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初心者の町

作者: ほら貝

一目惚れだった。僕がこのギルドに初めて来たとき、彼女の笑顔には陰があった。曰くこの町は低ランクの魔物しか出ず、稼ぎが少ないため高ランクの冒険者になると皆この町から出ていってしまうのだと。そのため通称「初心者の町」と呼ばれていると。この町にもし高ランクの魔物が出たらひとたまりもないと。僕はそれを聞いて決心した。僕がこの町初の高ランク冒険者となり彼女が心の底から笑顔になれるようにすると。。

幸い僕には才能があった。すぐに安定して魔物をかれるようになった。彼女も僕のことを応援してくれていた。少しずつ仲が深まっていく実感があった。

少しずつ強い魔物の討伐依頼も受け始めた。彼女は心配してくれたが、僕は大丈夫だと言った。早く高ランク冒険者になるには、この程度の魔物につまずいていられない、僕に自信があった。依頼はそつなくこなせていた。もしかしたら簡単になれるかもしれないという慢心もあった。

それがいけなかったのだろう。僕は重症を負った。危険な仕事なので怪我をするのはいつものことだ、でもここまでの怪我は初めてだ。依頼を失敗したのも初めてだった。それになにより彼女が本気で起こったのをみるのも初めてだった。怒りながら泣いていた。僕のせいで泣かせてしまったのだ。

それから僕は慢心せず依頼をこなした。もうけして彼女に心配はかけたくなかった。

冒険者になって1年、2年と経って僕はこの町で最高ランクの冒険者になっていた。僕がこのランクになったときには、彼女も一緒に喜んでくれた。少しずつ彼女と親密になれている確信が僕にはあった。一緒に食事に行ったりなんかもした。後はこの町にいない高ランク冒険者になるだけだと僕は思った。

高ランク冒険者になるにはある程度才能がある者で、5~6年と言われているがもうすぐその高みに手が届くところまで来ていたのだ。

僕はいてもたってもいられず依頼を受けまくった。もうすぐだと。もうすぐ目標に手が届くと。彼女も喜んでくれると思っていた。でも僕が依頼をこなすごとに彼女の表情は暗くなっていった。わからなかった。いつも僕を応援してくれた彼女が僕の成長を喜んでないことを認めたくなかった。

冒険者登録をしてから、ちょうど3年が経った頃、僕はついに高ランク冒険者の試験を受ける資格を得た。でもそれを僕に伝えてくれた彼女は今にも泣き出しそうな顔をしてた。

理由も教えてくれなかった。

高ランク冒険者の試験はこの町ではできないため、近くの大きな町まで行って受けることとなった。いろんな人から激励された。そのなかに彼女はいなかった。

大きな町に着いたので早速試験を受けた。僕を審査してくれる試験官は僕が「初心者の町

」出身の冒険者だと知ると、いきなり見下したように、あそこの町がいかにレベルが低いかを語りだした。やれ報酬は安いだの、冒険者の質は悪いだの、最後には受付嬢の悪口まで発展していった。僕は激怒した。彼女を侮辱されたのだ、冷静ではいられなかった。僕は試験官を叩き潰してやろうと思った。でも彼はなかなかに強かった、僕があった冒険者では比べるものがいないほどには。でも僕には関係なかった。彼女を侮辱されたのだ。

どうなったかの詳細は語らない。彼がプライドを捨てきれなく、僕は何でもできた。それだけだった。

僕はいろいろとあったが試験官にを倒したため審査を待たずに晴れて目標の高ランク冒険者となった。彼女がまた悲しそうにするのではないかと怖かった。でもそれでも早く彼女に伝えたかったのだ。すぐに帰る準備をした。その時一人の男が話しかけてきた。

曰く、試験官にを倒すだけの力があるならこの町で活動した方がよいと。もしよければパーティーを組まないかと。

たしかにあの町にはないものがたくさんあった。依頼の種類も報酬の金額も段違いだ。でも僕の答えは決まっている。この町は何でも揃ってるかもしれないが、ひとつ足りないものがあると。

男と会話を終えすぐに帰路につく、僕の町に戻ってきた頃にはもう夜更けだったので逸る気持ちを落ち着かせ眠りに着いた。次の日いの一番にギルドを訪れると、彼女に高ランク冒険者になったことを伝えると。彼女は寂しそうに笑った。なぜだかわからなかった。なぜ喜んでくれないのか。でも僕は言った。これでこの町にも高ランク冒険者がいることになると、この町も安全になると。

彼女は呆然と僕を見つめて少しして、彼女僕に尋ねた。どういうことだと。あなたは他の町に行かないのかと。行かないのならなぜかと。僕は言った。あの日、彼女に出会った日の決心したことを。そして彼女に惚れていることを。彼女は驚きうつむいた。

僕は意を決して頼んだ。交際してくれないかと。彼女は少し黙っていたがついに僕の方を見て言った。


ここは「初心者の町」低ランクの魔物と低ランクの冒険者がいる町。僕と妻の彼女が暮らす町


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― 新着の感想 ―
[気になる点] むしろ試験管倒したのによく上げてくれたなぁ、問答無用でそんな奴は首じゃボケされるものかと思ってた(キチンと手順踏んで決闘になってたのかね)。 [一言] なお、報酬等は変わらないままだと…
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