この島に生まれて
こんばんは、森マッコリです。面白い作品が書けるよう、頑張って入るのですが、なかなか進みません。
そこで、あまりにも待たせてしまうのは(読んでてくれる人いますかね)ちょっと……と思って掘り出し物を持ってまいりました!
9話以降書いてませんが、どうぞ。
「ラウルーお水溜めといてー」
「はい、母さん」
こじんまりとした家の中、母さんの声が響く。トントントンと包丁とまな板の奏でる心地よい音に耳をかけ向けつつ、僕は樽に水を溜める。
樽に意識を向けつつ水がたまっていく様子をイメージする。
トプン
すると、目の前の樽には水が満杯までたまっているんだ。
僕はラウリオル・ウィード。皆からはラウルって呼ばれている。母さんのアリシアと、父さんのエムルオールと3人家族なんだ。年は4歳。まだまだ子供だ。4歳なのになぜこんなに筋道立てて物事を考えられるというのか。それは僕が前世の記憶を持っているからなのであーる。え、ちょっと待って行かないでホントなんだって信じて!君たちと同じ、地球の出身だから!
僕の前世の名前は田中……っていうらしい。らしいっていうのは僕、あんまり覚えていないんだ。だって急に頭が痛くなったと思ったらブワーっておじさんの記憶がなだれ込んできた。だけど、その記憶が不思議と僕が僕でないときの僕だって分かったんだ。
おじさん、つまり僕の前世はそこらのサラリーマンで失敗ばかり。上司には耳にタコが生えて、触手をうねうねさせるぐらい……え?あのタコって八本足の奴じゃないの?ンン、ゲフン。とにかくそれぐらい怒られてた。嫌だなあ、ああいうタヌキみたいな顔の人。僕ら部下にはごねごね言うだけ言って、後は家族に甘ったれた声して電話していたのを見つけたことは、衝撃的過ぎてしっかりと頭に焼き付いていた。
同僚とはまあ、いい関係でやっていたかな。飲み屋でドンチャン楽しくわいわいとさ。まあそのたびに僕の低身長と童顔の本領が発揮され、一度行った所じゃないといつもストップかかってたっけ。未成年禁止ってさ。そのたびにうるさいよって怒鳴りたくなったよ。今僕が住んでいるところではお酒は15歳以上からだから、きっともうそんなことは言われなくなるんだろうけど。
僕はお酒が大好きだった、らしいけれど、味までは覚えていなかった。だから父さんのコップから少し拝借してみたんだけど、おいしくなかったよ、あれ。何で前世の僕はあんなまずい物が大好きだったんだろ?
そういえば僕、友達からも同僚からも、はたまたあのタヌキおやじからも、子供っぽい子供っぽい言われてたっけ。僕はれっきとした三十路だったはずなんだぞ!もうお嫁さん貰ったっていい年頃だったんだから!まあ今はれっきとした幼児なんだけれども。
まあそんな感じで元気にやっていた僕の前世は、ある日、後輩の女の子と会社帰りに仲良く話をしてたら終わっちゃった。突然角に突っ込んできたトラックが、他にも人を何人か跳ねながら、僕たちの方に突っ込んできたんだ。
即死だったよ。
最後に後輩ちゃんを突き飛ばせたことは今も誇っていいことだよね!僕エライ!あ、待って待ってまだ話は終わってないんだよう。だってさ、皆も思うでしょ?可愛い女の子はやっぱり助けなきゃ(使命感)ってなるでしょ?そういうことだよ。今だって村の女の子たちが怖いクマさんやシカさんに襲われたらがんばって助けるもん!
えーっと、なんだったっけ?そうそう、僕が死んだところか。それからはすうって体が軽くなったと思ったら僕は生まれていたんだ。ちゃんちゃん。
と、言ってもこの記憶を思い出したのは1年前、3歳の誕生日の時なんだけどね。でもよかったよ。もし赤ちゃんの時から記憶があったら恥ずかしくておっぱいとか飲めずに死んでただろうし、おむつを替えるときも……きゃー!
ここでは前世の僕が見たらびっくりドッキリなことがたーっくさんあるんだ!それはね、地球とは何千何億何万光年離れた別の惑星なのか、はたまた次元の違うパラレルワールドなのかはわからないけれど、この世界には魔法があるんだ!
魔法というのはそう、RPGとかによくあるあの魔法だ。僕は水と風を操ることが出来る。母さんは地面をたたいて大きな壁を作るることが出来るし、父さんは炎を出したり、僕よりももっとすごい暴風ともいえる風を起こせたり、パンチ一発でイノシシだって吹っ飛ばしたり出来ちゃうんだ。
と、行ってももう僕がこの記憶を思い出した時にはこれが当たり前になっちゃてて、むしろパソコンとかテレビとかに驚いちゃった。冷蔵庫からはいつも新鮮な食材が出てくるってホントだったのかなあ?
僕たちは山の深ーいところにあるこじんまりとした小さな集落に住んでいて、村の皆は全員イケメン美女なんだ。もちろん母さんと父さんも絶世の美男美女。母さんは金髪に青い大きな目のスラリとした背の高い美女。お胸のあたりは……いやいやいや、ここの集落の女の人たちは皆そうだから。別に母さんが特にさみしいというわけじゃない。うん、そうだよ。で、父さんは真っ赤な赤毛に琥珀のような瞳のガチムチ系の頼れる美男だ。
僕はと言えば真っ白な髪に真っ白な肌。瞳は青くて、母さんとおんなじ色だ!それに同年代から見ればチビでもある。なかなかに病弱そうな体でしょ?そして使える魔法もおとなしい系の魔法だったりする。
やっぱり魔法は派手で威力の強いものが好まれる。でも、初めて魔法が使えた時はとっても嬉しかったし、周りの人たちにどう思われても母さん父さんも僕を守ってくれる。何にも気にすることはないのさ!たくさん食べてたくさん寝れば、いつか父さんみたいなむっきむきの体だって手に入れられるはず!それに集落の男の人のガチムチ率は90%なんだ!
と、突然ゴオッという風の音がして、窓ガラスがカタカタと揺れた。父さんのお帰りだ!
樽を母さんに渡して(褒められて頭撫でられた。やったね!)ドアを思いっきりあけた。
「父さん、お帰り!」
ドアを開けると、そこには真紅の鱗と鬣、それと橙色の瞳を持ったドラゴンがその大きな翼をたたみ、座ったところだった。ドラゴンは僕に顔を近づけ、のどを鳴らす。
「グオウ」
「うん!僕、今お昼ご飯のお手伝いしてたんだ!褒められちゃったよ!」
「グウ」
「やったあ!僕、アレ大好き!」
目の前にいる、高さ10m近くはありそうなこの巨大なドラゴン。それこそが僕の父親だ。なんのおかしいこともない、この集落は竜族の村なんだ!
僕たちにとってドラゴンの姿こそが本来の姿。ただ、知能を持ちちょっと動きづらいと先祖が思ったころから人型が取れるようになったんだってさ!先祖さん、グッジョブだよね。
ちなみに母さんは金の鱗と、それより少し薄い色の鬣に、深い青色の目のかっこいいドラゴンなんだ!ヤバいよね、僕ってば恵まれてる!僕は……まあ白い鱗と鬣、それと青い目だよね。うん。
とっても儚いですねありがとうございませんでしたー!!僕自身はこんな性格なんだけどね!集落でも僕のこの色の鱗は珍しいそうだ。でもさ、もっとこう……すごいかっこいい感じの色だったらよかったのにな。父さんとか火竜って感じで超かっこいいもん!
と、父さんがすうっと縮んで人の姿になる。わお、いつみてもかっこいいね。そして今日は父さんからお土産のプルコ鳥のお肉があるんだってさ。いいねいいねぇ、僕アレ大好き!
プルコ鳥っていうのは北の方に住んでいる鳥で、とってもジューシーでおいしいんだ。触感もプルプルっとしていて、行ったことないけれど王都の方では多くの食通が求めてるんだってさ。
「アリシア、戻ったぞー」
「母さん母さんプルコ鳥あるよ!」
「あら、エムルお帰りなさい。まあ!じゃあ今日はプルコ鳥のシチューにでもしましょうか」
「やったー!」
拝啓前世の皆様へ。そんなこんなで僕は今、元気に暮らしています。
追伸 タヌキおやじはどうなったんだい?
いかかでしたでしょーか?