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譜面

作者: 四季

考えるな、感じろ。

って感じの馬鹿なお話です。

ある日、気まぐれで海岸に行くと、ビンが砂浜に打ち上げられていた。

ビンの中には手紙らしき紙が入っていた。ボトルメールというやつだ。

ぼくはそのビンを手に取り、蓋を開けて手紙の中身を読もうかどうか逡巡した。いくら不特定な人を対象とした手紙とはいえ、勝手に読むことは書き手へのプライベートをひどく侵害しているように思えたからだ。しかし、そんな背徳感と同時に好奇心も芽生えていた。

さんざん悩んだ結果、ぼくは好奇心に身を委ねることにした。

蓋を開け、ビンを逆さにして手紙を取る。

随分長い間漂流していたのだろう。手紙は太陽の光で酷く色あせていた。だが、手紙の保存状態は問題なかった。

一体どんな内容が書かれているのか。ぼくははやる気持ちを抑えながら、折りたたまれた手紙を慎重に開いた。



「♪♯♪……」



それは譜面だった。

これはまた意外なものが出てきたものだ。おたまじゃくしの羅列は紙の隅から隅までびっちりと書き込まれていた。

ぼくは、この譜面はひょっとしたらとんでもない音楽を記しているのではないかと思った。誰かは知らないが、わざわざビンに入れてよこしたのだ。何かしらの事情があるのだろう。ぼくは想像を巡らせた。


例えばこの譜面は、人間の脳を自由自在に操る特殊な音が記されているのでは、とか。

そう思うといてもたってもいられず、ぼくはこの譜面にしたためられている音を聞いてみたいと思った。

しかし、残念なことに、ぼくには音楽の才能がなかった。

だから翌日、ぼくは音楽の精通している友人にこの譜面を渡し、演奏してもらった。

どんな音楽になるのか期待に胸を躍らせたが、奏でられた音楽はあまりにちぐはぐで、およそ音楽とは言えない代物だった。

その後も、友人に頼んであらゆる楽器で演奏を頼んだが、そのどれもが音楽ではなかった。まるで子どもが適当に音符を並べたようなものだった。

ぼくはこの譜面の意味を必死で考えた。

音そのものには意味は無かった。では、こう考えられるのではないか。すなわち、譜面自体に秘密が隠されているのだ。

例えばこの世界にある重要な謎が隠されていて、その鍵がこの譜面なのでは、とか。


そう思うといてもたってもいられず、ぼくはこの譜面に隠されているメッセージを解読したいと思った。

しかし、残念なことに、ぼくには暗号解読の知識を持ち合わせていなかった。

だから翌日、ぼくは探偵を生業としている友人にこの譜面を渡し、解読をお願いした。

友人は三日間ほど時間が欲しいと言ったので、ぼくは期待して三日間を過ごした。

が、彼の出した結論は、この譜面に特別な内容は込められていない、とのことだった。

曰く、文字や記号に何か別のメッセージを込める場合、書き手と受け手が理解できるようにある一定のルールが存在し、それは規則性となって手紙に現れる。

だが、今回の譜面にはそういった特定のパターンは見受けられなかったとのこと。

ぼくは釈然としなかった。

長い時間、まるでその身を隠すように漂ってきた譜面なのだ。

何もない訳がないのだ。

ぼくはこの譜面をインターネット上に公開し、この手紙を手に入れた経緯を添えて、この譜面の意味を解読してくれる人を募った。

反応はすぐに返ってきた。

一人、二人、とどんどん数は増えていき、総勢で50名の精鋭が揃った。

ぼく達はチャットで意見を交換しながら、この譜面に秘められた謎を解読しようと躍起になっている。

だが、未だにその謎は解明できていない。














「なー、お前、一体何やってんだ?」

「作曲」

「どうしたんだよ急に。ミュージシャンにでもなるつもりか?」

「ちげぇよ。ただ適当に書いてるだけ。……できた。あとはこれをビンに入れてっと……」

「ビンに入れてどうするんだ?」

「海に投げる」

「はぁ? 何の意味があるんだよ」

「意味なんてないよ。ただ暇つぶしにやるだけ。意味なんて、拾ってくれた人が考えてくれるでしょ」


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