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もやし系竜人の僕は。  作者: 森マッコリ
3/9

エレク

小っちゃい子がお母さんのお手伝いをしてるところ、大好きです。(ぐへへ)

 右手に練った水の魔力を急速冷凍させれば、氷の玉が出来た。水晶みたいでなかなかにきれいだ。それを砕いたら、水漏れしないように魔法をかけた麻袋に入れて、口を縛ればあっという間に氷嚢の出来上がり!


 昨日、母さんが風邪を引いた。母さん、毎日働きづめだったからなあ……


 今、僕は水魔法で母さんの看病を、父さんは南の集落の火山のマグマ付近に生える、マジックリーフという万能薬を取りに行っている。


 マジックリーフは、黄金色の葉っぱが特徴の植物で、本当に万能だ。

 飲めばどんな病気もたちまち治り、さらに元気全開に。塗れば、顔が判別できないほど大やけどしていようと、たちまちのうちに治ってしまう。

 腹を熊に掻っ捌かれたとしても、マジックリーフでできた軟膏を塗ればたちまちのうちに傷はふさがり、流れ出した血は同じくマジックリーフでできた飲み薬でも飲めば問題なく再形成されるんだ。


 ただし、体の一部が切り落とされてしまった場合は、その部分を幹部に直接当てて軟膏を塗らなければならないから要注意だ。


 さて、僕も日頃の感謝をこめて精一杯母さんの看病をしなくちゃね。なんてったって僕ももう10歳になったんだから!前世から数えたら40歳だね。きゃー、僕ってばお・じ・さ・ん!


 眠っている母さんの頭から、すっかりぬるくなってしまった麻布をとって、その代りにさっき作った氷嚢を置く。キーンと冷えて気持ちいいよ。これで治るといいんだけどなあ。母さんの風邪で変化しきれなくなって、頬に浮かび上がってきてしまっている金色の鱗を拭く。


 母さんはぐっすりと眠っている。

 さて、僕は僕で今日母さんとする予定だった庭の雑草取りでもしに行こうかな。




 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷちっ


 あ、暑い……


 今の季節は夏。汗がじっとりと体にまとわりつくようだ。今は人型とはいえ、元がドラゴンだから日焼けして真っ赤になるなんてことはないけど、直射日光でじりじり焼かれると倒れそうになる。竜の島は日本とほぼ同じような気候で、ちゃんと四季があるんだ。


 汗をぬぐいつつ草をむしる。あ、たんぽぽ。残しておこう。


 あー、暑い暑い!こうカラッと真っ青に晴れた青空でも暗い気持ちになることなんてあるんだね……そよ風の一つでも吹けばいいのに!ん?そよ風?そうだ、それだよ!!


 わあ……生き返るぅ……


 天国じゃあー。真夏の炎天下の中での天国じゃあー。魔法のクーラー最強ー。のどが渇けば自分で作ったミネラルたっぷりのお水をたっぷり飲む。ぷっはー!サイッコーだね!気分は真夏の熱射地獄な日にクーラーをガンガンにきかせた部屋の中で何もせずにゴロゴロしてるような感じだ。この調子でじゃんじゃん引き抜いていこう!


 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷ


 「おはよう」


 「ふぁっ!?」


 「……何、やってんの」


 「び、びっくりしたあ……音もなく顔を覗き込まないでよ、エレク……」


 まだ心臓がドキドキ言ってる。話しかけてきたのはエレクドリス、通称エレク。つややかな黒髪ときれいな赤色の瞳が特徴的な幼馴染だ。僕と間反対のカラーだよね。あ、ちなみに男だよ。


 「あのね、僕、母さんが風邪で倒れちゃったからちょっとでもお手伝いしようと思ったんだ」


 「ふうん」


 「エレクはどうしたの?」


 「散歩」


 「へぇ、こんな暑いのによくやるねぇ」


 「別に。ただの暇つぶしだから」


 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷちっ


 「……手伝おうか?」


 「え、いいの?」


 「どうせ暇だし」


 「わあ、それは助かるや!じゃあそっちの向日葵のあたりをお願い」


 「わかった」


 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷちっ


 「……暑い」


 「え?あ、そうか。僕は風魔法のクーラーしてるんだった。ちょっと待ってね。初めて人に使うから、できるかどうかわからないけど……」


 僕はエレクにそよ風の魔法をかけてみた。


 「……涼しい……」


 「えへへ。でしょでしょ?効き目あってよかったー」


 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷちっ


 「ここは妖精が多いな」


 「うん。母さんの庭だもん」


 見渡せば、そこかしこに背中にトンボみたいな羽を付けた、ちっちゃな妖精さん達がいっぱい飛び回っている。妖精さん達は普段は森の奥深くに住んでいるんだけど、よく手入れされた花畑があるとそこへ引っ越しをしてくることがあるんだ。ここは母さんの自慢の庭だからね。たくさんの妖精さん達が住んでいるのさ!ちなみに一番人気なのはバラの木のマンションです。


 ん?妖精さん達も手伝ってくれるの?わぁ、それはうれしいな!


 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷちっ


 ぷちっぷちっぷちっ


 「ふうー、おわったー!」


 「疲れた」


 妖精さん達も手を取り合って喜んでいる。かわいいなあ。


 「今日はありがとね、エレク」


 「別に。後は?」


 「後?後は今日抜いた分を麻袋に詰めて、森の奥に持っていくだけだから大丈夫だよ」


 「俺が燃やそうか?」


 「え?いいの?」


 「……嫌ならいいけど」


 「いやいやいや、全然嫌じゃないよ!むしろ助かるよ!」


 「そう」


 急いで庭中に散らばった雑草という雑草を妖精さん達と一緒に集める。妖精さん達ホントいい働きするよね。今日のおやつ、ちょっと分けてあげよう。


 「はなれてて」


 「うん」


 エレクが麻袋に手をかざせば火花が飛び、くすぶり始めた。パッと紅色の火の粉が舞い上がる。エレクは炎魔法と地魔法が使える。エレクの起こす炎はまさに真紅。とってもきれいで、見てて飽きないんだ。

 そのうちぼうぼうと炎は高く、大きくなってゆく。麻袋がかなり大きかったから、ちょっとしたキャンプファイアーみたいだ。


 「きれいだねー」


 「……」


 妖精さん達も皆手をつないで、火の回りを囲って踊りだした。その光景は炎と重なってとっても幻想的で、きれいだった。


 と、突如風が吹く。


 「グオオオ」


 赤の竜が地面へと舞い降りた。父さんのおかえりだ!父さんが人型になったのち、話しかけてきた。


 「エレク君いらっしゃい。ところで……2人とも何をやっているんだ?」


 「母さんとやる予定だった庭の雑草取りやったんだ。エレクはそれを手伝ってくれたの」


 「お邪魔してます」


 「ほう。きっと母さんも喜ぶな。あ、そうだ。マジカルリーフを取ってくるついでに南の集落でサツマイモを貰ったんだ。焼いて後で食べようか」


 この世界においてサツマイモという表現は名前的にも季節的にもおかしいが、味がどう考えてもサツマイモの味だから勝手にサツマイモと翻訳しているだけのこと。言い忘れていたけれど、この世界は地球とは言語が違うんだよ。


 「うわーい!エレクもいいよね?」


 「ああ。もちろんさ。たくさんあるからエレク君も貰ってくれよ」


 「いただきます」


 「後で一緒に食べようね!」


 「そうする」


 目の前のキャンプファイヤーを崩して、サツマイモをくべてから父さんは家の中へ入って行った。マジックリーフの効能はすごいから、あと5分もしたら母さんは家から出てくるだろう。午後はエレク君のところの家族も呼んで焼き芋パーティーだ!!







 甘いサツマイモの香りの混じったあったかい煙が、空へと吸い込まれて行った。

雑草を抜くときは、軍手をしましょう!

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