、導き手とはこんなにも……』





 浮かぶ白い雲。その中に紅蓮の点が突っ込むと、瞬く間に雲散する。





 『ケタが違いすぎる。どうにもできない』


 『何の感情をも読み取れぬ』


 『ただ淡々と言葉を重ねるあの姿』


 『あれは、あれは……!』












 『まるで、あの”邪神”のようではないかッ』

平日……うっふふふふふ

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