お帰りはあちらです
ぶわっと足元の魔方陣が発光し、華奢な少女が召喚される。
今度は二人組だ。同じような服装の少年が一人……幼馴染か。
「え?なに…これ……」
「なにがどうなっているんだ?」
呆然と呟く少年少女。
俺はやる気も無く観察し、マニュアル通りの言葉を一言。
「お帰りはあちらです」
「「へ?」」
指し示す先には赤色の魔方陣。帰還の召喚術が発動します。
「この度はこのような残念な結果となってしまいましたが、お二人のご活躍を心からお祈りしております」
召喚者への感謝も忘れません。わりと適当に言っていますが。
「ちょ、ちょっとなにこれ?異世界トリップじゃないのー?」
ぐずる少女を兵士が誘導し速やかにお帰りいただく。
魔方陣が赤く発光して二人が消えた後、おもむろに王子がぼやいた。
「なかなか、これってやつが来ないなぁ」
「そうですねー。殿下や騎士の顔にちょっとでも色気を出したら帰還。きょどりすぎたら帰還。俺つえ~みたいな自信に溢れていたら帰還。代々の魔術師様の言いつけ守っているだけなんですけどね」
ちろりと見た、羊皮紙にはこれまで召喚してきた歴代の聖女勇者からとったデータがつらつらと書かれている。
「なんだろうな?いっそ人型やめてみるか?」
「いきなり襲われたりしないですかね?」
「しかしなぁ。もう87回目の召喚だ。いい加減、苦痛になって来た」
「100年前も200年前にもあった、伝統行事ですからね~。マニュアルがあるぶん自分達は楽ですよ」
「なにか、やたら召喚に期待しているやつらがいるんだよな。なぜだ?」
「さあ?」
結局、勇者が誕生したのはそれから一ヵ月後。
ルビィタリア王国初のスライムっぽい勇者様が誕生しました。
なんでしょうね?こちらの都合で召喚してしまって勝手を言いますが、別に恋愛きゃっきゃうふふをしてもらいたくてお呼びするわけではないのですよ。
俺も王子も騎士殿もわりと頑張って召喚の時間作ってるんですよねぇ。
異世界出身者でないと魔王を倒せないとか、訳分からんルールを作った創造神って頭沸いてる。